毎週の出来事をお伝えします
電話室便り
ミステリーもいいね
5月22日 月曜日。
定休日の休日の朝の9時半、息子の激推しミステリー 『 十角館の殺人 』読了。
なかなかヨカッタ。
ミステリーは今までほとんど読んでいないジャンルですが、
この 『 十角館の殺人 』 は、去年の12月に地域の書店でふと手に取り、帯の
コピーに惹かれて息子へのクリスマスプレゼントに選んだ一冊でした。
自分じゃ読まないけど、あまりに面白そうな気を引くコピーだったし、エンター
テイメント性が高くて一気読みしてしまいそうなミステリーは、普段からあまり
本を読まない ( 本人曰く、読書の時間がつくれない!そうです ) 男子高校生
へのクリスマスプレゼントにぴったりかな~って思って。
『 十角館の殺人 』 は、初刷が1987年。1991年に文庫化されて以来、
2007年までに50刷、同年に新装改訂版の第一刷が刊行され、2022年
9月に新装改訂版第85刷ということで、ミステリー界の大ロングセラーですね。
舞台は四方を断崖絶壁で囲まれた小さな無人島に建つ正十角形の館、そして
時は1986年、大分県O市にあるK**大学のミステリー研究会のメンバー
7人がこの奇妙な館にて次々と殺されていって・・・!!!というものですが、
私の感想の第一、それは 「 懐かしい! 」 でありました。
” ミステリ史上に残る大トリック! ” を読んでの感想にして 「 懐かしい 」 って
どうなの?とは思うのですが、80年代の大学生、大学のミステリー研究会、
メンバー同士の描写、会話・・・それは私の学生時代と丸かぶりなのです。
ぼろっちいサークル棟の部室や、その狭い部室に充満する煙草の煙、懐かしい!
登場するミステリー研究会のメンバー達は男女みな喫煙者です。ひっきりなしに
タバコ吸っているの。今じゃ考えられないのですが、当時はそうでした、懐かしい!
私はタバコ嫌いで吸いませんでしたが、当時の大学生は、学生たる者・吸って&呑ん
で一人前!みたいなところがありました。そして、新入生歓迎コンパとかなんとか
で宴会をしては、下級生に無理矢理お酒飲ませて急性アルコール中毒死という
悲惨な事件が問題になり始めていた頃・・・そうでした・・・・
さらに。サブカルチャーなど趣味の特定領域にて愛好者同士がお互い相手のことを
「 おたく 」( 例:「 ねえ、おたくさぁ、あの作品観た? 」 ) と呼びかけるの。
これが現在に至るオタクの始まり、と記憶してます・・80年代・・懐かしい!
そのような淡いノスタルジーとともに読み進んだ、懐かしさ一杯のミステリー作品
でありました。
帯のコピーに偽りなし。
” たった一行 ” で世界が変わる衝撃体験をしたくて、途中からは一気読み。
この歳で読むと、結構ツッコミどころはありますが、ミステリーの醍醐味の前には
そんなことどうでもいいのです。
たまにはこのような謎解きエンターテイメントの刺激もいいものです。
80年代に青春時代を過ごした50代以上のみなさまにもオススメです・笑
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
ここパスキューの正面の大窓から、目の前の通りの街路樹の銀杏の樹の萌えいずる
新緑と木漏れ日が目に映り、なんとも癒やされる眺めです。
この季節は、咲き誇る花々も素敵ですが、木々の緑のグラデーションに感動します。
目にもこころにも、体の隅々までも、自然からのエネルギーを染み渡らせたいです
よね。お天気の良い日には、外に出てちょっと歩きましょうか。
5月、6月はお散歩が似合います。
明日もこんがりと焼けた丸いパンを山盛りにして、みなさまのご来店を
お待ちしております!!
グラハム粉の丸いプチパン
1個 150yen
わたしの読書、たいていは・・・
ANDRE KERTESZ 『 ON READENG 』より
通勤の地下鉄内で本を読みます。
日課的読書の場所が、
休みで家とその周辺の行動範囲の日以外ほぼ毎日乗っている地下鉄のシートって
ちょっと寂しいのですが、まあしょうがない。
地下鉄、JR、バスなど、公共交通機関に乗っている時間は、派手なことはほぼ
何もできないってことで ( 派手なことって?笑 )、① 自分の体の幅の内でやれて、
② しかも無言で、③ さらに一人っきりでやれること・・・・
編み物 → 10年に1人くらい見かけるかも。これもっと流行ってもいいよね。
書き物 → 3ヶ月に5~6人くらい見かけるかも。主にお仕事系、テスト勉強系。
飲み物 → 1ヶ月に2~3人くらい見かけるかも。ペットボトル、持参水筒。
読み物 → 1車両に1~2人くらい見かけるかも。文庫本、新聞、図書館の単行本。
読み物 → 1車両ごとに95%くらいはこれかも。スマホ。ゲーム含む。
あとは、
睡眠 → 1車両に4~5人くらいは見かけるかも。結構眠れるけど乗り越し注意。
瞑想 → 睡眠系と見分けるのはかなり難しい。
観察 → 人間観察・マンウォッチング。目を開けたままの瞑想の可能性もあり。
ざっとこのようなかんじでしょうか。
私の場合、地下鉄読書は、まず車酔いの心配がほぼなくて、①②③の縛りがあること
で逆に読むことに集中でき、良い環境、良い日課なのです。
世の中全体に大人はなんだか忙しく、地下鉄内のひとときが独りになる貴重な時間
だったりするので、無駄にしたくないんだよね、きっとね。
横並びの座席にずらりびっちりと座っている一列全員が、真剣に小さなスマホを
睨んで指を滑らせている光景がちょっと不気味であるのは否めませんが、でも
きっとそういうことでありましょう。
毎日5~6分 x 2回 ( つまり行きと帰り ) で、最近読み終えた本に、ニーチェの
『 ツァラトストラ 』 があります。
印象的な箇所がいくつもありましたが、私ごときではただ感じるだけで、理解まで
には1回読み終えたくらいではとても至りませんが、ニーチェが問い、そして
答えようとしたことは何となく伝わり、共感もしくは納得に近いものでありました。
理解できない部分が多いけれど、読み終えての充実感は大きかった・・そんな書物
と、数分刻みで毎日。そういう読書だってできちゃう地下鉄なのでした。
『 ツァラトストラ 』丘沢静也/訳・光文社古典新訳文庫
「 敬虔そうな顔をして、黙って、星のじゅうたんのうえを歩いている。ーしかし、
拍車の音も鳴らさずに、こっそり歩く男の足は、俺の気にくわない。 」
『 ツァラトストラはこう言った 』 氷上英廣/訳・岩波文庫
「 つつましく、黙々と、かれは星の絨毯のうえを歩く。ー だが、わたしは物しずかに
歩く男の足を、すべて好まない。足には、拍車の音がするほうがいい。」
『 ツァラトストラはかく語りき 』竹山道雄/訳・新潮文庫
「 いと敬虔に、また黙々と、牡猫は星の絨毯の上を彷徨う。ー われはすべての
柔らかに踏む男の足を好まない。まして拍車も鳴り響かぬに於ては ー 。」
要は、ニーチェ先生は、率直な人の足音はかならず語りかける、とおっしゃって
いるようですね。なんか解る気がしませんか?
