これは非常に困難な状況である、ということを筆者も心得ています。過去の学説を解説したり補足したりするというのでもない。まったく新しい学説を理論的に提起するというには実証的な方法論に欠けている。またプロではないので自分の楽しみが先に立ってしまい、話はすぐわき道にそれるし、理論展開もときどき興味本位の強引な飛躍が出てしまう。つまり学術理論としてみれば粗雑かつ未熟すぎて使えないレベルのものです。将来、もしかしたらなりたつかもしれない新しいアイデアを、ぼんやりと示しているというだけでしょう。
実際、筆者の経験からしても、こういう条件で書かれたものを読んで読むに値する情報が手に入ることは滅多にありません。読者の皆さんは、時間の無駄になることを覚悟して読むしかない、とお思いになるのが普通でしょう。
ですが、(ここまで、お読みになってしまったからには)願わくはその警戒を解いて、素直にご自分の直感的な常識に従って拙稿を楽しんでいただけませんでしょうか? あまり役には立たないかも知れないが、まあ面白い、という程度の話がひとつか、ふたつ、うまくすれば五個くらい、見つかるはずです。世間の常識から飛び離れた風変わりなアイデアなら、いくらでも見つかることを保証します。賛同していただけなくても楽しんではいただけるでしょう。たぶんごく少数の、そのような寛大な心を持った読者との出会いを切に願って、筆者は書いていきます。