駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

無知の知を知る

2018年11月17日 | 人生

          

 

 無知の知はソクラテスが言った言葉とされ、自分が無知であることを知ることによって、より深い思索と知へ辿り着けるといった意味らしい。哲学的な解釈はよく分からないので脇に置いて、単純に自分が物事をよく知らないことを自覚することが、どんなに重要かということには気付いている。

 ソクラテスの時代に比べたらそれこそ何千倍否何万倍も人類全体の持つ知識は増えているだろうが、無知の知の持つ意義は変わっていない。奇妙に聞こえるかもしれなが、新知見に伴い新たな無知の範囲が広がってくるし、個人の脳力はソクラテスの時代とさほど変わっていないと思われるからだ。多少脳力が上がっているとしても 失われた謙虚さや感性を差し引けば総合力が大きく優ってきているとは思えない。

 自分を例に取れば医学の知識は研修医の頃に比べたら何倍も増えているが、医学の進歩は目覚ましく新知見が何十倍にも膨らんでいるので、無知の分野は広がっている。幸い人間そのものはさほど変わらず、臨床経験が生きるので、研修医の頃に比べればより良い診療ができているとは思う。

 今では課していた一日三十分の勉強時間も、十五分二十分に減り新知見に追いつけなくなっているが、こんなに知らないことがあるという自覚は保つことができている。尤もこんなに知らないことが増えちゃあ、そろそろ引退かなあという思いも湧いてくるので難しい。

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葉子がまた何かしでかした

2018年11月16日 | 人物、女

 

         

 

 多和田葉子さんが全米図書賞を受賞されたようだ。確か三ページ読んで放り出した「献灯使」は本棚のどこかにあるはずだ。探し出して読んでみるか、多分十一ページくらいで頓挫するだろう。エッセイや旅行記は大好きなのだが、どうも小説はファンを自称しながら読めていない。

 多和田さんは私見では言葉というか言語に憑かれた人で、日本が生んだコスモポリタンのお一人だ。梯久美子さんよりも先に、生きているうちに会ってみたいと思っていた人だ。

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医院でのマナー

2018年11月15日 | 診療

        

 

 あなたのかかりつけ医からお願いがあります。

 名前を呼ばれたら返事をして下さい。聞こえて歩き始めていても、私からは見えないのでもう一度大声で呼ばなければなりません。

 看護師が居ない時は診察室のドアは自分で締めて下さい。私が立ち上がって締めに行かねばなりません。折角個室にしているので、お話が他の患者さんに聞こえないようにしたいのです。

 ご主人を診察している間中、私の耳元で「この頃物忘れがひどくなった」、「よく怒る」などと囁き続けないでください。

 「どこが痛いの」と聞いた時、私の身体を触って場所を示さないでください。

 診察室のベットに横になる時は靴を脱いでください。シーツが汚れます。

 常識というか礼儀と思います。いい大人なのにと申し上げたくなります。

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アメリカの光と影から

2018年11月14日 | 町医者診言

              

 

 訴訟過多、大量無差別殺人、数多いホームレス・・どうしようもない処が数え切れないほどあるが、日本から来た若造で途中から投げられなくなった大谷を新人王にぶっちぎりで選ぶところや大統領を面と向かって批判する芸能人が居るところには感心してしまう。最近はアメリカを批判する本が多いようだが、単純そうで懐が深くフェア精神を貴ぶ気風が奥深く根を張っている国と再認識した。

 フェアと言うのは簡単だが、それが高く評価され現実に認められる国は中々ないと思う。

 私の知識など限られたものだが、アメリカは若い国で若い人と同じような欠点があるけれども、若いから力がある一方それなりの歴史もある。トランプを鬼子のように扱うばかりでは不十分で、アメリカンパイはフレンチパイほどではないが、折り返しは幾層かあり、歴史的な視点を忘れず時空という厚みを持って評価する必要があると思う。こんなことは浅学素人の私ではなく、学者が表に出て分かり易く繰り返し国民に発言解説すべきことだ。勿論、発信しておられる方は居られるが、求めに応じ控えめにという印象がある。岩盤と言われるトランプ支持層の由来やそれを巧みに自己肥大に活用しディールに走るトランプの出自など、知れば知るほど考えれば考えるほど、バラエティ番組よりも面白いと思う。

 不適材が陳謝などという茶番、外国人材は物ではなく者なのを棚に上げた論法、かまけてまやかされている場合ではあるまい。

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錦織遂にフェデラーに勝つ

2018年11月13日 | スポーツ

         

 

 実力は試合の結果で測られる。勝負の結果は三つしかない、勝ち負けそして引き分けだ。引き分けはサッカーやチェスなどを除いて稀で、勝ち負けとは違う価値と意味合いを持つ、実力よりも相性や作戦が関与しているように思う。勝ち負けとは別に論ずる必要がありそうだ。

