リンク先でもある「磨羯宮(まかつきゅう)」で、ハーレクインにおける男の料理の問題がとりあげられていたので、その流れでぽつぽつと。
「ハーレクイン・コミックス感想 クッキング・ヒーロー特集」
市川ジュン「懐古的洋食事情」の『西洋野菜主義』は、本編の重要キャラ、美青年洋画家・九門京也の母の若き日の話。田舎の別荘(?)で絵を描く月絵のところに近所の農家の青年がやってきて、ご飯をつくってくれるようになる。
「食費は稼げてもご飯を炊くことができずにわたしは飢え死にするかもしれない!」「だいじょうぶ おれが毎日つくりにきてやるさ!」
この微笑ましい二人が結婚していたとすれば、それを不幸にした深草子爵先代は鬼畜である。もっとも、あんなほのぼの夫婦の家庭ではあのヒネた京也にはならなかったろうけど。
同じシリーズに登場した、深草子爵の末弟は、使用人たちを遊びに行かせて無人にした台所で料理をすることが密かな趣味だった。(密かな、であるのは時代の制約というもの)
「男の料理」が時に揶揄されるのは、わざわざ高い食材を買う、やたらと時間をかける、後片付けをしないことーーであるけど、この場合は、台所にある材料を少しずつ(そりゃお金持ちだからいいものがあるに違いないけど)使う、留守中に済ませるのだから手早く、そして、隠れてしているのだからきちんと後片付けもしているはず。「男の料理」の悪い条件にあてはまっていない、これは中々おりこうさんの例ではないか。
今市子『大人の問題』(BLだけどむしろホームコメディの傾向が強い)
二人の主人公がいて、大学生の直人、宝石デザイナーの悟朗(漢字が違うかもしれない)。直人のパパはゲイに目覚めて離婚しており、そのパパのゲイ婚相手が悟朗、「さっぱり系美青年」。直人のママは「働いてるから手のかかるものつくってない」が、そのことをぶーたれてはいない様子。ママも風邪で倒れた時に悟朗に料理にきてもらったりしている。悟朗は早く父を亡くしていて、看護婦の母、兄一人、姉三人。母と姉たちが恐ろしく料理ヘタなので悟朗が上達したという身の上。それを恨みには思っていないらしい。「働きながら子供を育てるのはたいへんなことだ」
直人ママがBFをつくった時、一緒に過ごす間にずっとコンビニ弁当であったことからケンカになり、その相手のおっさんのグチをきかされた悟朗は「あなたがつくったらどうですか?(中略)主婦たちは毎日の食事の支度にあきあきしてるんですよ」 このあとひと騒ぎあって、おっさんは「料理教室に通うことにした!」と言っていたが、出番はもうなかった。 のちに、悟朗の兄の一(ハジメ)が、直人ママと不倫して、妻と別れて結婚する。かつては、妹たちの料理のマズさにキレながら自分が料理する気は皆無だったのだが、再婚してから家事をしつけられていた。
よしながふみ『きのう何食べた?』のシロさんは、職業は弁護士、同居人(恋人)は美容師で、シロさんのほうが帰りが早いのでだいたい夕食はシロさんが担当している。1回16ページのうち3ページが料理にあてられており、主婦の読者たちから参考になると好評を得ている。
シロさんが料理を始めたのは、以前ちょっと太った時、当時の同居人の野菜たっぷり料理で元にもどったことがきっかけで、節約とダイエットのために自炊しているという設定。日常のことであるのが重要。なお、同居人のケンジもできないわけではなく、ケンジがつくることもある。シロさんの近所のおともだち、高齢主婦が登場して腕を発揮することもある。
桑田乃梨子『ケーキ屋ケンちゃん』についてここのブログで書いただろうかと思って検索したが出てこない。
「ケーキ屋さんと結婚したら、毎日ケーキが食べれるね」と、好きな女の子が言うのをきいたケンちゃん(小学生)は、手作りのケーキをプレゼントしようと、近所のケーキ職人のタマゴであるにいちゃんにニワカ弟子入りして教えてもらうのだった。
--これすごくいいなぁ。喜ぶことをしてあげたいという気持ちは男女に共通のはず、男の子がお菓子つくってもいいじゃないか。この話で、にいちゃんはカノジョ(未満)に味見してもらうことを楽しみにしていた。
同じくわたんの『男の華園 A10大学男子新体操部』に関して、06.11.15.の記事からコピー:
数ヶ月まえに文庫になったので再読した桑田乃梨子『男の華園』で、一人暮らしの男子大学生ユカリが風邪をひくエピソードがある。バイト先で倒れたので、居合わせた女の子二人(部活仲間)がタクシーで部屋に送ってくれた。とりあえ食べるものも差し入れしてくれたが、焼肉弁当だのカレーパンだの、病人には不向きなもの。運良く、念のため見に来た男子新体操部の先輩が、うどんとかモモ缶を持参。おかゆも作ってくれた。
ここでユカリは、女の子(しかも一人は意中の)が世話やいてくれてるなんてラッキーな状況のはずなんだが、男の先輩のほうが役にたったというあたりが私には愉快である。
引用終わり。このユカリに片思いしている他大学の新体操部のテツ(男)が、手作りチョコだのお雑煮だのをユカリに食べさせて喜んでいる。見た目がオトメチックなわけではない、むしろストレートにかっこいい奴が健気なので心に訴える。
以下、08。09.21の記事から引用。ジェンダー視点で好ましいキャラという文脈だった。
よしながふみ『1限はやる気の民法』の田宮(下の名前なんだったか?)
