レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

トスカと喜劇

2012-07-11 13:39:35 | 
『気ままなプリマドンナ』 バーバラ・ポール サンケイ文庫 
 『動物のお医者さん』の『トスカ』の話と同じ元ネタ(実話)を使っているということで存在はまえから知っていた(%)けど、ようやく読むにいたった。
 1919年のNY, 劇場が舞台。ジェラルディン・ファーラー(実在)はオペラのプリマドンナ。かつてドイツで活躍していたこともある。 フランスから新たに来たバリトン歌手がなにかとトラブルを引き起こして恨みをかっていたが、彼の喉スプレーにアンモニアが混入されていて、それで喉をつぶした彼は自殺する。犯人は?

 キャロル・ネルソン・ダグラス『おやすみなさい、ホームズさん  アイリーン・アドラーの冒険』  創元推理文庫
 去年書店で、なかなか可愛いカバーイラスト(マツオヒロミと書いてある)を見て気になっていた。
 失業中の牧師の娘ペネロピーは、女優で歌手の大胆な美女アイリーンに拾われる。ペネロピーはやがてタイピストの仕事を得るが、アイリーンは小国ボヘミアの皇太子の目にとまる。
 かの有名な『ボヘミアの醜聞』に登場してホームズとわたりあって印象深いアイリーン・アドラーを主人公にすえたシリーズの第1弾。オスカー・ワイルドやらブラム・ストーカーやら、実在の有名どころがあれこれ登場するのも楽しい。
 8冊出ているシリーズだそうだ、次からは普通に買いたい。

 上記のアイリーンや、『アレクシア女史』はカバーイラストが魅力的なことも注目する一因である。その逆に、創元から最近出た『修道院の第二の殺人』は題材は興味を引くのにカバー絵で気が萎えていて、目下のところ買っていない。


 『動物のお医者さん』で、ハムテルの母、絹代(声楽家)が地元のチープな舞台で『トスカ』の主演をするが、手違いにより悲劇が喜劇になってしまった話。「参考資料」として『オペラとっておきの話』と書いてあり、ここで紹介されている実話が取り入れられているとネットで見たので、そちらも確認したいと思っていたが、やっと実行できた。
 『珍談奇談オペラとっておきの話』 ヒュー・ヴィッカーズ  音楽之友社  1982
1961年のサンフランシスコ・オペラでの事件。死刑執行隊の兵士たちは地元の大学生たちを使ったが、彼らは物語をまるで知らず、指示もろくに与えられなかった。

 引用「退場は、主役といっしょにすればいいのさ」(アメリカでは、召使いなどその他大勢の役に与えられる指示は、一般にこんなものである) 引用終わり

 そして、舞台に彼らが出てみたら人が二人おり、どちらを撃つのか迷い、トスカに向けて発泡した、そして倒れたのは男のほう。
 追い詰められたトスカが身を投げ、それに続いて兵士たちも身投げした。

 絹代演じるトスカが、警視総監の遺体のそばにロウソクを立てるが、それが近すぎて燃え移ってアチアチというのは別の上演でのこと。
 本来は好色な警視総監スカルピアをナイフで刺し殺すところが、手違いでナイフがなかったので絞め殺すことにしたーーのは、『カルメン』で起きた事件。

 小説『気ままなプリマドンナ』では、撃つ相手を間違えたことと、退場のしかたのボケっぷりが取り入れられている(ストーリーの本筋には関わらないけど)。 
 こちらでは、「主役と一緒に退場」は、スポレッタ(スカルピアの部下)のつもりで言った、と書かれている。
 『トスカ』の台本では、「将校は兵士たちを整列させ、軍曹は奥にいる歩哨を呼び戻し、それから全員はスポレッタに先導されて階段を下りていく」と書いてある。 う~ん、やはりこれは「主役といっしょに退場」では不適切でズサンすぎではなかろうか。

 
コメント (2)
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