TONO『カルバニア物語』18巻
目立っているのは、女王タニアの性格の悪い従兄弟、先王の異母弟(側室腹)の愛人の子であるナジャルと、寵姫(表向き)のアナベル、それに初登場のラチェット。
年上未亡人だったラチェットは一身上の都合でナジャルの愛人となり、「癒し系」として務めてきた。別れてから男児を産んで死亡(しかし実は・・・)、ナジャルの母ストロボは、王妃にも王の母にもなり損ねた過去を持ち、こんどは王の祖母となる野心を抱いている模様。
赤子を強引に引き取ろうとするストロボに対して、ナジャルは、アナベルを正式に「養母」と宣言する。
これに対して、アナベルを――好意からでも悪意からでも――かわいそうだと言う人々がいる反面、アナベルは「おいしい立場」と考え、誠意も持ってあたろうとする。
このへん、王宮ものらしくて面白い。現代庶民の感覚では、例えば『源氏物語』で源氏が明石の姫君を紫の上に育てさせることは残酷な感じがしてしまうのだが、物語の中では(当時の習いでは)紫の上の立場を尊重したものとして扱われている。(史実の例ならば、秀吉が淀の方の生んだ秀頼に対して正室北政所を「まんかかさま」と位置付けていたことも似たようなものか?) 一夫一婦以外の世界にはそれなりの感覚があろうし、なにが同じか違うかはとうてい断言できるものではないけれど。
ところで、まえに言及したリンゼイ・パクスタンはラチェットの従妹で、リンゼイは再び登場している。
「生まれた時から運命の相手は決まっているの 小指の先に赤い糸がついているの 目を見ればわかるの 一瞬でわかるの たった一人なの 信じていれば信じていれば だいたい13歳くらいから20歳くらいまでの間に(女は少しでも若くなくっちゃ!) 15歳くらいから28歳までの王子さまが(男は少し年上でなくっちゃ)あなたの前に」(%)--「ボーイミーツガールの神話」としてそのリンゼイの思いこみが連ねられている。そして、「20歳まであと〇年〇か月」で焦りまくっている。出会い求めて出た王宮のパーティーで、観光客の一員としてひとり甘味を楽しむラチェットを目撃する。「以前よりきれい」とムカついている。
リンゼイが上記のようなお花畑になったのは親の育て方が悪かったのであるが、これまた、同じTONOさんの『アデライトの花』1巻に出てきた無知なマージと重なる、カル物はあんな悲惨な展開にはなるまいが。
既巻のあとがきだったか、「運命の相手」なんて一人というわけではない、と書かれていたし、ラチェットの心のつぶやき、「愛ってなんなのかしら?たったひとつとか絶対とか永遠とか 息苦しくない? たったひとつじゃなくて 次々とあたらしくはじまる あのやわらかな緑みたいな そんなもののほうがいい」(引用は不正確)にも端的に表れている。
・・・まあ私自身も、「オンリーワンフォーエバー」の好みはあるし、物語の中でくらいそういう夢があってもいいだろと思ってはいるけど。
観光地によくある「愛の南京錠」なんて見ると、・・・破局したときホラーにもなりかねないぞ、と内心ツッコんでしまうよ。
(%)「王子さま」のもちものとして「お金 家柄 つよさ やさしさ」、自分のは「手料理 美ぼう やさしさ」。—-それでも、「やさしさ」が挙がっているだけ、アレクサンダー・コルテスの言う「12の条件」よりだいぶマシであろう。
ああ面白いな~~!注目すべきキャラが次々と出てきて語られるので全体の流れは遅い、しかし引き伸ばしには見えない。単行本出るペースの遅いことが残念だ。
目立っているのは、女王タニアの性格の悪い従兄弟、先王の異母弟(側室腹)の愛人の子であるナジャルと、寵姫(表向き)のアナベル、それに初登場のラチェット。
年上未亡人だったラチェットは一身上の都合でナジャルの愛人となり、「癒し系」として務めてきた。別れてから男児を産んで死亡(しかし実は・・・)、ナジャルの母ストロボは、王妃にも王の母にもなり損ねた過去を持ち、こんどは王の祖母となる野心を抱いている模様。
赤子を強引に引き取ろうとするストロボに対して、ナジャルは、アナベルを正式に「養母」と宣言する。
これに対して、アナベルを――好意からでも悪意からでも――かわいそうだと言う人々がいる反面、アナベルは「おいしい立場」と考え、誠意も持ってあたろうとする。
このへん、王宮ものらしくて面白い。現代庶民の感覚では、例えば『源氏物語』で源氏が明石の姫君を紫の上に育てさせることは残酷な感じがしてしまうのだが、物語の中では(当時の習いでは)紫の上の立場を尊重したものとして扱われている。(史実の例ならば、秀吉が淀の方の生んだ秀頼に対して正室北政所を「まんかかさま」と位置付けていたことも似たようなものか?) 一夫一婦以外の世界にはそれなりの感覚があろうし、なにが同じか違うかはとうてい断言できるものではないけれど。
ところで、まえに言及したリンゼイ・パクスタンはラチェットの従妹で、リンゼイは再び登場している。
「生まれた時から運命の相手は決まっているの 小指の先に赤い糸がついているの 目を見ればわかるの 一瞬でわかるの たった一人なの 信じていれば信じていれば だいたい13歳くらいから20歳くらいまでの間に(女は少しでも若くなくっちゃ!) 15歳くらいから28歳までの王子さまが(男は少し年上でなくっちゃ)あなたの前に」(%)--「ボーイミーツガールの神話」としてそのリンゼイの思いこみが連ねられている。そして、「20歳まであと〇年〇か月」で焦りまくっている。出会い求めて出た王宮のパーティーで、観光客の一員としてひとり甘味を楽しむラチェットを目撃する。「以前よりきれい」とムカついている。
リンゼイが上記のようなお花畑になったのは親の育て方が悪かったのであるが、これまた、同じTONOさんの『アデライトの花』1巻に出てきた無知なマージと重なる、カル物はあんな悲惨な展開にはなるまいが。
既巻のあとがきだったか、「運命の相手」なんて一人というわけではない、と書かれていたし、ラチェットの心のつぶやき、「愛ってなんなのかしら?たったひとつとか絶対とか永遠とか 息苦しくない? たったひとつじゃなくて 次々とあたらしくはじまる あのやわらかな緑みたいな そんなもののほうがいい」(引用は不正確)にも端的に表れている。
・・・まあ私自身も、「オンリーワンフォーエバー」の好みはあるし、物語の中でくらいそういう夢があってもいいだろと思ってはいるけど。
観光地によくある「愛の南京錠」なんて見ると、・・・破局したときホラーにもなりかねないぞ、と内心ツッコんでしまうよ。
(%)「王子さま」のもちものとして「お金 家柄 つよさ やさしさ」、自分のは「手料理 美ぼう やさしさ」。—-それでも、「やさしさ」が挙がっているだけ、アレクサンダー・コルテスの言う「12の条件」よりだいぶマシであろう。
ああ面白いな~~!注目すべきキャラが次々と出てきて語られるので全体の流れは遅い、しかし引き伸ばしには見えない。単行本出るペースの遅いことが残念だ。