” 拍車 ” とは、18世紀くらいまで馬に乗るときのブーツの踵についている金具
で、それで馬をけって刺激して走る速度を上げるように合図するためのもの。
きっと歩くとカシャカシャ鳴ったのでしょうか。
部分的に翻訳違いで読み比べも愉しいものです。
そろそろ帰りの時刻です。
今日も地下鉄読書は続きます。
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
暖かくなってきて、ふらりとお散歩途中に立ち寄られるお客様が増えてきました。
当日にご来店でしたら、パンのご予約お取り置きも承っております。
電話一本です ( 011-215-9331 )。
明日もまたこんがりと焼けた丸いパンを山盛りにして、みなさまのご来店を
待ちしております!!
グラハム粉の丸いプチパン
1個 150yen
ありがほし / シミー書房
56 x 70 mm の、手のひらサイズの小さな本の中で、
小さな小さなアリが、やりたい放題いろいろにやっている本なのです。
なんたってアリですから、
それは小さくて本当に小さくて簡単に打ち負かされたってしょうがないって
いうか、気付かれもしないって思うでしょ?
もうぜーんぜんそうじゃない。驚くほど。
この本の中で暴れまくっているアリさんはですねえ、犬とファイティングしたり、
でっかくて真っ黒くて剛毛で洒落たストライプのシャツを着た ( 白カフス ) の
ネコを挑発したり、あっかんべーしたり、黒猫の逆襲をひょいっとかわしてみたり。
グラサンかけてカフェで寛ぎ、DJ のごとくレコード盤をまわし ( っていうか、盤
に乗っかって踊る、なんたってアリだから ) 、サーフィンをしてバイクに跨がる。
調子にのって、落ち込んで、うなだれたかと思うと飽きたりもして。
アリなのだけれど ( 脚と手6本、触覚~~!みごと~~見たら納得です )、
アリを描いているというわけでもなく( シミー書房ファンの皆様方ご承知のとおり)、
だからといってアリの姿を借りての何かの象徴ということではぜんぜんなく。
どっちでもよくて、どう解釈してくださってもいいのです・・・
というシミー書房的ゆるやかさの魅力が、これまで以上に増している
これは新たなる傑作。
岡部氏の描くアリ以外には、新明氏の選ぶ言葉のセンスなしには、生み出され得
なかったこの小さな本 ( シミー書房の作品群すべて。当たり前ですが ) 。
紙の質感、色合い、活字、ページ構成、
「 あり 」 から始まる単語の連なりは、美しさと遊びに満ちて、
それを視覚化してみせる画、画、画、
詩情とナンセンス、滑稽味とリズム感の絶妙な均衡。
そして、全てをまとめる製本の粋。
それらが、ページをめくるたびに同時にくる、その悦楽感!
繰り返し読んで楽しんで、
ふと思った 「 これって、JAZZ 。」 と。
最高のジャズのコンボ演奏のめくるめくソロと
深く響くハーモニーのごとしと。
そして、
小さな小さな 『 ありがほし 』 最後に一粒手のひらに残るのは、
小さな小さなアリさんの、ありがほしと望む、あわれの、いのちの、一粒。
いのちが尊く輝くんです。
シミー書房には、今回も降参してしまいます。
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
シミー書房展 『 冬は寒くて暖かい 』 あと3日となりました。
どうぞこの機会に、シミー書房の ” 書房 ” 作品を手にとってご覧頂きたく思います。
寒い季節にむかう楽しみ、そして日々への賛歌を感じることでしょう。
選んだ本と一緒に、温かい飲み物とパンのご用意を。
至福の冬のひとときをお約束いたしますよー!
明日も、こんがりと焼けた丸いパンを山盛りにして、みなさまのご来店を
お待ちしております!!
グラハム粉の丸いプチパン
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愛のエネルギー家事 すてきメモ303選
どんよりとした曇り空のような重たい心が、
くたくたに疲れていた頭と体が、
できない自分を責めてしまう、しょんぼりした気持ちが、
すーっと明るく晴れてくるような、目から鱗が落ちるような、
救われて、いたわられて、ハグしてもらえて、そして褒めてもらえた!
