哲学はなぜ間違うのか

why philosophy fails?

存在する⇔話が通じる

2010年11月30日 | xx4世界の構造と起源

そういう場合でも、「青い目の遺伝子は存在する」と言ってよかったのでしょうか?

目で見える物質現象としては、エンドウ豆の色や形、あるいは人体の色や形が親から子へ受け継がれるらしい、という観察データしかなかった。科学で説明できる現象としてはメンデルの法則や、卵子と精子の合体や生殖細胞染色体の減数分裂くらいでした。二十世紀前半では、そういう知識の上に、遺伝子という抽象的な概念が作られていた。

その時代(筆者が生まれた一九四〇年代)青い目の遺伝子は、存在していたといえるのだろうか? たしかに戦後の日本には進駐軍のGI(米兵)さんたちが闊歩していた。黒い人もいたし、金髪で青い目の軍人さんもたくさんいました。日本人女性との混血児の話もよくあったころです。生物学者でない一般の人の常識でも、青い目の人は青い目の親から生まれたのだろうな、と思っていました。「親から子へ血が受け継がれる」という言い方をしていた。今でもふつうの会話ではそう言っていますね。それは神秘ではあるけれども事実である、と思われていた。だれもがそう思っていた。そう思うことで、話が通じていた。こういう場合、やはり(拙稿の見解では)、「青い目の遺伝子は存在する」と言えるでしょう。

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DNAと遺伝子の関係

2010年11月29日 | xx4世界の構造と起源

Tiziano_sisyphus_2 いずれにしろ、青い目の遺伝子はある。現代の科学では、その遺伝暗号を表すDNAの分子構造(核塩基配列)とそれがある染色体上の位置は、はっきりと分っています。DNA分子の構造は、水素、炭素、窒素、酸素、およびリンの原子からできていて、それらが核塩基リン酸糖鎖の高分子として、どう配列されて相互の原子間エネルギーがどう働いているのか、二十世紀末までに完全に分かってきました。さらに今世紀に入ってからは、その分子のそれぞれの原子群がどう働いて酵素たんぱく質などを作り出し、動物や植物の細胞を構成し、身体構造を作り出し、その生理機能を調整しているか、かなり詳しく分かってきました。

しかし、二十世紀前半には、こういうことはほとんど分かっていませんでした。筆者が生まれたころ、生物の細胞をすりつぶすとDNAと名付けられたどろどろした成分が抽出されることは分かっていてその物質が遺伝現象と関与しているという仮説は提唱されていたものの、それがどういう仕組みで遺伝現象を実現しているのか、まったくの謎でした。DNAの分子構造も解明されていませんでした。まして、DNA分子のどの部分がどの遺伝子に関係しているのか、それがたんぱく質とどういう関係になっているのか? タンパク質がどういう仕組みで生物体を作り出しているのか、まったく分かっていませんでした。

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創始者変異

2010年11月28日 | xx4世界の構造と起源

この研究によれば、遺伝子のこの変異は、五千年前から一万年前ころにイラン北部あたりにいた小さな集団の人々の間で発生して、北へ移動しながら他の集団と交わらずに子孫を急速に増やした、と推論されています。事実、現在の北ヨーロッパでは人口の半数近くが青い目を持っています。なぜ、青い目のこの集団は、他の目の色の人々と交わらないで子孫を産んでいたのか、それは先に述べた実験の仮説のような配偶者選好が理由なのか、それともそうではないのか、はっきりとは分らないようです。ちなみに筆者は黒い目で、青い目の女性がその眼の色によって魅力的だという気はしませんが、皆さんはいかがですか?

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メラニン合成の阻害機構

2010年11月27日 | xx4世界の構造と起源

Tiziano_shepherd 青い目は、虹彩にあるメラニン色素の粒が小さくて少ないため、波長の短い光を散乱して青く見える。空が青いのと同じ理由です。つまり、虹彩にメラニン色素を作る酵素たんぱく質の生成が阻害されると、目が青くなる。メラニンが作られる過程のどこかで障害が起これば、メラニンは作られない。その障害はいくつもありますが、そのうちで次のような機構が研究されています。

生物細胞内でメラニンは(アミノ酸)チロシンを重合させることで形成されますが、このチロシンの移動を調節している酵素たんぱく質(Pたんぱく質)はOCA2と名付けられた遺伝子の暗号コード(核塩基配列)にしたがって合成されています。ところが、このOCA2遺伝子の暗号をDNA核塩基配列から読み取り始めるスイッチ機構に働く別の遺伝子があります。こちらの遺伝子はHERC2と名付けられています。青い目の人はこの遺伝子HERCの暗号を構成するDNAの核塩基配列の一つが他の目の色の人に比べて入れ替わっているためにメラニンをあまり作らない、という研究報告があります(二〇〇八年 ハンス・アイベルク、イェスパー・トレルセン、メッテ・ニールセン、アネメッテ・ミケルセン、ヨナス・メンゲルフロム、クラウス・キェル、ラルス・ハンセン『人間の青眼色はOCA2表現を抑制するHERC2遺伝子座の調整因子の完全随伴創始者変異に起因するものかもしれない』)。母方からと父方からと、ともにメラニンを作らない遺伝子を受け継ぐと、メラニンは作れません。つまりこの遺伝子は青い目という形質に関して劣性遺伝子です。

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青い目の男は青い目の女を

2010年11月26日 | xx4世界の構造と起源

目の色が遺伝することは昔から知られていました。青い目は劣性遺伝するようです。一九世紀に発見されたメンデルの法則によれば、両親がともに劣性遺伝子によって現われる特徴を持つ場合、子供にはおなじ劣性遺伝の特徴がかならず現れる。つまり、青い目の男は、青い目の妻が青い目ではない子を産んだ場合、それは自分の子ではない、と思ってよい。青い目の男は、自分の子を確実に産ませたいならば、青い目の妻をめとるべきである。ということになります。

そうであるならば、青い目の男は青い目の女をパートナーとして好む傾向があるのではないか?こういう仮説を検証しようとした実験があります(二〇〇六年 ブルノ・レング、ロンニ・マシセン、ヤンア・ヨンセン『なぜ青い目の男は同じ目の色の女を好むのか?』)。

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