この短編を読んだ人は、蟹の人生について何がしかの感傷を持つことができる。蟹は猿がしたことを恨んだから復讐した。蟹たちは、自分たちの復讐行為は正義だと信じていたでしょう。しかし裁判所は蟹がしたことを悪事と見なしたから死刑にした。意外と現実はこんなものだ、リアルだなあ、とも思える。人生の不条理を感じる人もいるでしょう。
いずれにせよ、ある者がある事をした行為について、それを他の者が記憶していて、それに対応して何事かをしかける。特に私たちの関心を引き付けるのは、ある者がした行為に対して仲間の皆が集団的にある態度を取って反応する場面です。社会のモラルというか、空気のようなものです。その人の行為を、皆が記憶していて集団的社会的にそれに対応した行為を返す。この形をとって裁判所は蟹を死刑にした。
人間が語る物語はこういう形をとって語られる。拙稿としては、この形に、人生の秘密がある、と言いたい。私の人生とは、私のものというよりも、他人のものであり、むしろ社会のものである、という仕組みでできているのではないか?
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