原始人が、轟音を発するロケットの打ち上げを見るとき、彼または彼女は、ロケットが怒り狂って一気に地面を離れて天に昇ろうとしている、と思うでしょう。そういう見方をしても、加速されていくロケットの軌道をかなり正確に予測できる。ロケットの内部に意志、意図、あるいは欲望というようなものが、本当にあろうとなかろうと、実用上はどちらでもよい。脳に負担が大きい計算負荷が少なくて、しかも精度よく、その行動を予測できれば実用に使える。ロケットなど複雑な内部機構が働いて運動する物事を予測するために、その内部に欲望のようなものを想定してその行動法則を単純化して捉える方法は簡単で便利で実用的です。実際、人類は、物事の変化を予測する場合に、(拙稿の見解では)この方法を採用した。これが擬人化という予測手法です。
実際、ロケットの内部で軌道を決めているものは半導体部品で構成された電子制御回路やバルブやエンジン操舵機構です。その内部に意志、意図、あるいは欲望のようなものは見つからない。ロケットは、天に昇りたくて上昇する、というよりも、物質法則に従った物質現象の連鎖によって結果的に天に昇ってしまう、というべきでしょう。