そんな気持ちに変われる、303の小さな提案集です。
「 人はひどく弱ったとき、だれかのはげましが必要です。
『 あなたならだいじょうぶ 』
そんなふうに力強くだれかに言ってもらえると、その瞬間から心のベクトルが
ガラッと変わります。
『 弱っていたわたし 』 ではなくなります。
『 勇気を持って前を向くわたし 』 になれるのです。
はたして、何のチカラでしょうか。
それは、言葉の持つ力だと思います。 」
この本の最後の ” おわりに ” の冒頭に書かれている文章なのですが、
本当にそうだな、と思います。
著者・加茂谷真紀さん、創業80年の老舗寝具店に生まれ育ち、某企業の崩壊部署を
4つ立て直す超多忙な管理職をしながら家事、子育て、介護を両立してきたそうです。
40歳を過ぎたころから右手で人や物の持つエネルギーを感じ取るように。
この本にも、前著 『 愛のエネルギー家事 ( 2019 )』 にも、人や物、空気、自然の、
目に見えないけれど確かにあるエネルギーの存在を、決して押しつけることなく、柔
らかく温かくユーモラスに、でも確信を持って伝えてくれるのです。
#102 『 ただいま、おかえり 』 のメモでは、
家に入るとき、だれもいなくても 「 ただいま! 」 と
明るく言います。 家や家具や家電という友人に向かって
のあいさつです。習慣にすると、家のなかにいつもあたた
かい空気が満ちてきます 。
と。エッ?! そうなの? あたたかい空気たっぷりかぁ・・・今日から私もそう
しようっと ( ふふふ ← 笑み )! ってなるでしょう。
また、#20 『 「 そうだ、ピザを取ろう 」 というひらめき 』 のメモでは、
疲れきっている日、ピザや出前を取ろうと思いついたとしたら、
それはとても大事なひらめきです。困ったときに人の力を借りる
ことは尊い行為です。すぐに注文して、おいしくいただきましょう。
怠けや手抜き、だらしなさ、そんな自分責めの気持ちになりがちなマジメな私達
は、結局ピザ注文はしなくても、結局ごはんしたくしたとしても、気持ちは大いに
慰められ、じわりと嬉しくなるでしょう。著者はまたこうも断言してくれます。
暮らしの中で SOS を出すことは、恥でも罪でもありません。何も
できない自分を、そのまままるまるいたわりましょう。
掃除も洗濯も、今日は何もしたくない!
OKです。すばらしいです。
その気持ちを大事に、今日は外食して、散らかったままの部屋で、
にこにこと寝てしまいましょう。
そのとき大切なのは 「 できなかった 」 と自分を責めず、明るい気持ち
で眠ること。そうすれば、明日には 「 家事をしたい! 」 というパワーが
わいてきます。
うんうん、そうよね!そうなのよね! って大きく頷き、胸の中からモヤモヤが消える。
本田亮さんのイラストもなんとも温かくて、著者の提案がさらに伝わります。
私が笑うと、世界が笑う。
コレって真実なのですよ、と実践済みの揺るぎのないコトバで包んでくれる、
忙しく一生懸命な人生半ばの全員に、一家に一冊の素敵な本だと思います。
『 愛のエネルギー家事 すてきメモ 303 選 』
加茂谷 真紀 著 / すみれ書房 刊
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
今週は祝日が二回、明日も祝日ですね。日頃の頑張りに 「 お疲れサマ~ 」 と
私も家族も、彼も彼女も、みんなでのんびりいたしましょう。
おいしいパンと、そしてワインも。
ゆったりと過ごす連休週末、どうぞご自愛くださいな!
明日も、こんがりと焼けた丸いプチパンを山盛りにして、みなさまの
ご来店をお待ちしております!!
グラハム粉も丸いプチパン
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ヴィルヘルム・フリードリッヒ・ニーチェ
大雪で埋もれていた2月8日( 火 ) から、
私は 『 ニーチェ全集11 / 善悪の彼岸・道徳の系譜 』を読み続けています。
初めてのニーチェ。
2020年からのウィルス騒動が、私をニーチェへと導いたのでしょうか?
私の信頼するヘッセがニーチェを信頼していたのを知ったからでしょうか?
きっかけはともあれ。
ヴィルヘルム・フリードリッヒ・ニーチェを今知り始めて、その知の容量の
凄まじさにまずは驚きます。
ニーチェの専門研究は文献学で、文献学とは言語で記された文献を通じて
古い民族や文化を解釈・批判・研究する学問、とのことですが、遙かなる先人の歴史
の膨大な記録をもとに、近代ヨーロッパ文化、キリスト教、道徳観の根幹とされて
いる認識を疑い、批判し、徹底的にメスを入れて容赦がないニーチェは、私達に
こう迫ります・・・・・
「 いかにして人間獣に記憶というものが植えつけられるか? この半ば遅鈍な、
半ば迂愚な刹那的悟性に、この健忘の権化に、いかにしていついつまでも残るよう
な或ものが刻印されるのか? 」
( 『 道徳の系譜 』 第二論文〈 負い目 〉、〈 良心の疚しさ 〉、およびその類いの
ことども 三 より )
・・・・・。
つまり、刑罰としての責め苦とは、
「 何かを烙きつけるというのは、これを記憶に
残すためである。苦痛を与えてやまないものだけが記憶に残る。」
( 同上より )
というもの、なんだとニーチェ先生はおっしゃるのでした。
のろまで鈍くてうっかりやで愚かで忘れん坊なケダモノ = 私たち人間 ってさぁ、
真実すぎだけどこうもずけずけと刺されると、私なんかはマゾヒスティックな笑いが
止まらなくなります。
あと、長いものに巻かれて思考停止している善人大衆を、” 畜群 ” と呼ばわって
はばかりなし。読む者の神経を逆なでするニーチェの論文には、彼の基本的な親切さ、
過剰な奇人振り、批判精神と彼のその膨大なる知的財産を、何よりも未来へと役立て
ようとする情熱に満ちているのでは? と、半年じっくりと読み進めてきてそう感じ
るのでした。
私のニーチェ探求は続きます。
それにしましても、このような、鉱物のごとき作品を読み進めるような読書は
初めてです。
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
ニーチェを読むのは、通勤の地下鉄で。そして休日のぽっかりと空いたスキマ
の時間にソファで。明日はパンがたっぷりと入っているカゴを脇に置いて、
地下鉄に揺られつつ続きを読みます。あと四分の一ほどで読了です。
明日も、こんがりと焼けた丸いプチパンを山盛りにして、みなさまのご来店を
お待ちしております!!
