私たちの身体が置かれているこの物質世界は、無限の連続空間として四方八方へ広がっていて、時間は無限の過去から未来へ連続している、かのように感じられます。この目の前に生き生きと見える世界は、このまま私たちの身体の外に無限に広がって連続して実在している、と直感では感じるのです。いつも私たちの脳は、この空間と時間の存在を取り込んで直感で感じているのだろう、と思えるわけです。
しかし、それは錯覚です。人間の脳が一瞬一瞬に取り込んでいる情報は、視野の真ん中にある小さな空間の映像など、少量の情報だけです。車のヘッドライトが照らすのは、前方のごく狭い空間だけですが、ドライバーはいつも明るい道路を見て運転しています。現在の一瞬に、視線の先にある、つまり動作の対象にするその一点の情報が十分あれば、空間全体が見えているように感じられるわけです。
時間についても同じ。私たちは、自分が過去の出来事すべてを把握しているつもりでいますが、その瞬間に思い出しているのは過去の一時点だけです。思い出せることはいつでも思い出せますから、私たちは自分がすべてを見通していると感じられるのです。逆に言えば、視線の運動や、注意の動きに対応して適切な情報が得られるとき、私たちは、大きな連続した全体を見ていると感じるわけです。
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