当たるも八卦、当たらぬも八卦というような占いはいつの時代でも人気があります。物質世界の法則とはうまく繋がらないかもしれなくても、人間どうし皆が分かったような気になって、その理論を信じられればそれは普及していくのです。言葉で言われたお話と現実との関係がよく分からなくても、権威と多数意見という重み付けを頼りに言葉を信じることによって人間は動くのです。そのお話あるいは理論が世界の法則をきちんと表わしていなくても、人間は言葉を信じて動く。そういうものが人間と言葉の関係です。人間の脳はそれができるように進化し、その結果、このやり方で人々は身の回りの現象や人間行動を、正確ではなくても実用的な程度には理解し、大方は当たるくらいに予測しているのです。
特に文明社会では、人間さえ操作できればとてもうまく生きていける。言葉で語られる理論が物質世界の法則とはうまく合わなくても、うまく人間を操作できてそれを使って大部分の人がうまく生きていければ、社会は大体うまく動いていく。それで、文明社会では、もっぱらそのために言葉が使われるようになります。そうして社会はますます発展し、人間どうしが互いに語り合って協力できるようになっていきます。そうなれば社会は複雑に分業化し、効率化し、専門集団が発展し、ついには技術を発展させ、その結果最後に、逆説的なようですが、立派な科学を作り出すのです。