グラハム粉の丸いプチパン
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パリの すてきな おじさん
BOOK OFF にて購入したこの 『 パリのすてきなおじさん 』 。
読み終えて、想像していたのと全然違い、良い意味で裏切られたようなとても
嬉しい、出会いの一冊となりました。
2年程前からブックオフの棚で何度も背表紙を目にしていたのでしたが、なにせ
” パリ ” で、 ” すてきな ” で、” おじさん ” で。
手に取ってページを開くこともせずに、きっとオシャレなおじさま達の街角スナップ集
のようなイラストで、カフェやレストラン、隠れた名所なんぞをガイドしている、お花
が咲いているようなフワフワの素敵本だとばかり勝手に思い込んでいたのでした。
ぜーんぜん違った!
おじさんをこよなく愛するイラストレーター・金井真紀さんと、パリ在住40年という
「 商売道具は好奇心 」 のジャーナリスト・広岡裕児さんが、パリで様々な暮らし方を
している40人のおじさん達に取材を申し込み、インタビューし、撮らせてもらった
彼らのポートレイトを、イラスト化して作り上げた実に味わい深い ” パリのおじさん
図鑑 ” のような本なのでした。
パリには本当に様々な事情・・・長い歴史上の事情、世界情勢の流れでの事情、世界
地図による事情、などなどにより、たくさんの人種が混沌として暮らしている街だと
いうこと。登場するおじさん一人一人に背景があり、事情があり。
難民問題、差別問題、テロ事件、すぐにはどうにもならない苦くて辛い現実の中で
ありながらも、時に溜息をつきつつも、自分の運命は自分で引き受け、毎日を生きる。
おじさん達の表情は笑っています。
うっすらとした笑顔もあるし、ニッコリと深い笑顔もある。
インタビューを読む限り、笑ってはいられない厳しい状況にいるおじさんもいるんだ
けれど、きっと写真を撮る際には、笑ってくれたのでしょうか、金井さんは苦みが強い
深い人生を滲ませた彼らの顔の絶妙な笑顔の瞬間を描いているようです。
文章も淡々としつつも優しく軽い感じに書かれていて、この本の温かさはそのへんから
醸し出されていると思われます。
40人のパリのおじさん達の人生を味わうように読む、
これは大人のための本だなあ。
表紙の帯を外したら出てくる、チャプター➀ 〈 おしゃれなおじさん 〉 のお一人
グレゴリー・レヴィ氏39歳
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
読書のお伴にぴったりな、丸いプチパンです。
囓りつ、読みつ、( ワインを飲みつ ) 夏の夜は更けて・・・・なーんてね。
明日もこんがりと焼けた丸いパンを山盛りにして、みなさまのお越しを
お待ちしております!
グラハム粉の丸いプチパン
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青い飛沫 - 哀と逃争の日誌 -
職業としての作家の作品ではない私小説を、初めて読みました。
ほぼ A5 サイズのペーパーバックで、私家出版といわれる製版・製本なのでしょうか、
古い卒業文集のような、書き手と読み手の距離がとても近い温かみが感じられました。
がしかし、温かみがを感じさせるのは本としての体裁だけで、その作品内容は、多様な
趣向が盛り込まれた予想外の面白さ!
130ページの物語はぐぐーっとこちらの心に迫り、共振させ、気がついたら没頭して
読み切っていたのです。
1971年から1975年の大学生活の物語。
主人公・太田民夫 ( 愛称:タッチョ ) は、岩見沢の教員養成大学の一年生。
一年生ながら、学生自治会の委員長に選ばれ ( 懇願され )、本人の困惑が解消されな
いままではあるけれど、その活動に明け暮れていく様が描かれます。
時代は、
「 沖縄協定反対 六・二八全学生統一行動に決起せよ 」
「 佐藤反動内閣打倒!核付き返還粉砕! 」
「 マルカク派 」
「 民主派 / ノンポリ / 急進革命派 」
「 デモ隊・シュプレヒコール・檄 」
といった激しいワードが激しく連発される、政治と大学生が熱く結ばれていた時代。
当時の学生達の、権力への抵抗、世の中を自分達の手で変えていこう、というストレート
な情熱そしてストレートな活動は、振り返って何一つ、本当に何一つ叶えられることなく
砕け散り消えてしまったことを、私達は知っています。そして、作者・多田和夫氏も
もちろん知っていらっしゃる。約50年を経て、現在の大学、学生の在り方や世の中の
雰囲気も含めて、隔世の感にじわり驚くのでした。
私が大学生だった80年代初頭は、大学構内や、古いサークル棟のなかに、貼りっぱなし
の赤に白ヌキの学生運動の檄を飛ばすステッカーが残っていました。
でも、バブル時代の大学生のほとんどが、そのステッカーが貼られた時代のことも、言葉
の意味も解らなかったし、何より無関心でありました。ただ、タッチョと仲間達の時代の
微かな匂いはまだ煙のようにときおり漂うこともあったように記憶しています。
( 学生自治会の、枠組みのみのなんちゃって活動振りなどに・・・ )
( そして、サークル活動のはちゃめちゃ無節操ぶりなどに・・・・ )
だからかもしれませんが、ああ、そういう事があったのか、そんな時代だったのかという
ような懐かしさと哀愁が迫ってくるのです。
迷いと悩みの中であっという間に終わってしまう学生時代を、タッチョは誠実に
がむしゃらに駆け抜けます。タッチョの不器用な人柄に引き込まれながら、
江別~岩見沢、そして札幌と、当時の世相や街の様子にも懐かしさがこみ上げます、
亡き両親の若かりし頃の、札幌オリンピック招致と地下鉄開通に沸き立っていた
” あの頃 ” を覚えている端くれとして。
タッチョの人生行路の続きをぜひ読みたいです。
とても貴重な『 青い飛沫 』は、ジャワマメ文庫で借りました。
月2回ほど開室のジャワマメ文庫、司書さえこさんの選書が抜群によいのです。
会員制で、どなたでも会員になれる。
本好きさんは、インスタグラム@javamamebunko をチェック!
