山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

「新・御宿かわせみ」始まる

2011-04-01 23:08:01 | 宵宵妄話

  私的に実に楽しみな話です。先日つくば市へ出かけた時、本屋に立ち寄り何気なく文庫の新刊コーナーを見ていましたら、「新・御宿かわせみ」というのが置かれているのに気付きました。私は平岩弓枝先生のファンで、数多い作品の中でも特に「御宿かわせみ」というシリーズものを愛読させて頂いています。江戸の武家社会と下町社会が入り組んだ舞台の中で、市民の暮らしの断片を適確にとらえた描写には、女性ならではの優しい視点に溢れたものがあり、何度も繰り返し読みの中にたくさんの感動を頂いています。何しろ全34冊(除く読本)もあるものですから、読み始めるとどうしても2カ月くらいはかかってしまいます。1年に1回くらいはと思っているのですが、このほかにも幾つか読みたいシリーズものがあるので、この頃は2年に1回くらいとなってしまっているようです。

御宿かわせみは、描かれている時代が幕末近くの黒船来航よりも少し前の頃から、尊皇攘夷で世の中が一挙に騒がしくなり出す頃までとなっています。本を読まれた方は勿論ですが、TVや舞台などで何度も上演・放映されていますので、物語の登場人物はご存じの方も多いのではないかと思います。念のために主な登場人物を紹介しますと、主人公に宿屋かわせみの女主人の神林るい、その夫の神林東吾、東吾の兄の八丁堀奉行所与力の神林通之進、東吾の親友の奉行所同心の畝源三郎とその家族、神林通之進の妻の実家に婿入りした東吾の親友の麻生宗太郎とその家族等々と書いているうちに、これはきりがないなと思いました。町奉行所と下町の暮らしとは密接につながっているわけですが、それは何らかの事件と呼ばれるものを通して中身の濃いものとなります。この本の中では、いわば町の直接行政と司法に係わる人たちと市井の小さな旅館業を営む人たちのくらしの周辺の出来事を結びつけた世界を描いているわけですが、そこには江戸時代の終わりの頃の情景が見事に描かれており、物語は一話完結の形をとりながら実はずっとつながっているようになっていますので、その時代の流れというか、移り変わりがそれとなく判るのです。たとえば、神林東吾が自家の部屋住み居候からかわせみの亭主に収まり、その後お上に召されて講武所の教授になったり、さらに軍艦操練所の教授並になるプロセスは、黒船来航で不穏感が漂う江戸末期の時代背景そのものを意味しており、そこに描かれる世界を通して往時の人々の暮らしを思い浮かべることができます。

このような形式の、というか時代が大きく変化する時間帯を背景にした長編小説は、英雄ものとしては幾つかありますが、近世のしかも庶民のくらしを一話完結でつないで語るというものは、この本くらいしかないように思います。というのも「新御宿かわせみ」は幕末を経て明治時代に入ってからの、いわば前期主役の子供たちの世界を描いているからです。まだほんの少ししか書かれていないので、これから何が描かれるのかがとても楽しみです。

新御宿かわせみは、雑誌オール読物に掲載されているのを知ってはいましたが、いずれは文庫本になると思い、雑誌を買って読むのを控えていました。守谷に越してからは、なかなか目当ての本が入手しにくいものですから、出向く回数も減るようになり、本屋さんとは何となく疎遠になりがちでした。文庫本などはめったに覗かなくなり、今回の発見はラッキーでした。どうやら未だ1巻しか出ていないようですから、これからは本屋に行った時には、必ず文庫本の売り場を覗くようにしたいと思っています。

新御宿かわせみの第1巻をわくわくしながら読んだのですが、いやあ、ショックを受けました。何といっても前期の主役の東吾さんが幕末の戦乱に巻きこまれ、榎本武揚の率いる戦艦で函館に向かう途中の房総沖で遭難し生死不明となっているというのが一番です。それから畝源三郎が凶弾に倒れたこと、さらには麻生家が幕末の混乱に紛れた強盗に襲われ宗太郎の妻、長男、養父が一挙に命を落としたこと、前期の御宿かわせみの中では、平和な暮らしの日々を送っていた人たちの世界が一変していることに驚きを禁じ得ませんでした。そして大きく成長した子どもたちが中心の世界は、新しい時代を迎えた中で、逞しく展開されていました。これらの大きな変動・変化は、まさに幕末から明治維新を迎える時代の、江戸に住む人たちの暮らしぶりそのもののように感じます。

丁度今「会津士魂」(早乙女貢著 集英社文庫)を読んでいますが、この中にも幕末の江戸の混乱の状況が描かれており、官軍と彰義隊の戦いなどを読むと、その凄まじさが胸を打つのですが、恐らく御宿かわせみに係わる人たちも、この時代を必死に乗り越えて生きて来たのだと思います。

さて、これからどのような話が展開されてゆくのか実に楽しみです。平岩先生には、益々お元気でこの続きのお話を前期の御宿かわせみ以上に会を重ねて、私どもを楽しませて下さいますよう、ご健康とご健筆を祈っています。

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