患者さんが何を聞いても、病気のことであれば99%淀みなく応えることが出来る。自分でも驚いてしまうくらいだ。勝手に口が動いて、不得意の分野でもそれなりに答え、場合によりあるいは経過により専門医へご紹介しますなどと言っている。こういう芸当が可能なのは医学的な考え方にはどの分野でも共通したところがあることと、長く多くの患者さんを診ていると似た症例を思い出すことが出来るからだろう。
しかし病気以外のこととなるとうっと答えに詰まることがある。まあ、私のプライバシーに関するぶしつけな質問は適当にはぐらかす術を心得ているので、困らないのだが。
えーっとと詰まってしまうのは、例えばこの窓はどの建物の窓ですかなどという質問だ。・・・よく知らないんですと答えたのであるが、これはどこの建物の窓かなどという鑑賞法は思いつかなかった。市役所でもないし、映画館でもないし、こんな家に住んでいる人が居たかなあとY婆さんは眺めていたわけだ。
ドラエモン風に、ああこれはどこでも窓なんですよと答えればよかったかなと後から思ったが、年寄りをからかっていると取られても困るので、・・・よく知らないと正直な答えで良かったのだろう。