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
週に一度、種類も一つ、グラハム粉配合60%の、ちょっと巷にはないパンです。
読書のおともには、パンとコーヒーという人、
こんがりと焼けた丸いプチパンを山盛りにしてお待ちしております!!
グラハム粉の丸いプチパン
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『 しらくも村のおはなし 』 新作によせて
” こども ” と呼ぶのがふさわしいのは、一体何歳までなのか、はっきりとした
区切りはないように思いますが、それでも、息子の成長の流れを見ている限りで、
個人的には、おしめがとれ始める3歳くらいから、9歳いっぱいくらいかな、と。
10歳以降は、ティーネージャーとして歩み始める ” 少年 ” になり、
ティーネージャーであっても、16歳を過ぎると、もう立派な ( いっぱしの )
” 若者 ” としての雰囲気が勝ってくるし、なんと18歳になると、日本ではもう
” おとな ” になってしまうのでした。
さて、
『 しらくも村のおはなし 』 は、
札幌・シミー書房 ( 新明 史子・岡部 亮 のお二人 )が2012年から創作して
いる物語のシリーズです。
現在5巻まで発表されていて、この度待望の6巻目である新作が上梓されました。
『 パン屋の弟子 』
『 ふぶきの日 』
『 風車小屋コンサート 』
このなんとも魅力的な三つのタイトルが函に入っています。
シミー書房さんからご恵投いただき、繰り返し拝読いたしました。
小さなこどもが、パン屋に住み込みで弟子入りするおはなしの 『 パン屋の弟子 』。
その小さなこどもとは、既刊 『 ウロホテル 』 『 ズク沼の橋 』 にひょっこりと
でも印象的に登場する 「 パンを抱えた若者 」 ( ウロホテル・17p. )であり、
「 大きなカゴを背負ったパン屋の少年 」( ズク沼の橋・17p. )なのでした。
彼の名前がトラだということが初めてわかります。
村のフィクサー ( !? ) 的存在のミミズクロウの計らいで、一人でカービー
ベーカリーに出向いてきた、いもうと・おとうと沢山の長男トラは、店主に
その幼さに驚かれるのでした。
ミミズクロウの策略に渋い顔の店主は、弟子をとるつもりはなく、別の仕事先を
と、彼の弟の小麦農家へとトラを向かわせるのですが・・・・・。
トラはまだ幼い。
きっと、8~9歳くらいかな? ” こども ” の時期のおしまいくらいの。
住み込みで働くために、一人で、初めての職場にやってきたトラの肖像が左ページ
にホントにポツリとあるのですが、その立ち姿でトラがどんなこどもかを表現する
岡部さんの画の素晴らしさ。
こどもなのだもの、まだまだ自分のための上手な話などできないよね。
ある意味、トラは運命に翻弄されているわけなのですが、本人には不安や不満は
これっぽっちもなく、素直に大人のよかれに従って、一生懸命取り組むのでした。
幼いトラを包んでいるのは、香ばしい焼きたてのパンの香りであり、
しらくも村の大人達の、人生に向かう多幸感、安心感、そして楽天的な気抜け感。
20p. で大きなカゴを背負って橋を渡るトラの誇らしい表情に、
「 まあ、トラちゃん 、デビューおめでとう! 」 と、手を叩きたくなります。
こどもから少年へ、そして若者へと、毎朝香ばしい焼きたてパンを背負うトラ
の最初の物語に、少し泣けました。
『 しらくも村はこんなところ 』 展
新作を中心としたしらくも村のものがたり世界を展示されます!
今日 5月12日(木 ) スタート!!
絶対に行かなくては!
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
こちら 「 かんかんベーカリー 」 の配達員は、おじさんとおばさん。
二人で朝の焼きたての丸いプチパンをカゴに運んで参ります。
明日も、こんがりと焼けたパンを 山盛りにして、みなさまのご来店を
お待ちしております!!
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ワインラヴァーを自覚し始めた時に
気がついたら私、立派なワイン好きになっておりました。
何でも同様だと思いますが、
好きになっていけばいくほどにその対象が何であれ、奥深さを感じ
ざるを得なくなりますよね、実際奥深いんですが。
ワインの世界も相当に広く深い森・・・・
どこか入り口なのだろう?
どっちに行ったらいいのだろう?
もっと進むとどんな風景、場所、空気が待っているのだろう??
などなど、ホント、ビビリの迷子!
なぜビビリますか?
はい、それは、その森には、美しくも厳しい魔女が何人もいてですね、
「 おっとお待ち!ここから先へと進むには、かれこれこんくらいの
入場料を支払ってもらわなければダメダメよ~~( ニヤリ )。」って
通せんぼしてくるからなのです。
ワインって正直に味と価格が正比例な飲み物、深い森をさらに進もうにも
そんな入場料は払えない、でも納得のお気に入りの方向へと進みたい出会いたい!
えーん、じゃあどうしよう?!
