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秋思の詩 菅原道真

2017-12-22 06:47:17 | 文学
菅原道真公(平安時代)の七言律詩、「秋思詩」を紹介します。

丞相度年幾楽思
今宵触物自然悲
声寒絡緯風吹処
葉落梧桐雨打時
君富春秋臣漸老.
恩無涯岸報猶遅
不知此意何安慰撫
飲酒聴琴又詠詩

丞相年ヲ度(わた)ツテ幾タビカ楽思ス
今宵物ニ触レテ自然ニ悲シ
声ハ寒シ絡緯風吹クノ処
葉ハ落ツ梧桐雨打ツノ時
君ハ春秋ニ富ミ臣漸ク老ユ.
恩ハ涯岸無ク報ユルコト猶オ遅シ
知ラズ此ノ意(こころ)何(いずく)ニカ安慰セン
酒ヲ飲ミ琴ヲ聴キ又詩ヲ詠ズ

「訳」
   私(道真)は、右大臣の職を拝し、年月を送り、幾度となく楽しい思いもいたしてまいりましたが、なぜか、今宵は折りにふれ物にふれて、そぞろに哀れを催し、こうした御宴にはべっておりましても、気が滅入るばかりで、心が晴れないのでございます。吹く風の中より聞こえてくる虫の音は冷ややかに胸に染み、そぼ降る雨に桐の葉の舞い落ちるのを見るのは、たまらなく寂しいものであります。さて、陛下はいかにもお若くあらせられますが、それにひきかえ、私はこのところめっきり年をとりまして、気の弱まりを感じます。御恩のほどは涯しないほどに広く、果たして存命中にお報い出来ますかどうか、はなはだ心細い限りでございまして、この憂苦の胸中は晴らそうとしても晴らす術とてない有様であります。
白楽天は憂悶を遣るてだてとして、三つのものを挙げておりますが、私もそれにならい、酒を飲み、琴を弾き、詩を詠じ、もって自らを慰めんと思う次第でございます。
 
「鑑賞」
  酒・琴・詩、この三者を、白楽天は「北窓三友」の詩で「三友とは誰とかなす、琴罷んではすなわち酒を挙げ、酒罷んではすなわち詩を吟ず、三友たがいに相引き、循環して已む時なし」と三友を称しています。
  菅原道真の詩風は理知的ですが、その表現を平易にする技術は多分に白楽天に似ています。当時の人はこうした道真の作品に新風を感じたのでしょう。

      「吟剣詩舞道漢詩集 律詩・古詩編」 日本吟剣詩舞振興会
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