人間の脳は生まれつき、このような力を直感で感じ取る機能を備えている。物体の運動する様子を見ているだけで、自動的に、脳のどこかの神経回路がその物体に働く力のイメージを検知して、その存在感を感じる。物が運動を始めるとき、その原因になる現象が近くで起こっている、と感じる。目に見えなくても、その原因はある、存在する。それが力とか、欲望とか、意思です。コンピュータにやらせれば、位置の三次元ベクトルの時間変化を二階微分して、質量と力の大きさと方向を三次元ベクトルとして正確に算出できる。しかし人間の直感による推算のほうが速かったりします。
人間は、物が動くイメージを脳に浮かべると、それに対応して瞬時に筋肉が必要な速度で収縮を開始する。これを自分では衝動と感じる。考えたとおり動くのではなくて、動くことが考えることになっている。その仕組みで人間は瞬時に行動できる。力学法則を習っていない子供のほうが、運動方程式を使って計算するサッカー用ロボットよりも、サッカーが上手なのです。
物が動くイメージが現れれば、すぐに脳の運動形成回路は必要な筋肉収縮の信号を作り出す。直接筋肉にまで送り出されないでまだ脳の中に留まっている運動信号列を(拙稿の用語法では)仮想運動といいます。仮想運動は、もう一度シミュレーションで世界の反応を確認した後、筋肉に指令として送られる。これら一連の神経活動を思い出した人間は「自分が力を出した」と思うわけです。
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