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哲学はなぜ間違うのか

why philosophy fails?

外力なし→擬人化→主語

2008年08月07日 | x8私はなぜ言葉が分かるのか

Chasseriau_charles_alexis_henri_cle

一方、リンゴよりずっと大きいもの、人間のような大きさか、それより大きい物は、手で簡単に動かすことができない。そういうものが動くときは、自力で動くように見える。リンゴの場合については、人が手をかければリンゴはその外力で動くと見えるし、人や装置が接触していないのに動くときは、自力で動くと見える。大きさは小さい物でも、それが外力で動くことを考えずに、自力で動くとみなすときは、擬人化が起こる。

ここでは、リンゴに外力が働かない場合を考える。擬人化を説明する例としては、もっと人間に近い大きさのもの、たとえば等身大のロボットとか、案山子とか、鎧兜とか、雪だるまとかが適当だが、筆者は後でニュートン力学の話を持ち出したいので、リンゴにしておきます。まあ、存在感のある大きな立派なリンゴが、目の前一メートルくらいのところにある、と思ってください。

その場合私たちが、自分の手でそれをつかもうとするのではなくて、じっとながめて、そのリンゴがこれからどう動くのか、とか、このリンゴはこれからどう変化していくのか、と考えた瞬間に、リンゴは擬人化される。つまり、リンゴは、私たちの仲間である人間のようなものとみなされ、仲間の行動を追従する集団運動共鳴機構によって脳内で表現される。この場合、リンゴは主語として言語化される。

拝読サイト:夏の恐怖体験

拝読サイト:そもそも鎧とは??

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持てる物の認知

2008年08月06日 | x8私はなぜ言葉が分かるのか

たとえば、机の上にリンゴがある。リンゴを見ながら、擬人化の働き方について考えてみましょう。まず、リンゴのような大きさの物は、手で簡単に動かすことができる。片手で持って移動できる。その物が簡単に人に動かされる、と見なされる場合は、ふつう、その物自体は擬人化されず、むしろそれに触れている人の運動が注目される。リンゴは、その場合、それを持つ人の、持つという運動の目的物とされ、持つという述語の目的語として言語化される。こういう場合のリンゴは、目的語にはなるが主語としては言語化されない(受動態の主語になる場合は特殊な擬人化が起こるが、詳細は省略する)。私たち観察者の脳内では、外力で動かされる物は擬人化されずに、その物を動かす人が(もともと人であるが)擬人化されることで憑依が起こり、その人の運動に共鳴した仮想運動が起こる。観察者は、物を動かす人の内的意図を読み取って、動かされる物の次の動きを予測する。

リンゴのように、手で動かせる手ごろな物体、あるいは道具、のようなものは、それを見たときに、脳内の視覚情報処理の過程で、操作運動の形成回路と連動することが、神経科学の実験で観察されている(二〇〇七年 ブラッドフォード・マホン他『腹側経路においては物体の行為関連特性が物体表現を形成する』)。

拝読サイト:キズに負けず元気なリンゴ!

拝読サイト:鏡に映る像は、本当に左右反転か

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擬人化→集団的認知→言語

2008年08月05日 | x8私はなぜ言葉が分かるのか

Chasseriau_esther

私たちの脳内に作られているこの擬人化システムは、人類に限らず、たぶん、広く群棲霊長類に共通する(擬猿化というべき)認知システムでしょう。人類の場合、擬人化の仕組みによる身体反応は、実際に身体を動かさずに運動信号が脳内を循環する仮想運動‐仮想感覚を使う認知機構となる。これで、認知のたびにいちいち身体を動かさないですむので、ますます判断の効率はよくなった。

擬人化を使うこのシステムは、さらに発展して、(拙稿の見解では)概念を形成し、さらに(ジェスチャーや音声など)記号による表現に結びついて、集団的な認知システムとなり、ついには言語として展開していく。私たちの言語の使い方は、スポーツや職人芸のように習熟していく。幼稚園から小学校にかけて、言語に習熟していく子供たちは、(脳のシミュレーション機能の発達により)身体を動かさずに仮想運動し、口を動かさずに内語で思考し、体内反応をせずに感情を感知できるようになる。

人類において、擬人化システムは言語システムを内包し、憑依システムを内包する高機能の集団的認知システムに発展した。人類の社会も、政治経済体制も、宗教も、テレビも、新聞雑誌も、インターネットゲームも、この集団的な認知システムの上に築かれています。

拝読サイト:8月5日 我らが職人は暑い季節に一体何を作っているのか。。。。

拝読サイト:こわいこと

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他人の意志は自分の感情

2008年08月04日 | x8私はなぜ言葉が分かるのか

この場合、私たちは、自分の体内に発生する感情プロセス(自律神経系、筋肉緊張、体性感覚の変化など)を、自分の感情とは感じないで、観察対象の内部にある内的な駆動力、運動の要因、意欲、意志、意図などとして感じ取る。この擬人化のシステムは、複雑な環境に生きる人類が物事を予測する能力を、実用的な効率にまで高める効果をもたらしている。

擬人化は、観察対象が、人間の場合も人間以外の動物の場合も、それを見たり聞いたり思い出したり想像したりする場合、すぐに起こる。植物や無生物の場合も、それが外力によらずに動くと感じる場合は擬人化される。さらに、言語で表現される抽象概念なども比喩によって擬人化される。特に、観察対象が人間の場合、擬人化はその人に乗り移ってその内心を感じ取る、拙稿で憑依システム(拙稿の造語。4章)と呼ぶ、神経機構に発展している。この憑依機構は、人間どうしがお互いに心を持つことを認め合って、社会行動を作り出す基盤になっている。

拝読サイト:PLUTO 新刊

拝読サイト:PhotoShopで合成された生き物達(/∀・)w 

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欲望の計算回路

2008年08月03日 | x8私はなぜ言葉が分かるのか

Chasseriau_camara

擬人化の仕組みは、(拙稿の見解では)仲間との集団的な運動共鳴の神経システムが拾い上げる観察対象の動きに対応して自分の体内に発生する感情プロセスを感知することで観察対象の変化(行動)を予測する。

この擬人化プロセス全体を図式化すれば、次のようになる。

視覚聴覚による観察対象の感知→集団的運動共鳴の神経機構による観察対象の(実際の、あるいは想像上の)動きの表現→運動共鳴による仮想運動の形成→仮想運動による感情の発生→感情による体内反応の発生→体内反応により発生する体内感覚の知覚→上記体内感覚を観察対象の動きに対応する内的原因として表現→(言語表現に変換:観察対象の動きの原因を、意欲、欲望、意志、意図などに対応する語で表現する)

こうしてプロセス全体を書き出すと、脳内と体内を二重三重に循環するかなり複雑な無意識の神経活動になるが、神経回路網の連携によるこのプロセス全体の計算処理は、ふつう、瞬間的に実行される。

拝読サイト:『日本人の脳に主語はいらない』

拝読サイト:医学: 図譜(イラスト&MRI像)

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