yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

諸橋轍次

2012-03-17 06:22:27 | 文学
諸橋轍次(もろはしてつじ、1883-1982)は「大漢和辞典」を作った漢字研究の泰斗です。
新潟県南蒲原郡森町村(現・三条市)に生まれ、東京高等師範学校を卒業。青年時代に中国に留学しましたが、その時に満足できる辞書がなかったことが、後の「大漢和辞典」の作成に繋がったということです。ちなみに「大漢和辞典」は現在でも中国で使われているそうです。
 彼は1928年に「大漢和辞典」の本格的な作成に着手し、1943年に第1巻が完成しました。ところが、1945年の東京大空襲により大修館が罹災し、組み上がっていた印刷用の版がすべて溶けてなくなってしまいました。轍次の落胆はさぞ大きかったことと思います。
 しかし気をとり直し、戦後、今まで完成していた巻と校正刷をもとに再スタートをしました。が、間もなく長年の無理が祟って、1946年には右目を失明してしまい、左目もようやく明暗がわかる程度であったということです。その後、手術を行って視力を回復させ、1948年には国學院大學文学部の教授に就任しましたが、翌年退任しました。
 1960年、ついに「大漢和辞典」全13巻が完成。この功績により、文化勲章を受章しました。
 現在では大きな図書館にはどこにも置いてあるらしいですが、私が住む千葉市ではすべての図書館分館にあるわけではありません。幸い近くの図書館分館にはありますが、1巻だけでも大変重い辞書です。
 このような正確で緻密な辞書を作成した諸橋轍次の学識は驚嘆に値しますが、それのみならず、作成過程で原版を消失するという不幸を乗りこえた、彼の不屈の精神と忍耐強さには只々敬服いたします。新潟県人の美質の結実と言うべきでしょう。郷里の先輩として誇りに思います。
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