駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

釈然としない御高診

2017年01月31日 | 診療

  

 今日で1月も終わり、つい先日2017年が始まったばかりなのだが、明日から2月、おやおやあれあれとカレンダーを見ている。

 米国在住の娘さんがロスからシアトルに移ったという未亡人のAさん、,「バアバ、遊びにおいで」と言われても寒いらしいからねえと、思案投げ首の様子だった。ロスよりシアトル贔屓の小生は無責任に「シアトル良いところですよ」と答えたことだ。

 M氏は82歳半農半漁で今は海は引退し、のんびり野菜を作っている。高血圧症で通院しているのだが、軽い咳が長引くので胸の写真を撮ったら霞がかかっている。間質性の肺炎が疑われるので、総合病院の呼吸器科に送った。間質性肺炎というのは多種多様で結構複雑面倒な病気なのだが、四十そこそこのMさんにしてみれば若造の医者に「82歳ならもう十分な年ですよ、後は余生好きにやって下さい」と諭されたと釈然としない顔で報告してくれた。あと二年から十年で、良い薬はないと言われた。婆さんに話したらあれを書いておけ、金庫の番号を教えろと言われたと憮然としている。

 質素な生活はしておられても中々の資産家で、未だあれこれやりたいこと買いたいものはあるしなあと、いつもの威勢がない。しかし、82歳のお爺さんにあと二年から十年、そんなことは病人でなくても概ね分かっていること、しかも好きに暮らしなさいとは、確かにそうかも知れないが、たった一度の診察で言えるかねえ、紹介した患者を説諭のような解説でそのまま返えされた私も何となく釈然としない。 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フェデラーが優勝、トランプが健闘?

2017年01月30日 | 世の中

    

 全豪オープンは時計の針を五年戻したようなフェデラーとナダルの決勝戦となった。いつもどちらかを応援しながら観戦するのだが、今回は困った。ナダルとフェデラー、どちらも好きな選手なのだ。第五セット、ナダルが最初にブレイクしたので、これで決まりかと思ったら違った。フェデラーの正確なショットが炸裂し、年嵩三十五歳のフェデラーが勝った。フェデラーはファンが多い、賞賛の嵐だった。何というか、本当のジェントルマンなのだ。 彼は答えた、「どうしたらあなたのような素晴らしい選手が日本でも生まれるでしょうか?」「?、国枝が居るじゃないか」。と。

 ルール遵守が求められフェアプレーが賞賛されるスポーツに比べ、ルール無視我利優先の政策がしばしば支持される政治の世界では、その申し子のトランプ大統領が健闘?している。インディアン嘘つかない、ラストベルトのアメリカ原住民を守るトランプも然りだった。有言実行にトランプ語録は歓心を買うための宣伝文句で、実際に大統領になれば穏健路線になるだろうという日本の?政治評論家の観測は外れた。日頃、公約を直ぐ剥がせる膏薬程度に見なしている評論精神が露呈した。尤も、トランブ大統領が主張していたように動いてそれが奏功するかどうかは別問題で、どう転んでも社会の亀裂が深まることは間違いない。

 世の中は自分さえよければとは行かないとトランプさんに申し上げたい。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

犬で散歩させる

2017年01月28日 | 診療

     

 今朝は寒さが和らぎ、頬や耳が冷えて困ることはなかった。土曜日で電車は空いており最初から座れ、本が読めた。

 生活習慣病と言われた高血圧糖尿病などには食事と運動が大切な予防治療対策だ、中々小一時間早足で歩きなさいと指導しても実際にできる人は多くない。やむを得ず医者の方も十分を十五分に、十五分を二十分にと譲歩しながら歩行を生活に取り入れるように勧めている。

 中に犬の散歩はしてますという中高年女性が居られる。これは毎日のことだから、とても良いのだが中身を確かめねばならない。どんな犬ですかと必ず聞くようにしている。ダックスからラプラドールまで色々だ。雑種も結構いる、雑種の時はどんな大きさですかと聞くようにしている。犬の散歩はどうしても犬ペースになりがちなので、犬の種類を確認する。

