ここまでは言語を使わない運動の伝播機構ですが、(拙稿の見解では)人間は言語を使う場合でも基本的にはこの機構を使っている。話し手の脳内で、言語は、その内容に対応する仮想運動(仮想の身体運動、憑依運動、注目運動など)の形成回路を使って形成される。聞き手の脳内で感知された言語は、自動的に対応する身体運動‐感覚受容シミュレーションを呼び出す。そのシミュレーションが、仮想の憑依運動や注目運動などを呼び出す。こうして、言葉に対応する仮想運動が話し手から聞き手へ伝播する。
人間Aが、実際には腕を組んでいない場合に、言葉を使って「腕を組みたい」と言うと、それを聞いた人間Bは自分の腕を組みたくなる、という例です。Aの脳内の仮想運動形成→言語形成→発音→Bの言語聴取→Bの脳内の運動形成→仮想運動→体性感覚フィードバック→感情機構、というルートで運動形成活動が他人に伝播する。話し手が「腕を組みたい」と言葉でいうと、聞き手の脳内で、言葉に対応した特定の(この場合、腕組運動の)身体運動‐感覚受容シミュレーションが呼び出されて、聞き手が腕を組みたい気分になる。歌を聞くと身体が踊りだしてしまうのと同じです。つまり、よくいわれるように、言語の意味を身体で理解する、ということです。
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