 錦織がナダルジョコビッチフェデラーマレーに分が悪かったのは事実で、錦織はいわば男子テニスプロの実力を測るバロメーターのような存在だった。勿論、調子の波はあるけれどもトップテンの五六七八位くらいの実力で、下にはまずまず勝てても、中々トップスリーの壁を破れなかった。ジョコビッチもフェデラーも錦織を良い選手と褒めるけれども、負ける気はしない口吻だった。

 誰よりも本人がジョコビッチフェデラーの壁を意識していたと思う、逆に意識しすぎて突破することができなかった気がする。遂に四年八か月ぶりにフェデラーに勝てた。この一勝は大きい。なぜか、まあ色々解説はあるだろうが、なんで勝っても勝ちは勝ち、これで吹っ切れるものがあるはずだ。

 ここ一番に弱い人は数多い。しばしば不運とかあれだけ実力がありながらといった枕詞で語られる。現役で、ここ一番い強い人、それは羽生竜王だろう。さすがに勝率は落ちてきているが、大切な一番には負けない何か凄味を持っている。尤も、今回のタイトル百期は容易ではないと見ている。飄々とした人、広瀬八段、は意外にしぶといものだ。

 いずれにしても錦織はこれで吹っ切れて、ここ一番に三回に一回は勝てるようになるのではないか!?。

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2位でも大丈夫

2018年11月12日 | 小考

               

 

   木村太郎というコメンテイター?が首相には蓮舫参院議員が相応しいと発言し、その理由として「2位じゃダメなんですか」という発想を支持するからだと述べたと報じられている。

 「なんでもかんでも1位じゃなきゃいけないっていう考え方が日本の社会を硬直化させている。いいじゃないか、2位だって最下位だって。そういう柔軟な考えの政治家が出てきて欲しい」。確かにそういう側面はあると思う。木村太郎氏に注目しているわけではないが、ユニークで常識外れのようで時に核心を突く発言をするようだ。

 この発言だけで首相にというのは飛躍しているというかかなりの省略があると思うが、臨床医をしていると確かに日本人は何でもかんでも1位を求め過ぎると感じることがある。並で良いという慎ましく謙虚な心根が日本人の良さと思っていたが、それは建前に過ぎないあるいは平成になって変わったのだろうか。八十でこれだけお元気なら御の字と医者が思っても患者さんは隣の爺さんは八十八なのに私より元気とご不満そう、大腸がんで三年後に肝転移が見つかるとご家族の中にはがんセンターで治療を受ければよかったと恨めしそうに言われる場合もある。がんセンターで治療を受けても同じような経過だったと思うのだが、一番と言われる所の治療を受けさせたかったと思われるのだろう。

 何が一番いいなんて簡単にはわからないし、一番の評判の所にみんなが殺到したらどうなるか、金に糸目は付けないとみんなが高価な治療を受けたらどうなるか。評判倒れも多いし、高い薬がよく効くとは限らない。とにかく簡単に一番を望むのは行き過ぎで錯覚があると思う。

 日本の技術は世界一というのはそういう所もあるそういう時もあったとなりつつある。何でもかんでも一番が良いですか、失礼ながら其れもあなたがと聞き返したくなることもある。木村氏の硬直化とはちょっと違うが、何でもかんでも簡単に1位を所望されるのに首を傾げることがある。

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斑の世界

2018年11月11日 | 小考

             

 

 世界は広いと頭では知っていても実感としてあるいは確かな知識として理解している人は少ない。別に重力でなくても電波でなくても、人間の関心は距離に反比例して小さく弱くなる。だから意識して自覚して見直さないと事実や真実には近づけない。

 そして落とし穴は等距離でも同じように情報が伝わるとは限らないことだ。ちょっと急だったのだが朋遠方より来たると一週間前に連絡があった。それでは落ち着いて夕食でもと料亭、といっても十軒くらいしかない、に予約の電話を入れると何処も満員漸く八軒目の馴染みでないところに空きが見つかった。一応料亭とか和食と名乗っている店ばかりで決してお安くないのに、この盛況ぶりは何だと不思議な気がした。世の中景気がもう一つのようでひょっとしたら良いのかもしれない。私の医院は一寸町外れで二十年前は校内暴力で荒れた場所のせいか富裕層は希、そのせいか景気が良いという患者さんは少ない。ただ、消費税の駆け込み需要がある業種には薄日が差しているらしい。

 つまり世の中は斑で、自分の肌身で知りうる範囲の情報では、事実とずれてしまうことも多い。要注意なのは、自分の限られた情報だけで俺が正しいと押し通す人物が少なくないことだ。

 敵より恐い馬鹿大将、病気より恐い井の蛙医者。

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猪の年が来るが

2018年11月10日 | 世の中

            

 

