駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

切り返しに備える

2010年09月24日 | 診療
 定期的に診療している患者さんは千人近いだろう。患者さんが定期的に診察を受ける医者はせいぜい二人だろう。後期高齢者で医者巡りをしていると冗談交じりに言われる人でも四、五人もの医者に定期的に診てもらっている人は少ないと思う。当院だけの患者さんも結構居るようなので、医者対患者の比は一対五百くらいのものだろう。
 半年ほど通ってもらえば、性格、仕事、家族構成など概ね把握できる。そして非常に大切なことだがイメージが脳裏に残るようになるので、体重60kgの人なら2kg変化すれば一目でわかるようになる。1kgでも気が付くことがある。機嫌のよしあしも大体分かる。
 ところが、医者でなくても患者さんの中にはなかなか観察眼の鋭い人が居て、「ちっとも夏瘦しないね」などと言うと「先生、太りましたね」。と逆襲してくる。確かに研修医に御馳走したり旅行に行ったりで2kg近く太ったのだ。「よくわかったねえ」。と答えながら、内心焦る。こちらがそれとなく観察している時に患者さんも医者の顔を見ているわけだ。おまけに患者さんは二人程度の懸かりつけ医なのに、こちらはその五百倍もの人を気に懸けているのでハンディも大きい。
 まあ、長く人間をやっている患者さんも多く、都合悪い話題をはぐらかしたり切り返したりしてくるので、土俵にばったり倒れて土を付けないように、こちらも日頃頭と口の鍛錬を怠たらないようにしている。
コメント (4)
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