レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

祝、復刊『あさぎ色の伝説』

2019-09-17 06:54:18 | 新選組

マンガカテにしたほうがよさそうな気もするけど「新選組」に入れてみる。

『あさぎ色の伝説』が「和田慎二傑作選」の一環として秋田書店から2巻本で出た。それぞれ本体2500円、税込みだと合わせて5400円になる。単純にページ等で言うならばかなり高い。「復刊ドットコム」よりはだいぶましであるが。
 「花とゆめコミックス」で出た4巻目はかなり稀少なものと言われており、私自身も、買ったかどうか記憶にない。
 『菊一文字』は、タイトルを見ただけでは、読んだかどうかわからなかったが、読んだら思い出した。長らく埋もれていた名刀が、奇妙な老人経由で入手されるという展開は、司馬・結束路線の影響?
 物語の内容の時間軸で並べると、
試衛館の鷹→風のまつり唄(結成まで)→水鏡(芹沢派粛清よりあとの文久3年)→風車(池田屋の少し前)ははっきりしている。
発表順ならば
風車(76年)→試衛館の鷹→水鏡→風のまつり唄(78年)
 ここで10年もブランクがあり、
菊一文字→夢桜 は88年~90年に「花とゆめEPO」に断続的に掲載されている。これらは作中に何年と記載はないが、総司の病がまだばれていないので池田屋より前だろう。(近年の研究では、池田屋喀血はなかった説が有力のようだが、『あさぎ伝』はたぶん伝統的なゴホゴホでいっていただろう)
「花とゆめEPO」を私はほとんど買ったことはなく、でも『菊一文字』『夢桜』は読んでいるということは、・・・やはり4巻は買ったのだろうか。
『夢桜』で、トシが部屋で静かに筆を手にしているところに総司がドタバタ騒がしいので~~のコミックリリーフは楽しい場面。(↑俳句ひねってるんだな、と通にはわかるという心地よさもある) 桜を秘密にしておくエピもいい。こういうシーンを覚えていなかったことからすると、4巻は買ってなくて雑誌の立ち読みですませたのか?という気もしてくる。
 いまとなってはどうでもいいけどね。

 2004年の大河便乗で、あのころ新作旧作ともに毎月毎月新選組マンガがコミックスリストに並んだ。どうしてあの時に『あさぎ伝』も復刊しなかったのかと不思議でならない。(まぎらわしい題の『試衛館の鬼』がコンビニ本で出たのはけっこうなことだった)
よく指摘されることだが、「オケが転がった話」は紹介されずじまいだし、斎藤一の正体も謎めかしていたし、総司と芹沢が風呂に入っているところにはいってきた女(あのシルエットは女にしか見えん)は何者だったのか、なにかの伏線だったのか? いろいろと残念である。
 ところで、『あさぎ色の伝説』の本当の初登場は、

75年別冊マーガレット3月号なのである。
 75年には週刊マーガレットで木原さんの『天まであがれ!』(※)も連載された。前年に草刈正雄主演の映画『沖田総司』もあったし、そのころいわゆる「沖田総司ブーム」だった。そして77年にはテレビドラマ『新選組始末記』(数回しか見てないけど)。76年には宝塚で『星影の人』。
 作者がネコと一緒に出てきて「お待たせいたしました!ヒゲクマ初の時代劇ロマン!さて始めよう!」(「ヒゲクマ」とは当時別マで使われていたニックネーム。読者から募集して決められていた)「時は幕末~嵐の中の静けさを保っていた」と講釈師のように作者が語り、ネコに「わかる?」と問い、「ぜんぜん」と答えるネコ、「わからない人は社会科の教科書を読もう」
「その動乱のまっただ中~血みどろの幕末にあってさわやかな笑顔を残した青年 その名は沖田総司!」と指さす作者、そこで「え?」と振り返る総司、たしかそのあと「しじみ売りの佐平さんか」とつながったと思う、――つまり現在の『風車』である。「うちのしじみが売れた・・・こんな嬉しいこと初めてや」までで中断していた。(病気のためと当時発表されていたが、実は、その時に限って締め切りが厳しく、続きを載せる必要もなしと宣告された、とあとで作者が明かしていた、これは某同人誌での再録を見た、元々どこに載ったものか知らんけど。『風のまつり唄』2年くらいで完結させたいと書いてあったので始まるころだったのだろう)
 その次の号(別マ4月号)で、これまた記念すべき『超少女明日香』の第1作目前編が載った。(後編で、洗濯物を干しながら明日香が「燃えよわが剣わが命~」と歌っていた) 『明日香』は好評を博して長く続いたことは周知のとおり。(「フラッパー版」までは私は知らん)
 76年にララで連載化、しかし78年に『風のまつり唄』終わりでまた中断。ラストの次のページに「こんなはずじゃなかった 予定ではいまごろ池田屋事件を描いているはずなのに 構想練り直しじゃい!」と当時の挿絵つきコメント。
 ―――復刊するならば、それにあんな高額なものにするならばなおさら、そういうコメントページや、描き変えられた別マ版のページなども収録してもらいたかった。
 最初に載っている、「ようやく始められる・・・」のコメント付きカットはララでの開始の際のものだったのだろう(「宝塚とは無関係!」とあることからも時期が合う)、これが載っているならばなおさら、中断時のもの(「構想練り直し」)も入れてバランスとってほしかった。
 数年まえに出た『Z(ツェット)』完全版は、コミックス未収録だった最終話まではいっていただけでなく、ララの閉じこみピンナップや予告カットまで、2ページ使ったマンガ形式予告はもちろん(「だいじょうぶです 蘇我馬子という人もがんばっています」)、ばっちり載っていた(それらが一つ残らず見覚えのあった私)、よくここまでやった、偉い!。
・・・・・・あのくらいにやってもらいたかった!

 ブログ内検索しても、『あさぎ伝』別マ版の詳細、『Z』完全版について出てこない。どうも信用できないけど、ダブってもいいから書いた。でも遡って読んでみても、ない。『Z』完全版は、電子で出たのが2013年なので紙本は遅くとも13年、そのころ「完全版」「愛蔵版」について話題にしているのに、そこで『Z』に触れていないのは我ながら奇妙なことだ。
※ 『天まであがれ!』については、作者は2,3年かけるつもりでゆっくり描いていたらアンケートが悪くて(「おかげで単行本は売れましたが」)打ち切り宣告され、ケンカして30週もぎとったという。山南事件のあと大政奉還までは年表ですっとばした。
 
 新選組マンガで未完は、『俺の新選組』by望月三起也、『無頼』by岩崎陽子、『ひなたの狼』by斎藤岬もある。『俺新』と『ひな狼』は、芹沢派粛清で第1部完で5巻というまったく同じパターン。4作のうち半分が作者が故人になってしまっているよ・・・。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« このごろラジオ | トップ | 『新・地球絶景紀行』10月に開始 »

コメントを投稿

新選組」カテゴリの最新記事