性格・勉学ともに大マジメの秀才。ア法学部主席で金時計もらい、院へ進み、学者コースを歩む。自家製の弁当を学生に分けてやったときのやりとり:「俺もこんな弁当作ってくれる彼女が欲しいっすよ」 「なんだそりゃあ、食べたかったら自分で作れ、女の子は家政婦じゃねーんだぞ!」
同じゼミの女子学生が不当な白眼視を浴びていれば義憤を感じるし、友だちの付き合いはする、でもホモだから下心は持たない。
引用終わり。
小説の話だけど、向田邦子の某短編で、失業中で奥さんにも逃げられている男が、昼は食堂、夜はてんやものという食生活だったので、--失業者の状態で毎日外食なんかしてるんじゃねぇっ!!と説教してやりたくなったものである。
まとまりなく、ひとまずこれで終わる。
翌日付記。
ひらのあゆ『ラディカル・ホスピタル』 滝沢ドクターの妻が寝込んだので彼が料理をしようという際に、女性患者が「注意すべきこと」を尋ねられて、「後片付け!」と即答していた。
「ハーレクイン・コミックス感想 クッキング・ヒーロー特集」
市川ジュン「懐古的洋食事情」の『西洋野菜主義』は、本編の重要キャラ、美青年洋画家・九門京也の母の若き日の話。田舎の別荘(?)で絵を描く月絵のところに近所の農家の青年がやってきて、ご飯をつくってくれるようになる。
「食費は稼げてもご飯を炊くことができずにわたしは飢え死にするかもしれない!」「だいじょうぶ おれが毎日つくりにきてやるさ!」
この微笑ましい二人が結婚していたとすれば、それを不幸にした深草子爵先代は鬼畜である。もっとも、あんなほのぼの夫婦の家庭ではあのヒネた京也にはならなかったろうけど。
同じシリーズに登場した、深草子爵の末弟は、使用人たちを遊びに行かせて無人にした台所で料理をすることが密かな趣味だった。(密かな、であるのは時代の制約というもの)
「男の料理」が時に揶揄されるのは、わざわざ高い食材を買う、やたらと時間をかける、後片付けをしないことーーであるけど、この場合は、台所にある材料を少しずつ(そりゃお金持ちだからいいものがあるに違いないけど)使う、留守中に済ませるのだから手早く、そして、隠れてしているのだからきちんと後片付けもしているはず。「男の料理」の悪い条件にあてはまっていない、これは中々おりこうさんの例ではないか。
今市子『大人の問題』(BLだけどむしろホームコメディの傾向が強い)
二人の主人公がいて、大学生の直人、宝石デザイナーの悟朗(漢字が違うかもしれない)。直人のパパはゲイに目覚めて離婚しており、そのパパのゲイ婚相手が悟朗、「さっぱり系美青年」。直人のママは「働いてるから手のかかるものつくってない」が、そのことをぶーたれてはいない様子。ママも風邪で倒れた時に悟朗に料理にきてもらったりしている。悟朗は早く父を亡くしていて、看護婦の母、兄一人、姉三人。母と姉たちが恐ろしく料理ヘタなので悟朗が上達したという身の上。それを恨みには思っていないらしい。「働きながら子供を育てるのはたいへんなことだ」
直人ママがBFをつくった時、一緒に過ごす間にずっとコンビニ弁当であったことからケンカになり、その相手のおっさんのグチをきかされた悟朗は「あなたがつくったらどうですか?(中略)主婦たちは毎日の食事の支度にあきあきしてるんですよ」 このあとひと騒ぎあって、おっさんは「料理教室に通うことにした!」と言っていたが、出番はもうなかった。 のちに、悟朗の兄の一(ハジメ)が、直人ママと不倫して、妻と別れて結婚する。かつては、妹たちの料理のマズさにキレながら自分が料理する気は皆無だったのだが、再婚してから家事をしつけられていた。
よしながふみ『きのう何食べた?』のシロさんは、職業は弁護士、同居人(恋人)は美容師で、シロさんのほうが帰りが早いのでだいたい夕食はシロさんが担当している。1回16ページのうち3ページが料理にあてられており、主婦の読者たちから参考になると好評を得ている。
