ブラック・スワン / BLACK SWAN


ファクトリーユナイテッドシネマにて、朝一番9時45分の回を観ました。

私は、山岸涼子の 『 アラベスク 』 というバレエ漫画がものすごーーく好きで、

小学生のころの連載でしたが、大人になってから、第一部・第二部 ( 第二部で完了 )

を文庫本で買って再々感動して繰り返し読んでいた時期がありました。

ノンナ・ペトロワとミロノフ先生の愛の物語であり、ノンナの成長物語であり、

初心者のためのクラシックバレエへの入門書のようでもあり、

第二部のクライマックスに至っては、真の芸術が生まれる瞬間が、まさに奇跡のごとき

美しさで描かれていて、バレエ漫画の傑作は多々あるのでしょうが、そして、

『 アラベスク 』 以外は全く読んでもいないのですが、この作品は、バレエ漫画の

最高傑作、金字塔、と言い切ってしまいますっ!!!

・・・・・ と、最初に鼻息も荒らかして 『 アラベスク 』賛からスタートですが、

『 ブラック・スワン 』 は、この 『 アラベスク ・第二部 』 にそっくりなんです。

何が? どこが? それはですねえ、

主人公が、ホンモノの芸術家として ” 脱皮 ” する、その間際のプロセスを、

ハラハラドキドキさせながらそれは巧みに描いているという点です。

芸術が人間の肉体を通して表現されるまでのプロセスが、

いかに日常を逸っしていて制御不能な精神的不安定、肉体的苦痛をともなう

過酷なものであるか! いやはや凄まじい。

『 ブラック・スワン 』 は、

主役のニーナ役のナタリー・ポートマンがアカデミー主演女優賞を受賞したり、

オカルト的なホラーサスペンスという派手目な売り込み方をしていたり、

と、最近の上映作品の中でも華やかさが際立っているのですが

観終わって、私は、芸術的な脱皮を成し遂げる事ができた一人の若きバレエダンサーの

ハッピーエンド物語、と捉えました。

ダンサーとしては平凡の域を出られなかった元バレリーナの母親の、過剰な夢と期待

を担がされ、歪な愛情にがっちりとくるまれて、プリマとなるべく育てられてきた

ニーナの、ダンサーとしての素質は十分、でも、人として、女性としては不自然なほど

未発達な内面の闇と変容を、ダーレン・アロノフスキー監督 ( 『 レスラー 』 )は、

観客の生理的神経を逆撫でしっぱなしの、レズビアンあり ( 当然 <R15+> 指定

なりのエロシーン )、プチ特撮あり、の、クラシックバレエの世界観にホラー映画的な

露悪趣味の手口を混ぜ込むというエッジを効かせた演出でとても個性豊かに表現、

一方主役ポートマンの主演女優賞の演技は、監督の特殊で過激なその演出を受けて立ち、

無垢で一途な ” 白鳥・オデット ” が、自分の中に深く眠る ” 黒鳥・オディール ”

の邪悪で官能的な炎の目覚めに気づき怯える様を、不安定で神経質な八の字眉毛&眉間

の縦ジワをクライマックス直前、ぎりぎりまで崩さず、期待と緊張を 「 白鳥の湖 」 の

大舞台まで引っ張ることに大成功していましたし、10ヶ月の特訓の末に得た、という

プリマとしてのオーラ、バレリーナ特有のボディと動き、超高度な舞踏テクニック!!

は真に驚嘆ものでしたし、大満足のエンターテイメント作品でした。

さらに、チャイコフスキーの超有名なあの 「 白鳥の湖 」 のあのサビ?の旋律が、

あんなにも迫力があり 扇動的でカッコイイとは!! と再認識。

あの名曲も重要な主役、といえるでしょう、クライマックスのステージでの盛り上がり方

はまさに 「 手に汗握り、息を呑む 」凄いものでした。

実家に置いてあるこのレコードを次回持って帰ってこようと思いましたもの。

漫画 『 アラベスク 』 は、まあ少女漫画の範疇でしたから、ノンナの成長、という

言い方でOKでしょうが、この『 ブラック・スワン 』 の方は、成長などという

のんびりした表し方ではとてもとても・・・・・なんといいますか、変態・metamorpho-

sis という感じですね。

でもストーリー自体は、とてもシンプル。

バレリーナ族のあの独特のファッションもなかなか楽しく、非日常の世界にとっぷりと

浸れる2時間です。是非。


















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