レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

グライヒェン伯と二人の妻

2010-03-23 11:54:47 | 
 ヨハン・カール・アウグスト・ムゼーウスは18世紀ドイツの文芸批評家で、民話・伝説に取材した作品を書いている。その一つ、『メレクザーラ』。チューリンゲンのグライヒェン伯爵は十字軍遠征に加わって虜囚の身となり、スルタンの姫に懸想されて結婚を迫られる。故郷に妻子がいるので拒むが、一夫多妻の国の姫にはまったく問題にならず、その方ともいい友達になりましょうといって気にしない。困惑した伯爵は奇妙な夢を見て、国許の妻はもう死んだと解釈されたので、姫を改宗させて駆け落ちする。途中で家来に再会して、妻が生きていることを知って悩むが、いまさら恩人の姫も捨てられない。妻のほうでもことを知って悲しむが、姫のおかげで囚われの身から解放されたのだし、ということで許す。教皇からの許しも得て、3人仲良く暮らした。
 --なんなんだよ。
 これ、ヨーロッパ人の昔の男の作品だし、重婚というモチーフのほかに、「キリスト教徒」の「男」が、「イスラム教徒」の「女」に勝つ(改宗させる)ということが大きな意味を持っているのだろうと推測する。私としてはなんだか二重にひっかかるんだが。
 条件を替えてみたらどうだろう?
その1 キリスト教徒の女がイスラム男を改宗させる
 騎士の奥方が東方で囚われてスルタンの息子に恋される。夫は死んだと誤報があり、プリンスを改宗させて逃げたら夫は生きてたーー。さて、これで許してもらえるのだろうか。『メレクザーラ』では、改宗した姫の美しさも、教皇の心を動かす役に立ったという節があるけど、美男のプリンスで圧倒されてくれるかなぁ? 知らずに重婚してしまったことは許されるとしても、そのあと修道院入りなんて展開が強制されそうな気がするよ。
その2 イスラム男がキリスト教徒女を
 ムスリムの戦士がヨーロッパで捕虜になり、姫君に恋される。
 --このパターンだと、ムスリム男がたとえ既婚者でも(姫の側で多妻に納得さえできれば)制度上はなにも問題ないな。
その3 イスラム女がキリスト教徒男を
 いちばん難しそうな感じがする。
 
 「逆転大奥」のマンガが存在するくらいだから、グライヒェン伯からのバリエーションがあってもよさそうなものだ。だれがいいか。ぶっとんだ感覚ということならば、TONOさんや名香智子さん。
コメント (2)
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