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子夜呉歌  李白

2022-04-02 06:27:33 | 文学
詩仙、李白の漢詩を紹介します。

  子夜呉歌

長安一片月
万戸擣衣声
秋風吹不尽
総是玉関情
何日平胡虜
良人罷遠征
 

    「読み方」
    長安 一片ノ月
万戸(ばんこ) 衣ヲ擣(う)ツノ声
秋風 吹ヒテ尽キズ
総(すべ)テ是(こ)レ 玉関ノ情
何(いず)レノ日ニカ胡虜ヲ平ラゲテ
良人(りょうじん) 遠征ヲ罷(や)メン

「訳」
都長安の街に光を注ぐ満月ひとつ
都じゅうの家々から、衣を打つ音が聞こえ、
秋風はやむことなく吹きつける。
なにもかもが、玉門関にいる夫をしのぶ妻の心をかきたてる。
いつになったら胡虜(えびす)どもを討伐して
夫は遠い戦地から帰ってくることだろう。


「鑑賞」

「子夜歌」は、もともと南方(呉の国)の民歌で、江南の明るい風土の中での、愛や失恋を甘美なム-ドでうたったもの。それを李白は、舞台を北の都長安に移し、民歌の活力をとり入れて、新しい閨怨詩に作り上げています。月(視覚)と風(触覚)と砧(聴覚)による秋のものさびしさの底に、もとの「子夜歌」のもつ、なまめかしさ、やるせなさがひそんでいます。その息づかいが、「いつになったら、あなたは北辺の玉門関(甘粛省敦煌の西北)から・・・早く帰ってきて・・・」という終わりの二句に流露します。口ずさめばおのずとその情にひきこまれる、李白ならではの名篇といえるでしょう。

          石川忠久「 NHK 漢詩紀行」 日本放送出版協会



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