駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

人間の能力

2010年09月22日 | 小考
 人間の脳は、計算力ではコンピュータに雲泥の差を付けられたが、今のところ別種の能力でその面目を保っている。
 コンピュータは文章の裏の意味を理解できない。しかし人間は違う。
 「ご結婚されていますか?」。と聞かれコンピュータは何の疑問もなく「いいえ」。と答えるだろう。ところが未婚の人間は、喜々として無邪気に「いいえ」。とは答えない。ほとんどの人はなぜそんなことを聞くのだろうと思いながら、秘かな期待を持ってあるいは不愉快を隠しながら「いいえ」。と答えるだろう。
 大阪特捜部の前田恒彦容疑者が逮捕された。前代未聞の事件だ。許されない悪事であるが、なぜそれが外に漏れたのか、その経緯が明らかにされることを望みたい。あれほど村木さんを悪者扱いにした全国紙Aが、なぜ十全の反省を見せることなく、しれっと一面でこの事件を報道しているのだろうか。まさか拡声器というわけではあるまい。闇に隠れた膿の一部が出たことは有意義だが、簡単にやはりそうかとは納得できない思いがする。
 地道に根っこまで掘り下げて、粘り強く報道して頂きたい。同時に特捜部の尻馬に乗って、推定無罪の人達を叩いてきた報道機関と背後の力を白日の下に晒して欲しいと思う。
 「結婚されていますか?」。と聞かれて無邪気に「いいえ」と答えるようでは魑魅魍魎の徘徊する世の中で、一人一人が自分をそして隣人を生かして生きて行くことは難しい。人間の能力を生かし、情報を読み解いていくことの大切さを痛感する。 
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アインシュタインの思考の飛躍

2010年09月22日 | 

 アインシュタインは二十世紀で最も有名な科学者であるが、おそらくジャンルを超えても、最も有名な人物の一人だろう。それは庶民的な性格?と革命的で難解な理論なのに、なんだか一般人にもわかったような気がする相対性という命名によると思われる。
 アインシュタインに纏わる本は枚挙に暇がないが、先頃出版された吉田伸夫氏による「思考の飛躍」は今までのどの本とも異なり、私のような一般人にもアインシュタインの驚くべき斬新な問題解決法を追体験させてくれる素晴らしい解説書だ。勿論、追体験と言ってもその程度は読者の科学的力量により左右されるので、私の場合はほんの少しなのだが。
 恐らくアインシュタインも我が意を得ていると思う。晩年はご職業はと聞かれて「写真のモデルだ」。と答えたアインシュタイン、心の何処かで皮相で騒ぐ世間に少々うんざりしていたと思われるからだ。出自や私生活を記録することも意味のあることではあるが、私の人生は物理学にあると考えていたアインシュタインにとって「思考と飛躍」は確かにそうなんだと頷く部分がある本だと思う。
 英語圏にはサイモンシンやブライアングリーンを始め優れたサイエンスライターがかなりいるようだが、日本には優れたサイエンスライターが少なかった。吉田伸夫氏は恐らく日本のサイエンスライターの旗頭として活躍されていかれるだろう。期待している。
 評論や評価も大切だと思うが、やはり考えることなくして科学は理解できない。どのようなレベルであれ、考えさせる説明が科学の解説だと思う。本当は「思考の飛躍」は二部に分けてもう少し詳しく図や式を用いて書いて欲しかった気もする。忙しい現代人ではあるが、一日五頁しか読めなくても、最後まで読みたくなる解説書が良い解説書だと思う。たとえ、現代の物理学が審美眼で判定されるようなデッドロックに乗り上げていようとも、あるいはだからこそ。

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