 中型から大型の早足で長距離を歩く犬が良いのだが、女性でしかも高齢だと時々引っ張られて転ぶことがあり、中々難しい。それに既に飼っている犬を変えるように勧めることも出来ないので、どんな散歩内容かを想像確認するわけだ。

 犬の散歩で十分な運動になるとは言えないことが多いのだが、カウチポテトとは雲泥の違いがある。犬でなく猫を飼っている家、動物のいない家もある。その代わりというのも変だが夫婦で一緒に歩いたり、散歩友達のいる高齢者もいる。勿論、単独行の早足散歩おじさんも多い。中には散歩じゃかったるいと走っている人も居る。

 重要大切と言いながら、運動は服薬の何倍も実行が難しい。薬を飲むことは九割の人に出来ることだが、毎日の運動はやれる人は自主的にやれており、出来ない人は腰が重い、そういう人に犬を飼うのは一つのアイデアかも知れない。唯、動物を飼うのは中々大変で億劫な人には無理かもしれないし、散歩のためというのは邪道というか犬迷惑になるかもしれん、ワンワン。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

葛根湯医者

2017年01月27日 | 診療

       

 漢方薬を十数種類採用し、使用している。私が学生だった五十年前は漢方の講義はなかった。今でも全ての大学で漢方の講義があるわけではないようだ。しかし街中で医院を始めると、なんだか病気は重くないのだが色々訴えの多い患者さんが結構たくさん受診される現実があった。マイナートランキライザー、胃粘膜保護剤、軽い鎮痛剤などを投与していたのだが、上手くいかないことも多かった。そこで体質や症状に対応して処方する漢方薬に眼が行き、少しずつ使い始めた。勿論、漢方薬で全てが上手くゆくわけではないが、西洋薬を補完する機能があることを実感している。

 日曜日を半日潰して二回ほど講義を受け、漢方の本も数冊読んだので、免許皆伝とまでは行かないがある程度の知識も身に付けた。中には漢方にのめり込む先生もおられるようだが、そこまでは行っていない。唯、漢方なんぞ保険診療から外してしまえという厚労省とタッグマッチ?で主張される医師とは意見を異にしている。漢方薬は症例を選べば明らかに有効だ。

 さてそこで葛根湯なのだが、これは優れものだ。落語にどんな病気でも葛根湯しか出さない医者が出て来る。出さないのではなくてしか出せないらしい。葛根湯医者と呼んでからかっているのだが、藪よりは良さそうに思う。先手必勝という言葉がある、これは長い経験から出たそれなりに根拠のある考え方だが、葛根湯にはこの先手必勝の効果が期待できる。万人に期待できるかどうかは分からないが、時々「先生何だか風邪を引きそうだから葛根湯を下さい、頂戴」という患者さんが居られる。どうも、風邪を引きそうだと言う時に葛根湯を飲むと有効らしいのだ。少なからず葛根湯患者がいるから本当なんだろうと思う。実は私も微かに悪寒がする時や喉がイガイガする時に飲んでいる、何だか効いているように思う。

 葛根湯医者と呼ばれても気にしない、私は葛根湯も処方できる医者だと言い返そう。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本屋の空気

2017年01月26日 | 

       

 昨日、久しぶりに本屋に寄った。鄙には希な大型店で二階には専門書もたくさん揃えてある。一階の雑誌、単行本そして文庫本の階には本がひしめき、読んでくれ買ってくれと声を上げているようで落ち着かないが、二階の専門書部門は医学書を始め理工系の本、経済美術工芸思想哲学外国語の本と分厚い本が落ち着いた空間に並び、人間の能力の凄さに圧倒される気がした。確かに自分の能力知識の小ささに圧倒されるのだが、全く嫌な気分ではなく、嬉しいすがすがしい気分になる。何でも揃うネットの本屋では味わえない、本の精の気配が漂っているのだ。直に本を手にとって数ページ読んでみることの出来る楽しさは何物にも代えがたい。電子本では決して味わえない感触に浸ることが出来た。

 これから紙の本がどうなって行くか分からないが、この本を手に取る感触、万感の書が存在する空間に佇む感覚は何ものにも代えがたい気がした。失礼ながら小さい書店はともかく、大型書店はなくならないで欲しいというか、なくなってはならないと思った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする