駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

ローズベーカリー丸の内店

2011年05月31日 | 旨い物

   

 ローズベーカリーに丸の内支店があるのを知った。今年の二月にオープンしていた模様。年内に一度は上京すると思うので行ってみたい。

 行きつけのカフェにパリ本店の女店主ローズ・カラリーニさんのBreakfast Lunch Tea という著書が置いてあり、自分がやってみたかったこと(生活に溶け込み素朴単純で旨い)を実現している人が居ると興味深く読んでいた。もしパリに行くチャンスがあれば是非行ってみたいと思っているので、東京丸の内に出来たとあれば逃すわけには行かない。

 ただ、パリで受けいれられた味が日本でどこまで再現されているか、日本で何処まで受けいれられるかは多少気懸かりである。それともう一つ、個人経営の店は大きくなると持ち味が失われるとしたものなので、チェーン店の味化しないかも心配だ。

 とにかく私の描いていた食べ物屋コンセプトを実現してしまった人が居たのには感心敬服する。もはや生まれ変わらなければ私の夢は実現困難と観念していたので、まだ食べていないがローズベーカリーを応援したい。

 もう一つ丸の内に開店と知って抱いた感想は、なんだかどうも銀座のライバルは丸の内になってきたというものだ。サライ辺りの編集者に何時までも銀座京都特集ではないぞと、注意を喚起しておきたい。

 写真はネットから拝借した店の外観。

 

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綜合臨床の精神

2011年05月30日 | 医療

 俗に万病という。すべての診療科を併せて実際にいくつの病名があるかは知らないが、全科を合わせれば万に近いだろう。そして、同じ病名でも個体差があるので、万を超す病態があるのは間違いない。

 ただ実際にはよくある病気がほとんどで、百種類程度の疾患で90%以上の患者数を網羅すると思う。だから百科事典のような知識がなくても十分な診療ができるのだが、前線の内科医には希な疾患や難病に対するのとは別種の難しさがある。それは中高年の患者さんには複数の病気を抱えた人が多いことと、もう一つは患者さんの訴えに対応しなければならないということだ。

 複数の病気に対応するには幅広い知識に加え、個々の疾患の重み付けと関連性を把握しなければならず、所謂総合臨床の能力が必要となる。前線では総合臨床の能力が極めて重要であるが、アカデミックとは認められないせいか大学医学部での認知度評価は、二十年前に比し随分改善されたが、まだ不十分のようだ(大学間で差がある)。

 もう一つの患者さんの訴えに対応するというのは当たり前のようで、必ずしも十分には行われていないし簡単な仕事ではない。というのは前線では患者さんの訴えは直接病気に関係しないものも多いからだ。これには、土居健夫や遠藤周作の指摘や感覚に表れていると思うが、日本独特の甘えというか優しさを好み、それを諒とする構造も背景にある。日本には持て余した憂さを遣り取りすることで晴らそうとする絡繰りができている。他の国にもある仕組みと思うが、それが広く許容されている。つまり医療では、前線の医師には患者さんの憂さを遣り取りする相手を期待されているのだ。勿論、前線の医師でもこうしたことが得意でない、あるいは好まない医師も居て、時々患者さんとの間で医学的でない摩擦が起きる。

 こうした遣り取りは繰り返えされ、相手をする医師は消耗させられるもので、それを仕事と考え覚悟して受け入れなければ、なかなかできないことだ。これも総合臨床の重要な要素なわけで、アカデミックではないかも知れないが、大学でもちゃんと指導して頂ければ有り難い。

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広い世界に生きる

2011年05月29日 | 世界

 

 世界中どこに行っても、といっても個人的な体験は十数カ国なのだが、中華料理の店がある。私には地の果てと思われたような(ちょっと大袈裟)ノバスコシアの小さな街にも中華の店があり、どうも素人くさい中華を食べさせられた記憶がある。その店ではやれ珍しい同胞と奥から中国人とおぼしきお婆さんが現れ、中国語で話しかけられたのだが、ちんぷんかんぷんで「違う違う日本人」。とがっかりさせた記憶がある。

 彼らの全く縁故のない見知らぬ土地へ住み着く逞しさには感心する。万人受けする中華料理の調理技術という武器があるにしても、遙か故郷を離れて気候風土の異なる場所に移り住むのは大変だろうと思う。まあ、彼らは溶け込むと言うよりは独自の世界を保ちながらという感じがするし、縁故がないと言っても華僑の架橋はありそうだが。

 意外なことといっても、単なる私の認識不足かもしれないが、ブログを見ると日本女性にも世界各地に根を下ろし現地に溶け込んで暮らしておられる方が結構おられる。どうも男性は少ない。すぐ女性は凄いなどと反応しがちだが、それぞれに語り尽くぬ物語があるはずで、十把一絡げで感心するのは失礼だろう。

