駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

優柔不断は困る

2008年07月31日 | 世の中
 内閣改造を巡ってなかなか態度をはっきりさせない福田首相を民主党の菅さんが優柔不断と非難している。内閣改造の意義や時期を論評するのは手に余るが、判断し決断することは毎日しているので、少し書きたい。
 政治決断と診療決断はかなり似ていると思う。
 病気は病名、病期、病態、重症度を把握評価して、治療方針を決める。と書けば簡単そうだが、実際は病名は最初からわかるとは限らない。わかるまで待っていると手遅れになることがある。病期を判定する情報が入手できないことがある。治療は病態に影響を与えるので、一端開始すると病態が複雑になり判断が難しくなることが多い。治療は早く開始した方が良い効果が得られやすい。強力な治療法は副反応も大きいことが多い。すんなりゆかないと騒ぎ出す家族が居る。など・・のことがあって必ずしも容易ではない。
 適切な判断は最小費用で最善の結果を生み出すが、目立たないので患者や家族から高い評価は得られないことが多い。これはまあ、それでよいのだが。
 大きな声では言えないが、女性医師には僅かに優柔不断の傾向があると囁かれている。
 福田首相が優柔不断かどうかわからないが、首相が優柔不断であっては困る。優れた決断内容も時期を失すれば、効力を発揮しないからだ。
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なんだか確かにそうだが

2008年07月30日 | 世の中
 昨夜は医師会の委員会の後で軽く飲みながら雑談をした。医師会の運営状況や同僚の批評など話すうち、ナイフ殺傷事件の話題になった。飲んでいて仲間内という気軽さもあって、ああした事件は伝染するから報道しない方がいいとか、撃ってしまえなどといった意見まで出てきた。信じがたいことだが真似としか考えられない事件が続発し、ネットでは犯人をヒーロー扱いする書き込みがあると聞けば、確かにマスコミに節度を求めたい気がする。撃ってしまうのも、秋葉原の場合ならさほど非難されないだろうが、混乱して状況のわからない現場の判断は難しいと思うし、抵抗しない犯人はさすがに撃てないと思う。なんというか世の中の芯がなくなったようで、どうして絶対悪いことが家庭や社会が悪いことになっちゃうのかね、と言われると。・・・。
 メディアリテラシイの必要性を痛感するが、いかに果たしてどこまで。
 単純で乱暴な意見が続発、確かにとそうではあるがと思いながら悪酔いしてしまった。
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 外国人看護師

2008年07月29日 | 医療
 看護婦師不足を補うため東南アジアから看護師を受け入れる施策が動き出した。予想に反し初年度受け入れ枠500名の半数に満たない208名が来日予定と報道されている。外国人看護師受け入れは、背景が複雑で条件整備にも微妙な問題が多く、短く論評することは難しい。
 ここでは言葉の問題に触れたい。医療には意思疎通がきわめて重要で、科学技術と並んで医療実現の基本的要件である。以心伝心とか目は口ほどにものを言うは限られた条件下でのことで、言葉が意思疎通の手立ての大半を占める。そして言葉を活かす基本的な仕草や心情はよほど長く深く日本で生活しなければ身に付かない。ピーターバラカンやロザンナザンボンくらい日本を理解し日本語を駆使できなければ看護師は勤まらない。朝青龍程度では医師は勤まるかもしれないが看護師は無理だ。
 当院ではほとんどの患者は当地の方言混じりでしゃべる。院長の私は草鞋を脱いでやがて30年だから、まず問題なくコミュニケーションがとれる。ところが県外から来たばかりの看護師は結構苦労している。彼女は標準語のつもりで・・でしょうと言うのだが、中年以降の人にはよそよそしく響くようで、繰り返さないと理解してもらえない。れっきとした日本人で、たかだか300kmばかり離れた所から来ただけでも、ちょっと躓くのだから、言葉は難しい。
 厚労省の胸算用は知らないが、インドネシアやフィリピンから来て日本語が十分使えて日本の看護師試験に合格するには少なくとも5,6年は掛かると思う。その間の面倒を誰がどう見るか、その後の身の振り方をどうするか、きちんと考えてあるのだろうか?
 私の泣き笑い話を一つ。バーガーキングの売り物にワッパーというバーガーがある。この発音が難しい。ニューヨーク郊外、ドライブで腹が空いたと買いに行ったはよいが、3,4回言っても通じない。ついに通じたかと思ったらコークが出てきた。違う違うなんて聞いてくれない、可愛い顔してネックス、次のおばさんの注文を取り始めた。ワッパーなんて食べようとしなければ良かった。

 
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イエロー・サブマリーン

2008年07月28日 | 診療
 40年近く前ビートルズのイエローサブマリーンを見た。当時はイギリスをきまじめで節度ある国のようにと思っていたので、速いテンポで軽い乗りのとぼけた味が斬新で面白かったのを憶えている。何でイエロー黄色だったのだろう。単に目立つということか、あるいはイエローになにか独特の響きがあるのか。残念ながら知らない。イエローマッジクオーケストラのイエローには黄色人種の意味合いがあるらしいが。
 我々の仕事ではイエローは要注意だ。眼球結膜の黄色くなる黄疸は申すまでもない。
 なんだか足下が覚束無い婆さんが診察室に入って来た。「おはようございます」。とお辞儀をされる。「ああ、おはようございます。どうしましたか」。嫁さんらしき付き添いが「今朝食事を摂らないので熱を測ったら七度五分ありました、心配なんで連れてきました」。咳や痰もないし、喉もさほど赤くない。下痢や嘔吐もないそうだが、はてなんだろうとベットに横になってもらう。お腹はどうかなと触診をする。圧痛や抵抗はなく柔らかい、なんだかごろごろしてるなと聴診器をあてると、グル音が亢進している。急性の胃腸炎か。あれ!、なんだこれは、肌着の下の方に黄色い染みが数ヶ所がある。鼻を近づけるまでもなく、微かにいやはっきりと臭う。しまった迂闊だった。イエロー・サブマリーンが潜航していた。「看護婦さーん」。こんな時、本当に看護婦さんの活躍には頭が下がる。何度も手を洗い、シーツも変えてもらい、次の患者さんを入れる。
 ちゃんと挨拶できるから下の管理ができているとは限らない、下痢気味では無理もないか。イエローは信号だけに限らない、潜航していることもあるので要注意。
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夏の訪れ

2008年07月26日 | 身辺記
 夏が来た。何よりも夏を感じさせるのは夏空だが、夏を告げる、の筆頭には油蝉の鳴き声を挙げたい。通勤で小学校の校庭脇を通るが、すざまじい油蝉の合唱である。一二匹だと人の足音で鳴きやんだり、鳴き音を落とすものだが、数十匹いや数百匹かもしれない、だと通りかかるとよけいに鳴き声が大きくなるような気がする。あまりにやかましく情緒がないと思われる方も多いだろう。私は猛暑にはこの頭がくらくらするような油蝉の鳴き声が合っていると思う。
 閑かさや岩にしみ入る蝉の声 小宮対斉藤の論争。あの茂吉が自説を引っ込めたと云うのも驚きだが、私は今でも大方の鑑賞に抗して油蝉と思っている。昆虫学的考証での決着は、芭蕉鑑賞とは別種のこと。
 これでもかと板塀に、石垣に、乾いた土に降り注ぐ、ギラリの日差しとジャーという油蝉の声、誠に巡り来た夏を感得する。どこからか、今年も故郷へ父母の墓参りに行かねばとゆう気持ちが湧き上がってくる。
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