シロさんが料理を始めたのは、以前ちょっと太った時、当時の同居人の野菜たっぷり料理で元にもどったことがきっかけで、節約とダイエットのために自炊しているという設定。日常のことであるのが重要。なお、同居人のケンジもできないわけではなく、ケンジがつくることもある。シロさんの近所のおともだち、高齢主婦が登場して腕を発揮することもある。
桑田乃梨子『ケーキ屋ケンちゃん』についてここのブログで書いただろうかと思って検索したが出てこない。
「ケーキ屋さんと結婚したら、毎日ケーキが食べれるね」と、好きな女の子が言うのをきいたケンちゃん(小学生)は、手作りのケーキをプレゼントしようと、近所のケーキ職人のタマゴであるにいちゃんにニワカ弟子入りして教えてもらうのだった。
--これすごくいいなぁ。喜ぶことをしてあげたいという気持ちは男女に共通のはず、男の子がお菓子つくってもいいじゃないか。この話で、にいちゃんはカノジョ(未満)に味見してもらうことを楽しみにしていた。
同じくわたんの『男の華園 A10大学男子新体操部』に関して、06.11.15.の記事からコピー:
数ヶ月まえに文庫になったので再読した桑田乃梨子『男の華園』で、一人暮らしの男子大学生ユカリが風邪をひくエピソードがある。バイト先で倒れたので、居合わせた女の子二人(部活仲間)がタクシーで部屋に送ってくれた。とりあえ食べるものも差し入れしてくれたが、焼肉弁当だのカレーパンだの、病人には不向きなもの。運良く、念のため見に来た男子新体操部の先輩が、うどんとかモモ缶を持参。おかゆも作ってくれた。
ここでユカリは、女の子(しかも一人は意中の)が世話やいてくれてるなんてラッキーな状況のはずなんだが、男の先輩のほうが役にたったというあたりが私には愉快である。
引用終わり。このユカリに片思いしている他大学の新体操部のテツ(男)が、手作りチョコだのお雑煮だのをユカリに食べさせて喜んでいる。見た目がオトメチックなわけではない、むしろストレートにかっこいい奴が健気なので心に訴える。
以下、08。09.21の記事から引用。ジェンダー視点で好ましいキャラという文脈だった。
よしながふみ『1限はやる気の民法』の田宮(下の名前なんだったか?)
性格・勉学ともに大マジメの秀才。ア法学部主席で金時計もらい、院へ進み、学者コースを歩む。自家製の弁当を学生に分けてやったときのやりとり:「俺もこんな弁当作ってくれる彼女が欲しいっすよ」 「なんだそりゃあ、食べたかったら自分で作れ、女の子は家政婦じゃねーんだぞ!」
同じゼミの女子学生が不当な白眼視を浴びていれば義憤を感じるし、友だちの付き合いはする、でもホモだから下心は持たない。
引用終わり。
小説の話だけど、向田邦子の某短編で、失業中で奥さんにも逃げられている男が、昼は食堂、夜はてんやものという食生活だったので、--失業者の状態で毎日外食なんかしてるんじゃねぇっ!!と説教してやりたくなったものである。
まとまりなく、ひとまずこれで終わる。
翌日付記。
ひらのあゆ『ラディカル・ホスピタル』 滝沢ドクターの妻が寝込んだので彼が料理をしようという際に、女性患者が「注意すべきこと」を尋ねられて、「後片付け!」と即答していた。
男が料理をするエピソードいろいろの紹介をありがとうございます。
どれも気持ちいいです。
深草明之(末弟)くんの内緒の料理、富家の愛され末っ子の「趣味」に思えてましたが、そう解説をいただくと、なかなか好ましいものに思えてきました。
「ケーキ屋ケンちゃん」のエピソードは私もすごくいいいなあと思います。
好きな子のためにしてやりたいという気持ち。すてきです。
楽しく気持ちいい話題をありがとうございました。
うちのエントリ末尾に、参考としてこちらのブログ記事をリンクしときました。
こちらこそありがとうございます。
ああ、末弟は明之という名前でしたか。長兄が公之、「之」で統一した家なのか・・・あ、実は京也が父である息子が「玲」でその伝統を破ったことには意図があったのかも、と今思いました。