擬人化(と拙稿が呼ぶ、私たちの脳神経系の)プロセスは、観察対象の動きを仲間の動きに共鳴する運動形成回路の活動として捉え、(そこで擬人化された)対象の動きに共鳴して自分の運動形成機構が自動的になぞる仮想運動を引き起こし、さらにその仮想運動に連動して引き起こされる自分の感情発生プロセスからフィードバックされる体性感覚を観察対象の内的意図として認知し、(擬人化された)それが何をしようとしているかを読み取ることで、物事の次の変化を予測する。
たとえば、P君が山道を歩いているとします。夏なのでセミが鳴いている。すぐ近くで聞こえるので、よく見るとそばの幹にミンミンゼミが止まって懸命に鳴いている。立ち止まってじっと見る。逃げないのかな、と思う。セミは急に鳴きやみました。P君は自分がセミの仲間になったように、歌をやめて敵の気配に耳を澄ましている気持ちになる。息を止め、足の筋肉を緊張させます。P君がセミならば、これで、すぐジャンプして飛行体勢に入れる。セミの敵であるP君はセミに気づかれないようにそっと手を伸ばす。一方、セミの気持ちになっているP君は、「わ、やっぱり敵だ!俺を捕まえに来た。やだ!逃げちゃおう。ついでにおしっこをひっかけちゃおう」と思い自律神経系が興奮して自分の心臓がどきどきし始めます。自分の身体のその緊張感で、P君はセミの緊張と逃亡の意欲を感じ取り、セミがいまにも飛んで逃げるだろうと予測する。このとき、P君は、飛んで逃げよう、というセミの気持ちになっている。次の瞬間、案のじょう、セミはおしっこをしながら飛んで逃げます。