 彼女達がどう感じているか、読み解くほどには読めてないのだが、私の限られた国外体験では、人間皆友達中身は同じというのは、どこか微かに独善の香りがする。違いに気付き、認めるのが第一歩と感じる。航空機ができ半日あれば殆どの国へ行ける世の中になり、地球は狭くなったというが、まだまだ日本人の了見が世界に広がったとは言い難い。飛躍するけれども小学校の英語よりも、十一歳の三ヶ月の海外生活体験の方が生きるように思う。小学校の英語がどんな物かよく知らないが、教育や勉強が主体なら、賛成しない。英語の歌を歌い、英語の詩を諳んじる。勿論、ネイティブイングリッシュで。それで十分ではないか。

 ブログを通じて広い世界に生きておられる日本人の声に耳を傾けることができるのはインターネットの光だろう。六十五歳にして目を開かれている。

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海水流入は続いていた

2011年05月28日 | 町医者診言

 

 福島第一原発の海水流入中断はなく、実は続いていた。これで一件落着どころか、これで問題の根深さが更に明らかになった。ところがマスコミは追求を続けるどころか引いてしまう。私は忘れないし、ミニコミも忘れないと思う。

 いつか見た青い空なら良いのだが、これではいつか見た暗雲ではないか。こうしたことは戦前の軍隊ではしばしばあったと聞く。上官の命令を下の方で変更無視してしまうのだ。的はずれの命令、直属の上司の方を向いている兵士、見て見ぬ振りのからくりは日本の持病かもしれない。

 有事に批判はけしからんと菅周辺は息巻いているようだが、意味のある内容のある批判に耳を貸さないようでは、多数の国民のために明日を切り開くことは難しい。有事に党派を超えて政治をまとめられないのは力不足ということなのだ。民主党は国民に大政奉還すべく、解散総選挙をしたらどうか。政治の停滞というほどのことはしていないようだし、末端の国民は右往左往の政治家やマスコミよりもしっかりしている。

 人は出てくる。理系だから駄目とは言わないが歴史を知らない人は駄目と言い換えよう。肝っ玉の据わった、人を動かすことの出来るまとめることの出来る人が求められる。今の時代にそんな人が居るかなどと呑気なことは言っていられない。居なければ、日本は衰退してゆく。事態が人を掘り起こすことを期待している。

 

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女神の後ろ髪

2011年05月27日 | 診療

  

 幸運の女神に後ろ髪はないと言う。これはちょっと女神に対して失礼ではないかと思う。後ろがつるっ禿ではまるで化け物、どう考えても美しい女性とは思えない。あるいは幸運の女神というのはと、ここまで考えて恐ろしくてこれ以上は書けない。やはり幸運の女神は美しい方で単にショートカットと言うことだろうと思う。

 昨夜は胸部疾患画像勉強会に出席。健診で淡い右中肺野の陰影を指摘され、総合病院呼吸器科を紹介された41歳男性の症例。CT検査で、どうもはっきりしないが腺癌の可能性がありそうだ、一ヶ月後にもう一度検査しましょうと説明したところ受診されず、半年後に咳が出て息切れがすると受診。すでに癌性胸膜炎を起こしていた。説明するY先生は淡々としたものだが、町医者の私は何で医者の言う通りにしなかったのかと自分の患者でないのに苛立ってしまった。

 T氏65歳、失礼ながら美男子にはほど遠く、よく言えば野生溢れる縄文系の顔立ちで図太い神経?の様に見える。高血圧で通院中なのだが、三月の年二回やる検査で僅かな鉄欠乏を疑わせる貧血があった。おかしいというので、便を持ってきて貰うとこれも微かに免疫法で陽性である、これはまずい。下部消化管の癌の可能性がある。十に一つくらい悪い病気のこともあるので、A先生(近所の消化器専門医)の所で検査して貰ってと紹介状をしたためた。ところが一ヶ月経っても返事が来ないし、本人も受診しない。おかしいと看護師に電話させると「恐いので行っていない」。

 では搦め手からと奥さんに電話して言い含めると、漸く連休前に現れ、直接総合病院に行った方がスムースだと思うので紹介状を書き直して呉れなどと、しゃらくさいことを言う。確かに遅れたので一理あるかと紹介状を書き直す。連休数日前に受診したのはよいが、病院にとってT氏なぞはワンオブゼムに過ぎない、当然検査は連休明けになった。先日返ってきた返事によると肛門から距離のある全周性の直腸癌で、画像診断では転移はなく、来週手術で人工肛門にはならないという。三ヶ月以上遅れたのであるが、なんとか女神の後ろ髪を掴んだようである。

 Mさん71歳女性、高血圧症高脂血症で通院中、先週受診時に、昨日一昨日と排便時に便に血が付いていたと訴えられた。痔だと思うけれど念のためA先生に見て貰いましょうと紹介、直ぐ行かれた。肛門直下の直腸癌らしいと言うことで、総合病院に回され、翌日受診された。診断が付いており、直接外科に回ったせいか、来週入院すぐ手術だという。肛門に近いので人工肛門になると言われたと、全くの動揺を見せず報告され、お礼を言われて帰られた。進行の程度、転移の有無はわからないが、迅速にことが運んだので経過が良くあって欲しいと祈る。

 はてどうも、幸運の女神の御心は計りかねる。

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