三寒四温とは言うがこれほど寒暖の差が大きかったかなと首をかしげている。どちらかというと暖かい方へ身体が馴染んでいるので気温が下がると、おーさむと首を引っ込めてしまう。
それにしても昨日入ったイタリアンは寒かった。二十席ほどの店内に先客は二人、フロアーは派手な衣装に嗄れ声の六十代の女性がひとり、コックの母親だ。あれっ奥さんはどうしたのかなと二年ぶりの閑散とした店内を見まわしてしまった。パスタのコースを頼んだのだが、お飲み物はどうしますと飲み物のメニューを持ってきた。しばらく眺めていると水でいいですかと来た。いやそういうわけでもない、暖かい飲み物を探していたのだとぶつぶつ言いながら、ホットオレンジジュースを頼んだ。まだ四十そこそこと思うがコックの頭に白髪が混じってきていた。五年くらい前までは年に数回来ていた店で、若夫婦と年寄り夫婦で切り盛りする賑やかな店だったのだが、コロナにやられたのだろうか。
味は落ちていなかったが、お値段からいうともう一つ、何よりも店内が寒いのには閉口した。寒い日には暖かさこそ最高のおもてなしなのを知らないのだろうか、レストランは美味しければとは参らぬ、失礼ながら貧すれば鈍する。