一方、リンゴよりずっと大きいもの、人間のような大きさか、それより大きい物は、手で簡単に動かすことができない。そういうものが動くときは、自力で動くように見える。リンゴの場合については、人が手をかければリンゴはその外力で動くと見えるし、人や装置が接触していないのに動くときは、自力で動くと見える。大きさは小さい物でも、それが外力で動くことを考えずに、自力で動くとみなすときは、擬人化が起こる。
ここでは、リンゴに外力が働かない場合を考える。擬人化を説明する例としては、もっと人間に近い大きさのもの、たとえば等身大のロボットとか、案山子とか、鎧兜とか、雪だるまとかが適当だが、筆者は後でニュートン力学の話を持ち出したいので、リンゴにしておきます。まあ、存在感のある大きな立派なリンゴが、目の前一メートルくらいのところにある、と思ってください。
その場合私たちが、自分の手でそれをつかもうとするのではなくて、じっとながめて、そのリンゴがこれからどう動くのか、とか、このリンゴはこれからどう変化していくのか、と考えた瞬間に、リンゴは擬人化される。つまり、リンゴは、私たちの仲間である人間のようなものとみなされ、仲間の行動を追従する集団運動共鳴機構によって脳内で表現される。この場合、リンゴは主語として言語化される。