yoshのブログ

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富士山を詠ず  柴野栗山

2019-01-25 06:31:35 | 文学
江戸中期の学者 柴野栗山の漢詩、五言律詩の「富士山を詠ず」を紹介します。

詠富士山

誰将東海水
濯出玉芙蓉
蟠地三州尽
挿天八葉重
雲霞蒸大麓
日月避中峰
独立原無競
自為衆岳宗


富士山ヲ詠ズ

誰カ東海ノ水ヲ将(も)ッテ
濯(あら)ヒ出(いだ)ス玉芙蓉
地ニ蟠(わだか)マッテ三州尽キ
天ニ挿(さしはさ)ンデ八葉(はちよう)重ナル
雲霞大麓ニ蒸シ
日月中峰ヲ避ク
独立原(もと)競ウコト無ク
自(おのずか)ラ衆岳ノ宗ト為ル

「訳」

誰がいったい東海の水をもって、玉製の芙蓉にも似て美しい富士山を濯い出し磨きだしたのであろうか。それは人間の手に成るものではなく造化の神の手に成ったものである。裾野は遠く大地に拡がり、甲斐・相模・駿河の三国をおおい包み、頂上は遙か天空に分け入り、しかも蓮の八枚の花びらのように重なり合っている。雲や霞は広大な裾野から蒸してわき、日や月も中央の高峰をさけて通るかのようである。すっくと群山を抜いて聳える姿は、他に争うものなく、自ら衆峰のかしらとなっている。


「鑑賞」

この詩は、雲峰富士の崇高にして雄大なさまを讃えた作で、杜甫の「望嶽」「登岳陽楼」や孟浩然の「臨洞庭」の影響を受けているとみられます。一方、「万葉集」の山部赤人の歌の影響も強く、古来、富士を詠じた詩の中でも絶唱とされる作品である。

 「吟剣詩舞道漢詩集 律詩・古詩編」日本吟剣詩舞振興会 





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