 患者さんのTさんは定年退職後かなり本格的な家庭菜園をやっておられる。場所が市街地でなく裏山の為、時々「猪の野郎で全滅だ」と憤懣やるかたない様子のことがある。

 「いつも明日収穫しようとする夜に畑をほじくり返えしゃがる、食べ頃をよく知っているんだね」。とそこは感心していた。よく聞くと猪には好き嫌いがあってサツマイモとカボチャが大好きらしい。さつまいもとカボチャと言えば猪野郎と言っても雌が相当混じっているに違いない、子育てがあるから雌の方が大食らいかもしれない。今は玉葱だから、大丈夫だけどと帰っていかれた。確かに生の玉葱じゃ、猪も鼻がツーンとして食べられないのだろう。山奥では猿や鹿が悪さをするらしい。尤も市街地と言っても安心できず、同じく退職後に近所で菜園をやっているSさんはカラスが落花生を食べてしょうがないとこぼしていた。

 退職後の男性患者さんにはテレビを見てゴロ寝にならないよう運動を勧めているのだが、野菜作りは一挙両得で、興味を示す人には特に奨励している。畑仕事などしたことのない人ばかりなのだが、明らかに才能の差があり、糖尿病のYさんは物事に創意工夫を凝らす人のようで、川原の畑を借りて本格的市場に出せそうな野菜を色々作られる。年に何回も茄子、胡瓜、葱に生姜など食べきれませんから皆さんでどうぞと差し入れをしてくださる。

 詳しく聞いたことはないが、Tさんは部長というか管理職の雰囲気、Sさんは営業と言うか対人の仕事の感じがし、Yさんは技術系の感じがする。三人集えば野菜作りを第二の仕事にできそうだ。とまあ余計な連想を働かせるのはブログを書く医者の余技だ。

 畑を荒らす猪は困ったものだが、亥年を困った年にしないようにちょっと猪に似た大統領にお願いしたい。

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信じる者は?

2018年11月09日 | 医療

            

 

 昔ラジオか街頭説教か 信じる者は救われると聞いた記憶がある。どうも宗教心は薄い方なので、そうかなあ、救われるってどういうことと聞き流した記憶がある。長い歴史のある宗教には奥深い教えがあると思うが、全面的に信仰する境地には至っていない。祖父母や父母の言葉の方が心に深く浸み込んでいる。あるいは父母や祖父母が例えばキリスト者であればが自分も自然に信仰できたかもしれない。

 まあ同列には論じられないと思うが、医療や教育には信仰とまではゆかないが信用や信頼というものが大きな意味と力を持っている。もし自分が肺がんで手術を受けるとすれば主治医となる術者には全面的な信用を置いた医師にお願いするだろう。あるいは術者と決まった医師を全面的に信頼する気持ちになるだろう。

 世の中には絶対はモータルということだけで、何事にも万が一が付きまとうので、信用や信頼というものが持つ意味と力は大きい。愛はしばしば使う人物によって安っぽくなってしまう。ご信頼申し上げておりますという言葉を六十年の時を越えて今も鮮やかに記憶しており、ゆるぎないものだったと知っている。

 風邪や高血圧の診療程度で、信用や信頼は大袈裟だけれども、時にそれを感じる。何の変哲もない風邪薬、先生の薬の方が効くなどと言われる患者さんが居る。成分は同じ薬でも出先の見知らぬ医師のものより慣れた私の薬の方が効くと思って飲むから効くのだろう。高血圧は全く自覚症状がないことが多い。降圧剤をお飲みになった方が良いですよと申し上げても、中には様子を見るから結構ですとお断りになる患者さんも居られる。脅かすように取られるのは好まないので直ぐ引き下がるのだが、多分これには理解不足の他に僅かだが信用や信頼の不足も関与しているだろう。信用とか信頼は大仰で単なる馴染みの問題かもしれないが

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D for Donald and Devided

2018年11月08日 | 政治経済

           

 

 アメリカの中間選挙の結果、上院は共和党下院は民主党が過半数を得て、所謂捻じれが生じた。トランプ大統領は予想通り大成功、うまくいったと吠えている。この人は何でも自分に都合よく解釈して威張る人だ。確かに上院で多数を得ることができたので、客観的にもまずまずなのかもしれない。

 しかし、選挙結果は如実にアメリカの分裂を表わしており、もはやUnitedではなくDevidedになってしまった。穏健寛容な中道派の人達が減り、左右どちらにも極端な主張をする人達が増えた。これでは対立と衝突が必至で、USAではなくDSAとなりアメリカの政治は不安定になり、ひいては世界の政治状況も混乱が続くだろう。

 トランプの親友を自認している安倍首相も多少は路線の変更を余儀なくされるだろう。習近平もプーチンも記憶力は良いはずで外見上は互恵路線に舵を切っても、今までのことは胸の底に刻んでいる。外交とはそういうものとしても、安倍首相は僅かだがハンディを担うことになるのではないかと危惧する。

 ところで、格差拡大を基調とする分裂のありようは日米で随分違う感じがする。日本は右には極端な人達が居ても左はさほどでもない。日米のこの差がどのように日本が置かれる状況に影響するのか、専門家の議論を聞いてみたい。個人的には日本のこの傾向は若い人の活力に陰りがあることを示唆しているのではと懸念する。

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