レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『ヘタリア』のドイツ語訳

2012-07-15 06:24:22 | ドイツ
 これはドイツカテゴリーなのかどうか。

 デュッセルドルフの知人に送って頂いている。
 ほかに、幻冬舎から出ている「旅の会話ブック」でもところどころ本編の訳が載っている。こちらは日本人による訳。
 ドイツで出ているほうは、名前からすると、ドイツ人と結婚してむこうに住んでいる日本人(または親のどちらか日本人)と推察される。こちらのほうがネイティブの感覚には近いだろう。
 この両者を比べてみると、二人称の選び方に違いがある。
 現代のドイツ語では、家族・友人など親しい間柄で使うduと、それ以外での Sieがある。(ほかにもそういう言語は多い) それをどう使い分けているのかを見るのは面白い。(『マリみて』のときにも話題にした。07.1.13の記事をご覧ください) 
 『ヘタリア』の場合、「日本」は常に丁寧語で話すキャラクターであり、ひとを「さん」「君」つけで呼んでいる。
 日本版の訳では、「ドイツさん」「イタリア君」は、英語のMr.に相当するHerrをつけて呼んでおり、Sieを使う。
 しかしドイツ版ではその違いがなく、ほぼすべてのセリフの二人称はduだけになっている。同じ言葉であっても、その他の雰囲気から違った言葉遣いを想像してもらえるのだろうか。 日本語のセリフの中では、人称代名詞の選び方はキャラクター描写にとってものすごく重大なものなんだけど。 某現代小説の邦訳で、機械的にduは「あんた」で Sieは「あなた」とあてているのではと思われるものがあってたいへんに不自然だったーーという話はもう書いただろうか。これについてブログ内検索をしてみて出てこないので、まだだと判断していま書こう。
 くだんの小説では、空軍大佐とその妻と娘、大佐の若い部下が主な登場人物である。大佐が部下に話す際に「あなた」を使っているのは、原文ではSieだと思われる。まったくヘンとまではいかないけど、「君」にしておくほうが自然ではなかろうか。そして、将校の奥様が夫や娘に「あんた」というのはなんとも不似合いだ。原文では duであろう。訳者は、名前からすると日本人ではなさそうだった。

コメント
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