ワイン初心者の私は、壜とそのラベル ( ワインの世界では ” エチケット ” って
言うらしい ) で選んだり、勘で選んだり、説明書きを読んでもどれも似たような
説明ばっか、と思いながら選んだり、もちろんお値段でも。
なんというか、定まらない感じが、なんというか落ち着かないのでありました。
そういう人はやっぱり沢山いらっしゃるんですね。
そんな人達を 「 ワイン迷子 」 と名づけ、さらに銘柄や値段以前に、自分がどんな
ワインが好きなのかがわかっていないさらに多くの 「 インナー迷子 」 達の
ただひとつのシンプルな願い=「 おいしいワインに出会うこと 」を叶えていく為
のガイドブックが、本日ご紹介のこの本なのです。
ワインガイドブックは数あれど、この本の基本はズバリ・家飲み!
「 自分の好みを把握しておくこと 」
「 最低限の知識 」をもつこと
この2点に特化して、実に解りやすく丁寧にレクチャーしてくれます。
著者は、ワイン&フード ジャーナリストとして活躍しておられる女性ですが、
元・ワイン迷子。実体験をもとに書かれているので、
至れり尽くせり、痒いところに手が届く実に上手い構成も納得です。
オススメの価格帯設定も、1000円台~3000円前後で、程よいところ。
葡萄の品種、世界中のワイン産地を把握でき、もう森の魔女にも怖じ気づく
こともなし ( かな?笑 )、少なくとも無駄に迷わずに挑戦できるのは
楽しい限りですよね。
さあ、本日も台所にて晩ご飯のおかずをこしらえながら、至福の立ち飲み
一人アペロの時間です。
そして、明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
私は、実はワインのアテには、数日たったハード系のパン一切れっていうのが
一番好きなのです、ホントよ!噛むと粉の味がする素朴なパンの、ちょっと
固くなったくらいなのが最高です。
グラハムパン、向いてます。ワイン派のみなさま、お試しを~~
こんがり焼けた丸いプチパンを山盛りにして、
明日もご来店お待ちしております!!
グラハム粉の丸いプチパン
1個 150yen
紙魚豆50音
” 手持ちぶさた ” って素敵だと思いませんか?
そして、とても贅沢だとも思うのですが、どうかしら?
とりあえず今、やることがない、所在のない状況だなんて、
両手に溢れるほどの日常茶飯事を抱えている ( つもり ) の日々を送る私達 ( 勝手に
複数形 )にとって、もはや憧れ。夢。
私がイメージするお気に入りの ” 手持ちぶさた ” な状況は、
旅先のホテルのバーカウンターに一人で座っている、というもの。
磨き上げられ年季の入ったクラシカルなバー、
目の前にあるオーダーしたお酒 ( うーん、何がいいかな、個人的には 「 マンハッタ
ン 」 だな・・ ) を飲む事以外、やることなし。
完璧ですよ、手持ちぶさたの極みです。
だまってお酒を飲んでいるだけでよろしいのですが、
誰かに ( バーテンダー、2席離れた隣客、など ) 話しかけられたくはなし。
なんたって完璧な手持ちぶさた、この贅沢時間でしか味わえないことをやりたいな。
そして、私はポケットから本を取り出すのです。
馴染んで角がめくれつつある和綴じの小さな本を、適当に開く。
め ( 左手は顔に、右手はなんかウロウロ彷徨っているっぽい人物が立っている )
な ( 河川を丸太にまたがって流れゆくひと・右手で目をこすっている
め、め、めめめ、、、眼鏡を落としちゃったひと、、、
な、なーなー、、、なりゆきまかせ、、、なーんてね、
ページの上角にぽつりと 1音
そして、藍色のインクで描かれたオモシロイ絵。
絵を見ながら、「 何するひとぞ? 」 と、好き勝手に想像する趣向です。
この様式で、50音
一人、ニヤニヤ。時にプププッ・笑。軽妙なイラストに引き込まれてストーリー
を勝手に創作していたり・・・・
そして、旅先のバーカウンターの手持ちぶさたの愉悦の宵は更けてゆくのです。
ふふふ、いかがでしょうか。
” 手持ちぶさた ” はふいに、予期せぬ時にやってくるもの。
だから、いつもポケットに小さな詩集や滑稽な遊び本を入れておくのは、
上等な大人の嗜み・・・っていう大人でありたいものです。
ぬ・・・
シミー書房 『 紙魚豆50音 』
1490yen
大盛況の前半終了です。
初日に売り切れてしまった 『 紙魚豆50音 』 再入荷しました!
冬の温かな部屋で、ゆっくりと読む本本本があります。
ご来場、お待ちしております!
BOOK TIME
本が好き。
どうして好きなのかなぁ?
本が好きな人は、そんなことを考えるのも好きなのです。
どうして私はこんなに本が好きなのかしら?
どうして私はこの本が好きなのかな?
いつから好きなのかしら?
最初に出会った 「 コレ好き! 」 って思った本はなんだったかな?
今に至る ” 私 ” をつくった本を〇冊挙げてっていうお題だったら、私は・・・?
