レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

凍てつく世界

2014-04-27 06:08:08 | 
ケン・フォレット『凍てつく世界』  SB文庫 
 全4巻。前作『巨人たちの落日』に続く「百年三部作』のPart2.
 第二次対戦とその後の冷戦前までの時代。英国、ドイツ、アメリカ、ソ連(前作の途中まではロシア帝国だけど)、それぞれに配された主要人物たちは前作の次世代である。舞台も登場人物もあちこちにまたがっているので単発的な感想を。
・英国の伯爵家の令嬢のモードが第一次大戦の前にドイツの貴族の青年と試練のある恋におちて、その後結婚、しかし彼はゲシュタポの拷問で命を落とした。娘のカーラも戦争中密かに反ナチ活動をしている。
 戦後、荒れたベルリンでほかの人々と共にこの一家も苦労している。ある日、英軍将校が接収した屋敷でパーティーが開かれている様を飢えた人々が見ている、そこへ母娘も来る。モードはそこに乗り込もうとして警備兵に止められるが、貧しい身なりの婦人が上流階級の英語を話すので驚いた兵士によって取り次いでもらえる(そして人々のぶんまで食べ物をせしめる)ーーの場面は複雑な小気味よさを感じた。
・戦争末期のベルリンではよくあったように、カーラはソ連兵たちに暴行されて子を産む。出征していた恋人が帰還して、一時誤解するが、事情を知って、まとめて受け入れるのは好ましい展開。
・モードの兄である伯爵とそこのメイドの間に生まれたロイドと、ロシア移民の成り上がりの父を持つデイジーは主要カップルたちのひと組。野心の強かったデイジーは伯爵の長男(ロイドとは異母兄弟)と結婚するけど、やはりロイドを選ぶーーこのへんは『自由の地を求めて』と共通している。
・ドイツ側の登場人物で、警官からゲシュタポになったマッケが一番の嫌われ役だろう。こいつの行方は出てこなかったけど、かつてのゲシュタポが東ドイツでMFS(国家保安省)で似たようなことをしていたのは実際にありがちだったので、こいつも続きではそうなるのかも。


 いま図書館で予約している本は3冊待ち順が「1」になっている。『チャーチル首相の秘書』『蚊がいる』『虎と月』。『蚊がいる』は穂村弘のエッセイ。市内に3冊あるわりに回り方が遅い、この著者の本は概してそうである。内容のほけほけぶりが読者に移っているかのようだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする