yoshのブログ

日々の発見や所感を述べます。

佐貫亦男教授

2007-06-28 07:33:42 | 人生
    私が敬愛して止まない方です。
元東大工学部航空学科教授、エッセイスト。アルプス、スイス、ドイツ、飛行機、道具、発想などに関する多数の著書があります。
1969年に「日本エッセイストクラブ賞」受賞
以下は「ロマネスク空飛ぶうつわ」 光人社 から
 
私はアルプ(高原)を歩いているときに考える。空は青く、山も青く、谷は緑である。山靴で踏む草は柔く、氷河から下ってくる風はひんやりと冷たい。そんな時、私は大臣にも、長官にも社長にもなれなかったことをつくづく感謝する。それは別にすねてもひがんでいるわけでもない。
  年をとって悲しいのは、次第に感激の度合が薄くなることである。春になって日没後の空を仰ぐともう冬の星座から去ってゆくオリオン座が見える。東京の空が汚れてきたためもあるが、ベテルギウスもリゲルも色が区別できず、三つ星がかすれ、もっと悲しいことには、シリウスの光に迫力がなく、ぼんやりとしている。それにも増して、いけないと思うのは、こちらが、たまにそれを見ても、別になんとも感じなくなったことである。
 少年時代のあのとき、雪の上に立って、寒さも、手がかじかむのも忘れて、眺めた喜びは、今どこへ行ったのだろうか。私の心の中では別の声がした。それは、初めての印象とくらべものになりません、そのあとの長い人生でいろいろな楽しみを発見したのだから、いいじゃありませんか、それよりも、今まで死なずに生きてきた幸運に対して感謝しなさい、その幸運を作って下さった人たちが、かえって早く亡くなっているのです、と言っている。
私は、そうだったね、と素直に認める。
 
いつも変わらない佐貫先生の飾らない率直な温かな文です。
コメント
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