駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

アインシュタインの思考の飛躍

2010年09月22日 | 

 アインシュタインは二十世紀で最も有名な科学者であるが、おそらくジャンルを超えても、最も有名な人物の一人だろう。それは庶民的な性格?と革命的で難解な理論なのに、なんだか一般人にもわかったような気がする相対性という命名によると思われる。
 アインシュタインに纏わる本は枚挙に暇がないが、先頃出版された吉田伸夫氏による「思考の飛躍」は今までのどの本とも異なり、私のような一般人にもアインシュタインの驚くべき斬新な問題解決法を追体験させてくれる素晴らしい解説書だ。勿論、追体験と言ってもその程度は読者の科学的力量により左右されるので、私の場合はほんの少しなのだが。
 恐らくアインシュタインも我が意を得ていると思う。晩年はご職業はと聞かれて「写真のモデルだ」。と答えたアインシュタイン、心の何処かで皮相で騒ぐ世間に少々うんざりしていたと思われるからだ。出自や私生活を記録することも意味のあることではあるが、私の人生は物理学にあると考えていたアインシュタインにとって「思考と飛躍」は確かにそうなんだと頷く部分がある本だと思う。
 英語圏にはサイモンシンやブライアングリーンを始め優れたサイエンスライターがかなりいるようだが、日本には優れたサイエンスライターが少なかった。吉田伸夫氏は恐らく日本のサイエンスライターの旗頭として活躍されていかれるだろう。期待している。
 評論や評価も大切だと思うが、やはり考えることなくして科学は理解できない。どのようなレベルであれ、考えさせる説明が科学の解説だと思う。本当は「思考の飛躍」は二部に分けてもう少し詳しく図や式を用いて書いて欲しかった気もする。忙しい現代人ではあるが、一日五頁しか読めなくても、最後まで読みたくなる解説書が良い解説書だと思う。たとえ、現代の物理学が審美眼で判定されるようなデッドロックに乗り上げていようとも、あるいはだからこそ。

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