ちなみに、(拙稿の見解では)たとえば身体を移動することが距離の認知になっているなど、身体運動‐感覚受容の脳内シミュレーション機構が、私たちの空間知覚のもとになっている。ここから、この身体的空間知覚が科学の認知する空間と時間からなる物理的世界に関する脳内表現の基本的な構成要素になっている、といえる。
以下、拙稿では、私たちが感知する世界の存在は、このような身体運動‐感覚受容の仮想運動シミュレーションによる表現のネットワークとして脳内に格納されている、とします。このようなシミュレーション記憶は、身体運動に伴う体性感覚や感情活動および視覚聴覚など五感変化の記憶と連結して想起される。こうして私たちが感じとるこの世界のありさまは、(拙稿の見解では)これが現実にこうだから、というよりも、私たちの身体が世界をこう感じることでじょうずに運動を実行するようにできているから、こうなっている。