レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ディケンズ ネルのバカ祖父

2012-05-13 05:25:21 | 
 19世紀英国の小説家チャールズ・ディケンズをあれこれ読んでいる。市内の図書館にあるぶんはこれでほぼ読了した。
 
『骨董屋』
 タイトルに偽りありだと思う。骨董屋の老人が、溺愛する孫娘ネルのために若干はある財産を増やそうとして、よりにもよって賭博に手を出して、悪徳高利貸しからの借金も返せずに店を売り、ネルと共に逃げるように流浪の身となる。 その間にいろいろある。、蝋人形の見世物をしているおばさんのところに雇われて、客がネルにくれたチップはネルの取り分にしてくれるような良心的なおばさんなのだけど、ここでも祖父は賭博にハマる。ネルの金まで持ち出すので、このままでは雇い主の金まで盗みかねないと恐れたネルは祖父を連れてそこも出て行く。
  このいたいけな少女の薄幸ぶりが読者の紅涙を絞ったらしい。 アンハッピーエンドは始めから知っていたので、せめて悪い奴らに天罰がくだってくれますようにと思いながら読んでいた。
 私は正直言って、悪い高利貸しよりもネルの祖父のほうに腹がたった。高利貸しよりもこいつこそ諸悪の根源。過去話では、娘がつまらない男と結婚して一男一女を残して、男児が父親似で女児(ネル)が母親似だと語られる。ネルの兄はろくでなしになるけど、バカ祖父はたぶんネルだけひいきしていたこともバカ兄がぐれる原因になったに違いない。 どんなに愛があっても、分別のない大人が子供の保護者であってはいけないと強く感じた。(こういうジレンマは現代の福祉・民生関係者にもあるのだろうな)

『リトル・ドリット』
 作者の父親はお役人だったけど、お金におおざっぱすぎる人だった。当時「債務者監獄」というものがあり、犯罪者ではなく、借金が払えない人が入れられた。作者の父がそれで、一家まるごと監獄にいた時期もある。これは作者にとってたいへん屈辱の体験であり、作品にもたびたび反映されている。
 この話も、そこそこの身の上だったけど債務者監獄に入れられたドリット氏が発端で、末娘エイミーは監獄で生まれ育っている(タイトルはこのエイミーの呼び名)。外に地道に働きに行ってけなげに育っている。父ドリットは牢名主のような扱いを受けて、相変わらず「紳士」ヅラしている。・・・甲斐性もないくせにこのヤロー、と読んでる私は思う。
 やがて一家は出られて金持ちになり、兄姉父は簡単にそれに馴染むけど、エイミーは慎ましさが抜けなくて、それをとがめられたりする。  あ~、この父親もぶん殴りたい。
 こちらはちゃんとハッピーエンドだけどね。

『我らが共通の友』
 多くの登場人物がいるし、悪い奴もいい奴もうようよ。
 貧乏な家で育った美しいベラは、お金が欲しい、お金持ちと結婚したいと願っていたけど、彼女を養女分にしていた善良な成り上がり夫妻の秘書の青年に求愛される。  「わたしゃ愛より金が好き」と思っていたけど、やはり愛を選んだら、相手は金持ちでもあった! ううむ少女マンガ。 相手の青年からすると、親の押し付けた縁談に逆らっていたけどやはりその相手と恋をして結婚した、少女マンガ!
 (古典的なパターンというものを少女マンガでも取り入れたということなんだけど)
 脇役のジェーンは、まだ小娘で不具者だけど、人形の衣裳つくりの仕事で稼いている。飲んだくれの親父がいる。しかし、ソーニャのようにしおらしくない。父を「放蕩息子」扱いして、容赦なく叱りとばし怒鳴りつける、ーーいいぞ!
(飲みすぎがたたってぽっくり死んだときには泣いてやってたけど必要以上にめそめそしてないし) 私はこのキャラが大好きだ。
コメント
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