yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

短文

2015-03-29 05:41:25 | 文学
日本人は短い言葉の中に多くの内容を凝縮させるのに長けているようです。短歌や俳句もそれの一例でしょう。短文にもその傾向があります。例えば
一筆申す、火の用心、お仙痩さすな、馬肥やせ、かしく
長篠の戦の際、徳川家康の家来、本田重次が陣中から妻に宛てた手紙です。仙は嫡男、仙千代のこと、馬は戦のために必要な大切なもの。
家屋敷を守り、跡継ぎを育て、武具を備えよと端的に依頼しています。

また、明治9年(1876)、神風連の乱の時の電報文で有名なものがあります。
      ダンナイケイワタシハテキズ  旦那いけない私は手傷
 熊本鎮台・司令官、種田政明の愛妾・小勝が、熊本電信局から東京の親元に打った電文ですが簡潔明瞭です。

  本日天気晴朗ナレドモ浪高シ     連合艦隊参謀 秋山真之 作

古来、名文として膾炙された海軍発信の電文です。

天気が晴朗だと逃げた敵船を確実に捕捉できること、また、浪が荒いと銃の照準が困難になるが、兵の熟練度が高い日本のほうがロシアより有利であることを言外にこめているそうです。
明治の軍人にふさわしく、現実認識の上に立った自信に満ちた文です。

 司馬遼太郎 「坂の上の雲 八」 文春文庫
コメント
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