このようなことをあれこれ考え思い巡らせ始めると、もう止まりません。
本、そして自分の人生においての本との特別な関係についての考察、それ自体が
本を読むことと同等といってもよい程の悦楽なのです ( 変態? )。
月刊雑誌などの 「 本・読書の特集号 」 は、どーれどれっ! とばかりに必ず手に
とり、熱心に立ち読みし、内容によってはそのままキャッシャーへと進みますし、
本好きの相手との本談義もそりゃ結構ですし、本屋という単語、図書館という
表記、古書店という単語は、もはやまじない言葉とも言えるほどの精神の安定に
即効性を持ち得る・・・・・
と、多かれ少なかれだいたいもって似たもの同士である ( ハズ ) の本好きの代表
として、シミー書房の新明史子氏が、「 自分の好きな作品を紹介する本 」という
新作を上梓されました。
タイトルもズバリ、 『 BOOK TIME 』。
新明さんの人生と本について、特選5タイトルを紹介しながらのお話しは、しみじみ
と染みわたるような味わい。
その文章は平明であり、明朗さと清潔さに満ちています。
人生を変えた本の力の途方もなさについて、
容赦なく読み手に不意打ちを仕掛けてくる本の容赦なさについて、
原作小説と映画化作品について、
様々な名もなき人々の人生が世界を繋げ広げていることについて、
そして、自分の言葉を得るということについて。
” 本がものすごーく好きでたまらない ・新明史子編 ”。
『 BOOK TIME 』 は、” 本がものすごーく好きでたまらない・自分編 ” を書きたく
( 妄想したく ) なる、素敵なきっかけ本であり、
それはそれは上等なサンプル本でもあるのでした。
今私は、J.R.R. トールキンの 『 指輪物語 』 を再読中 ( 2回目 ・・・ちなみに新明
さんは再読5回!とおっしゃってたような・・・ )で、物語の三分の二は、厳しく
険しく辛い旅の道程なのですが、行き詰まるたび窮状を抜け、前へと進む力を与えて
くれるエルフ族の 「 レンバス Lembas 」 という旅行用食料が仲間達を助けます。
それは、薄焼き菓子で、一枚食べるだけで一日たっぷり歩けるほど活力がつき、
走りながら食べることも出来るほど扱いやすく、非常に美味、、、というものです。
ふと気がつきました、
シミー書房発行の本は、わたしにとって、レンバス・・・・・。
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
秋からはますますBOOK TIME が楽しみですね。
読んできた本、今読んでいる本、これから読みたい本について、
本が好きな人同士でおしゃべりしましょう!
パンと珈琲も用意してね。
明日も、こんがり焼けたパンを山盛りにして、ご来店お待ちしております!
本のエッセイ BOOK TIME / 2021年 8月 26日
文・新明 史子
絵・岡部 亮
発行・シミー書房
グラハム粉の丸いプチパン
1個 150yen
新しい世界
©RODCHENKO PHOTOGRAPHY 1924 - 1954
一葉のモノクロームのポートレイト。
読むことに集中している老女の写真です。
頭をスカーフですっぽりと包み込み、化粧気の全くない皺が刻まれた素朴な丸顔。
洗っても決して抜けない染まったような黒ずみのある短い爪の大きくてごつい手で
眼鏡を持ち、片方のレンズを右目に当ててぎゅっと眉を寄せ、口をへの字に結んでいる。
撮ったのは、ロシアの写真家 アレキサンダー・ロドチェンコ ( Alexander Rodchenko
1891~1956 )。
『 読んでいる母 Mother reading 』 という題の1924年の作品です。
洗濯女として働き通しの人生を送ったこの母親は、
「 50代遅くに読むことを習い、急激に全く新しい世界を発見していった 」 と、
写真横のキャプションに書かれています。
19世紀後半のロシアに生まれ、文字との繋がりが全くないまま働きづめで生活を支えて
きた人生に ” 読むこと・読めること ” がもたらした 「 全く新しい世界 」 の輝きは
いかほどだったことでしょうか。
本を読むこと、それはつまり未知の世界のドアを開けてみるということ。
100年以上前に生きたロトチェンコの母と同じく、そして、もっともっと遙か昔の
時代であってもそれは全く変わりません。
私たちは、読める。
それまで詳しくは知らなかった、
想像すらできなかった、
存在さえ気付かなかった、
新しい世界 と繋がることができる。
本は、常に未知の世界へと案内しようと、静かに私たちを待っているかのようです。
一生懸命に文章を読み解いている母の姿を撮った、息子ロトチェンコの温かさ、母へ
の尊敬と喜びが伝わるポートレイトは、
いつも私にそんなことを思わせてくれます。
2021年版 『 読んでいる母 』。
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
ようやくすこし涼しくなってきました。
新しい季節は、新しい世界。本を読もうではありませんか。
読書に集中すると、おなかも空きます、パンと珈琲で一休み。
こんがりと焼けた丸いパンを山盛りにして、明日もご来店お待ちしております!
グラハム粉の丸いプチパン
1個 150yen
おつきさま こんばんは
5月26日 ( 水 ) の夜のお月様のかくれんぼショー、楽しかったですね!
ご覧になりましたか?
私は息子と一緒に見物してました。
夜空にまあるいお姿はすっかりと消えて。
( ↓ ここからは、私の心の中のつぶやきです ・・・・・ )
「 もういいかぁ~い? 」 ( 私達が鬼 )
「 もおぅ い~ぃよおぉーーーぅ 」 ( お月様のお返事 )
しばらくして見にいくと、爪切りパッチンした爪のように細い細い弓形のお月様
がチラリと見えました。
も少し経つと、上手に隠れすぎたお月様は、チロっとお顔の端っこを見せてきて、
もう少し経つと、三分の一ほど、
もっと経つと、半分は出てきていて、
さらに経つと、七分目は見えちゃって、ハイここいらで 「 みーーつぅけたぁっ!! 」
とかくれんぼ完了。
見つかってなんだか嬉しそうな、まんまるいお顔がさらにさらに現れて。
( ↑ 心の中のつぶやき、結構メルヘ~ン、ここまで )
「 おつきさま こんばんは。 」
てな調子で、息子と私は、夜空に向かって手を振ったのでした。
あかちゃんだった息子と狭い布団でぴったりくっついて、毎晩毎晩読んだ絵本。
林 明子の絵本との出会いは、この 『 おつきさま こんばんは 』 です。
そして、わたしの絵本の読み聞かせの才能 が芽を出したのも・笑!!
