この機能が、脳のどこの神経回路で、どのような生理的現象として起こるのかは、現在の脳科学ではまだよく分かっていません。たぶん、扁桃体、前部帯状回、前頭葉内側など、辺縁系の神経回路が側頭葉、頂頭葉など運動系の大脳皮質と連携して機能しているらしい、としか分かりません。いずれにせよ、明らかに人間の脳神経回路では、人の命、人の心の動き、自分自身に対する意識、などに関する錯覚の共感が感情回路に強く連結して、強い反応を起こしています。その神経回路の反応は、視線による注目など、決まった表情や声色や動作で表わされるようになり、人間どうし互いに視覚聴覚のみで(テレパシーを使わずに)認識し共鳴できるようになり、人間集団の中で安定し定着します。仲間のその表情や動作を感知して、人間は仲間の内部で起こっているらしいその錯覚とそれに伴う仮想運動と感情を共感できて、それらにはっきりした存在感を感じることができます。
仲間の人間の脳内で感じられている錯覚はその人体の運動となって外部に表現されます。つまり、表情、動作、発声となって、それを観察している人間の目や耳で感知できます。その視覚聴覚の受信信号は、観察者側の脳内で自動的に運動形成回路を共鳴させ、その運動信号は記憶にある共有の錯覚の再生を誘発します。そうして、人間から人間へと共有された錯覚が伝わる仕組みなのでしょう。
拝読ブログ:驚くことばかり
拝読ブログ:だまされる視覚 錯視の楽しみ方