レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

少女マンガの特質②異世界

2006-05-16 06:30:45 | 月にかわって:少女マンガ論文要約
2 異世界指向
 学園ものやホームドラマのように日常生活を舞台にした話がある一方で、非日常、別世界に展開する作品も数多くある。
① SFやFT
これは、少女よりも上の年代を対象とした「レディスコミック」との比較で際立った特徴である。少女誌よりも、「女性誌」のほうが、たとえば嫁姑、近所付き合い、キャリアと家庭の葛藤など身近なテーマが多い。
 その点、少女マンガのほうでは、宇宙や魔法の世界も珍しくない。神話伝説、メルヘンがよく取り入れられる。
② 外国
現代ものならばアメリカが比較的多く、歴史ものならばヨーロッパが目立つ。後者では『ベルばら』が代表である。
アクションものは、世界各地を飛び回る。最大ヒット作は『エロイカより愛をこめて』、東西冷戦下に繰り広げられるスパイアクションコメディである。ドイツ関連でほかに注目に値するのは『トーマの心臓』、ギムナジウムの少年たちの愛と苦悩が文学的に(?)描かれる。
 エジプト、トルコ、ペルシアなども異国情緒を感じさせる。近年では『三国志』も人気があり、少女マンガでもたびたび素材になる。
 しかしやはり一番人気の舞台はヨーロッパであろう。日本は「鎖国」をやめて欧米との関係を持つようになって、必死で追いつこうとしてきた。西洋化がすなわち進歩という時代が続いた。このことは美意識にも当然影響を与えた。一例として、池田理代子の発言がある。少女マンガの絵はまるで日本人には見えないと非難されるが、私たちは美術の時間にギリシア彫刻を美の理想として教えられてきたのだから、描く絵が西洋人のようになっても当然ではないか、とコメントしていたことがある。そして、最初の少女ストーリーマンガとされる『リボンの騎士』が宝塚歌劇の影響が大きいことは周知の事実であり、宝塚は華やかな異国情緒が売り物である。少女マンガとは、日本人のヨーロッパ憧憬が最もはっきりと現れたジャンルと言える。
 
③ 歴史
過去の日本も、現代人にとっては異国である。古代、平安、戦国、幕末あたりが頻繁に登場している。平安時代は、才気ある宮廷婦人たちが活躍した時代で、日本の女流文学の最盛期である。代表作、国際的にも名高い紫式部の『源氏物語』はマンガにもたびたびなっており、その一つ『あさきゆめみし』は、多くの女子高校生が、古典の授業で『源氏』を習うまえに読み、筋や登場人物を覚えることにも役立っている。
 明治維新の前の「幕末」、多くの血を流した殺伐とした時代にも様々なドラマがあり、最も人気のある存在はたぶん新選組であろう。幕府に対するテロ行為を抑えるために当時の首都、京都にあった戦闘部隊。キャラクターの多様性、傾く幕府のために最後まで戦った男たちの誠と友情の物語は多くのファンを持ち、少女マンガでも繰り返し描かれてきている。

遠いもの、異質なものへの関心は、冒険への憧れと見ることができる。これは、次に述べる「トランスジェンダー」とも関わってくるだろう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 少女マンガの特質①美への偏愛 | トップ | 少女マンガの特質③トランスジ... »

コメントを投稿

月にかわって:少女マンガ論文要約」カテゴリの最新記事