足元の深淵を覗き込むと、引きずり込まれてしまいそうですか? それは、それを感じている自分自身が怖いからでしょう? 光り輝く現代文明の世界の中で、現代人が唯一真っ暗な深淵と感じるものは、自分自身の存在かもしれませんね。若い人が自分を怖がるのはしかたのないことです。しかしそんなものは、ガリレオが言いふらしている地動説を聞いたときのローマ法王の恐怖に比べればたいしたことはありません。それでもそのしばらく後、法王も科学者もふつうの人も、地面が動いていることを知ったからといって、毎日の生活は何も困ったことにはならなかった。それどころか、天体の力学を知ることは自然科学の大発展のきっかけを作りました。人々の生活は豊かになりました。地動説から数百年後には、その科学を基盤にして力強い現代文明が立ち上がってきたわけです。
過去のそして現代の哲学が何も答えてくれないことが分かってしまったからといって、悲観する必要はありません。それが分かったことで、むしろ私たちは、言葉に惑わされずにまっすぐに事実を見ることができるようになる。むずかしい言葉など使わなくても、何も困ることはありません。人生が楽になるだけです。たとえば筆者などは、言葉を上手に使う高級な言語技術者にはなりそこないましたが、おかげで言葉を飾る苦労も知らず、毎日を楽々と生きています。
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