ちなみに最近の神経科学における興味深いテーマとして、神経細胞膜電位の脱分極(発火)の時間変化が認知と深い関係にあるらしいという予想(一九九九年 マイケル・デンハム『学習と記憶の動的過程:神経科学からの知見』)が提唱されている。このような予想が正しいとすれば、拙稿のいう集団的運動共鳴が、視覚聴覚信号の処理による他者の運動認知の表現と体性運動感覚信号の処理による自分の運動制御の表現と、それぞれを表現する神経細胞群の発火の時間的空間的干渉あるいは(周波数その他の発火頻度を媒介とする)制御系共鳴を下敷きにしている、と予想したくなります。
あるいは、単に、集団的運動共鳴は通常の運動制御とまったく同じ神経回路が使われているのかもしれない。このあたりの脳内メカニズムをぜひ知りたいと思いますが、現状の脳活動計測技術は、こういうレベルの現象の検知には、精度がまったく足りない。通常の運動制御メカニズムでさえも、神経ネットワークのミクロな作動のレベルで解明されてはいない。したがって、現時点では運動共鳴などさらに高次の機構に関する仮説は検証の仕様がない。ということで、まあ、こんなことを言ってみたところで筆者の個人的楽しみというだけのことです。
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