よるになって、くらくなって、
おうちのむこうからまんまるのおつきさまがあらわれて。
すると、くろいくもが、おつきさまにかぶさってきて、
ああ、おつきさまはなきそうです。
くもは、おつきさまをすっかりかくしてしまうのですが、
やがて去っていくのです 、
「 ごめん ごめん
ちょっと おつきさまと
おはなし してたんだ
では さようなら
また こんど 」 っていいながら。
そして、すっきりとした夜空には、おつきさまがふたたび、ニッコリ。
おはなしは、これでおしまい。
” おつきさま ” とちゃんと言えなくて、「 おちかまーーっ!! 」 と呼びかけて
いた幼かった息子は、くもさんが登場すると、あぁ~とおつきさまと同じく
顔をしかめてハラハラし、私がくもの立ち去り際のセリフをちょいとワルっぽく
やると、ハァ!と安心顔になって、エンディングのおつきさまのニッコリ笑顔に
も一度 「 おちかまーーっ!! 」 と盛り上がる。
毎晩毎晩この繰り返しだった時期が、あったなぁ。
そんな思い出話を、5月の夜空の皆既月食を見物しながら息子と懐かしむ日が
来ようとは、当時の私には想像すらできなかったなあ。
すっかりと私の背丈を超してしまった息子とともに、なんてねえ。
リネアの5月 ①
初めて「 押し花 」を教えてもらったのは小学校1~2年生の頃だったと思います。
母が庭に咲いていた花・・チューリップだったかな・・・の花びらを本のページ
に挟み、上に本を数冊のせておき、ずーっと経った頃に開いてみたら・・・・・
あんらまぁ!ぺったんこになり色も少し褪せた花びらが そこにありました。
新しくて好きな感じの絵のぬりえ帖を買ってもらって嬉しかったのと同じく、
絵の具で色水を作るのがおもしろかったのと同じく、
型ガラスの模様の上に紙をあてて上からクレヨンで模様を写し取るのがおもしろ
かったのと同じく、えっとあと何だっけ?いろいろあったはずですが、
まあ、独りだけの愉しみを感じたのでした。
色褪せた花びらだなんて、何の有効性があるのかい?と問われたら、
「 ないですよね。 」 というしかないのですが、生えている花を自分で加工して
本の中に閉じ込める、そこにとても魅力があったのでした。
学校から帰ってくる道すがら、土手に咲いていたいろいろな花を採ってきては
本を選び、その本に挟み、そしていつしか忘れて、年月は流れ。
ある時ふと手に取り、ページを開くと、薄茶色で薄くぺったんこの花が挟まって
いて、大変驚くのでした!
それは、押し花を忘れ去っていたから、というよりは、
このようなことをしていた昔々の自分に、瞬間的に再会させられて頬をぶたれた
ような衝撃を感じるような感じがしたから、ということでしょうか。
( つづく → )
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
暖かくなり、花盛りの、よい季節になりました。
サンドウィッチをつくって、ポットにはコーヒー ( 缶ビールもいいですね! )。
散歩、そしてどこか芝生かベンチのある公園でのんびりとお昼ごはんです。
こんがりときつね色の丸いパンを山盛りにして、
ご来店お待ちしております!!
グラハム粉の丸いプチパン
1個 150yen
リネアの4月
リネアは、スウェーデン生まれの絵本の中の少女なのですが、真っ直ぐな
黒い髪で、しかもきれいに切りそろえたおかっぱスタイル。
顔立ちも、丸いお鼻に一重まぶたの小さめの目・・・まるで日本の少女のようにも
見えます。年は、12~13歳くらいですね、都会の真ん中のアパートに住んでいて、
四季折々の愛する自然とともに生活しているのです。
街中暮らしで愛する自然とともに?
一体どうやって? 詳しく知りたい!
そうですよね。そんな疑問や希望に応えて、一年間を月ごとの章で紹介したのがこの
『 リネアの12か月 』 です。
都会っ子でもあるリネアは、
豊かさとは?と常に自問する私達のガイドなのです。
4月。
リネアは、室内で種をまきます。
園芸店で種を買ったけれど、どの種もまくにはまだ早すぎる。でも長いあいだ室内の
小さな庭を夢見ていたリネアは、大きな金属の缶のふたに土を入れ、列や四角を描き
ながら買ってきたコショウソウ、カラシナ、ピーナッツ、エンドウ、ベニバナインゲン
小麦の種をそこにまくのです。ちゃんと細い砂の道もつくって、小さな庭師人形や、
うさぎ人形も2匹置いたりします。
黒い土と、様々な色や形の種と、小さなお人形の、ミニミニガーデン。
わくわくしてきますよね。
そして4日後、
芽が出て、列は乱れはじめ、
一週間後には、小さな小さなその庭は、芽がぐんぐん伸びて、ジャングル状態に!!
2週間後、あまりの混乱ぶり ( ! ) に、リネアは小麦、カラシナ、コショウソウ
を切り取ってサラダにするのでした。
わあーーどんなお味?ステキです!サラダ!
それからエンドウとベニバナインゲンは、友だちのブラッシュさん ( 引退した
植物育ての達人のおじいさん ) の庭に植えました。
・・・・・っていう、4月。
真似してできそう。でも、同じにやらなくても、なにか部屋の中で土と緑を楽しみ
たくなります。なんだか気軽にやれそう、とわかります。
まずは、ホームセンターやお花屋さん、苗やさんを訪ねたり、種コーナーを見に行こ
うかな、って思えたならば、もうすでに今までと違う春の生活にシフトしているので
はないかしら。
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
フレッシュサラダと、パン、そしてバタ。
春は軽やかで新鮮な食事でいきたいですね!
こんがり焼けた丸いパンを山盛りにして、ご来店をお待ちしております!
グラハム粉の丸いプチパン
1個 150yen
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