駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

落語の医者を真似してみたい

2014年01月31日 | 診療

                   

 医者という職業は結構お笑いの種に使いやすいらしく、落語にもよく出てくる。大好きな枝雀の枕にも医者が登場していた。

 胸を聴診しながら、「はい、吸って-、吐いて」と指示するのだが、そのうち「吸ってー」、「吸ってー」、「吸ってー」となり、患者が「苦しい」。と言い出す、にやりと笑って「苦しいでっか」。

 これを実際にやってみたくなって困る。未だ試したことはない。「先生、殺生な」。と冗談の分かる患者は居ないものだろうか。残念ながら落語家の患者さんはいない。

 医者も人の子、石や材木で出来ているわけではないので、年に一度くらい美人の聴診をして審美眼を秘かに楽しませて戴くことはあるが、三週間に一度くらい「頼むから息を吹き掛けんといてーや」。と内心思いながら、顔を背けて聴診させて戴く羽目に会っている。目はつむれても鼻はつむれんからな。

 仕事に楽しみを見付けることは飽きず続けるコツだろう。嫌な思いを帳消しにしてくれる楽しみや喜びがあるからやっていける。美人でなくてよい、気の合う楽しい患者さんは有り難い。

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都知事選徐々に盛り上がる?

2014年01月30日 | 小考

                

 東京都知事選挙で原発が問題になっている。なぜ都知事選挙で原発が争点になるのか違和感はあるが、たかだか二年半で忘れ去られそうになっている原発事故を思い出させる政治的意味はあるのだろう。それに国政選挙がしばらくなさそうだということも、国レベルの問題である原発の問題を再提起する理由だろう。

 果たして喉元過ぎればば何でも忘れる傾向のある日本人が、新たに原発の問題点を真剣に考えるか心許ない。取り敢えず目先の利益優先で面倒なことはうるさいけしからんと退ける人も多そうだ。

 一番の問題は原子力発電の原理をきちんと理解している人が少ないことだろう。放射能の健康障害も福島の空を鳥が飛んでいる、落ちてこないから放射能の健康障害などたいしたことはないと言う候補者も居るようだから、火力と原子力の違いがきちんとわかっていない人が多いような気がする。福島原発事故による経済的負担を計算して何度でも公表して欲しい。東電と国民の負担額を明らかにすれば、改めて考える人も多いだろう。原発なしでアベノミクスの好景気?がもたらされているのに本当に原発が必要なのかと不思議な気がする。安陪首相はこうしたことにもお答えしないのだろうか?。

 オリンピックを盛り立てると言うが、オリンピックをないがしろにする候補者など居ないと思う。世界一の都市にとか、安全な街にとか美しげな言葉を発するのは簡単、言葉遊びもほどほどに願いたい。何をしてきたかを見れば何ができるかはわかると思う。

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事実に向き合う心はどこへ

2014年01月29日 | 人生

                          

  猛残暑から急に秋抜きの厳寒の冬に移行したせいか、暮れから寝たきり患者さんに変化が起きている。師走から、もう四枚の死亡診断書を書いた。例年の倍だ。人の寿命のことを軽々しくは論評できないが、まあ九十の声を聞けば大往生と受け止めてよいと思う。それでも、ご家族によってはまだまだと様々な手段を望まれる。逆に、希ではあるが、何にもしなくてよいと見に来ることもなく電話で注文してくる息子さん(といっても前期高齢者)も居られる。

 なかなか、もはやこれまでとははっきりと申し上げにくいので、改善回復は難しい、食べられなくなったらお終いですよなどと表現させていただくのだが、それでも次の一手をと所望され、やむなく総合病院を紹介することもある。救急外来から入院しても良くなりません、急性期病院の入院適応ではありません、ご自宅でと返されて初めて納得される。

 総合病院にはご迷惑な部分もあるかも知れないし説明しきれない私の力不足もあると思うが、人間は諦めきれない時、手続きを踏んで漸く受け入れる心が形成される場合もあるのだと思う。

 しかしまあ、コマーシャルに依って作られた長寿当然社会、健康強迫社会の影響も感じる。物も言えない食事もできない爺さん婆さんが本当にたかだか五、六日程度の延命を望んでおられるだろうか。なんだか、家族(突出した一人のことが多い)の意向を重んじ過ぎているように感ずることもある。どうすればいい、なんとかならないかと言っていたのに、亡くなった時静かな別れの悲しみが感じられず、すぐさまあちこち電話を掛けまくるあなたはいかなる神経の持ち主でしょうか。

 

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水を掛ける人

2014年01月28日 | 町医者診言

                 

 日曜日のBS1を見てNHK未だ健在と見直そうかと思っていたら、水を掛けた人が居る。こともあろうにNHKの新会長籾井勝人氏だ。新任会見で従軍慰安婦についての見解を披瀝した。翌日、個人的見解としても言うべきでなかったと釈明、官房長官は個人的意見と不問、橋本大阪市長は正論と評価・・・。なんだこれはと首を傾げてしまう。事の是非以前に軽率極まりない言動で、とてもNHKの会長が勤まる冷静沈着公平無私の御仁ではなさそうだ。誰がこうした人物を推薦したのだろう。

 不偏不党を旨とするNHKの会長であれば個人的見解は胸の内に納めておくもので、漏らしてもせいぜい家族までだろう。それを公にして論争しようというのであれば評論家とか政治家とか学者とかに転職すればいい。

 気懸かりなことを書いたついでだが、石原維新の会会長は常軌を逸している。様々な見解はあるとしても、日本の元総理大臣に対して馬鹿が二人揃ってと侮蔑したのが事実なら、自己肥大も病的と言わざるを得ない。そうした人が都知事だったことを思えば、今回の都知事選候補者もまた違って見えてくる。

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「ハンナ・アーレント」を観る

2014年01月27日 | 映画

               

 地方都市にも映画ファンのための映画館があり、観客動員を望めない名画を見せてくれる。「ハンナ・アーレント」を観ることができた。観たいと思っていた人が多かったようで僅か六十席ほどの席がほぼ満席だった。

 ハンナ・アーレントのことは哲学者で全体主義の起源という本を書いたこと、ドイツからアメリカに亡命したことぐらいしか知らなかったが、顔写真を見たことがあり、黒髪と思慮深そうな表情に強い印象を受け、どうした人物だったのだろうかと興味を持っていた。

 映画は周到に準備された演出脚本に俳優の演技も素晴らしく、価値ある秀作だった。描かれた主題が日頃自分が考えていることに似ていたのには驚いた。勿論、私の考えはアーレントの足下にも及ばない不徹底で弱いものではあるが、考えることの大切さをこんなにも深く強く守り実行した人が居てくれたのだと驚き感動した。

 人間はどうして短絡的に人を非難するのだろう。公平にと広い視野で冷静に考え抜いた判断を理解出来ないわけではないと思うのだが、その手前で拒絶し非難する方が簡単で快感なんだろうとさえ思えてくる。不条理の世に生まれ、思うように行かず鬱屈する不平不満を好かん奴を叩く快感で穴埋めしようとする精神構造があるのかもしれない。ハンナアーレントの思想を学ぶ時間も脳力もないのだが、末席ながら同じ志向を持っているように感じた。

 それにしてもよくこんな地味で娯楽から遠い映画を作ることができたと思う。アーレントは今も生きているのだ。

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