その考え方に自信を得た人々は、言葉を洗練させ雄弁に語り合って、宗教を深め、哲学を確立し、正しい行いと間違った行いとをはっきりと区別しました。それからその正義にもとづいて子供達を教育し、また法律を作りました。同時に偉大な神が創造した偉大なこの宇宙を詳しく知るために自然科学を研究したのです。
特に早くから言葉を精緻に洗練させて実用的な法律、制度や近代科学を作り上げたのはヨーロッパの人々です。民主主義を発明し、広場での堂々とした議論を好んだ古代ギリシア人たちから始まる伝統でしょうか? ヨーロッパの知識人はギリシア哲学の古典を学び、理性に基礎づけられた自分たちの言葉に自信を深めていきました。その磨かれた言葉や論理を万能と思い、それですべてが解明できると思っていたようです。
正しく言葉を使って知識を深め、正しい議論を進め、考え方を洗練させていけば、人間はだれもが全知全能の神に近づくことができる。何事も議論を尽くせば正しい結論に到達できる。言葉を使いこなして真理を追求して行けば、必ずこの世のすべては解明できる。どんな野蛮人でも外国人でも、人間ならばだれもが、言葉で文明に開化できる。人間はどこまでも進歩し、知識を高め文明を発展させ、ますます聡明になり幸せになっていく、と思っていたのでしょう。
その理想に燃えて、西洋の人々は言葉を洗練させ、はっきりした言葉の使い方を法律や制度や慣習として社会に浸透させました。言葉を徹底的に使いこなすことで哲学を磨き、キリスト教の神学を発展させました。
哲学で理論武装した力強い言葉は古い呪術的なものを破壊し、新しい力強いものを作る能力がありました。それが正義を守る法律を作り、真理を表す科学を作り、生活に役立つ産業を作って世界中に広まり、アジア、アフリカ、アメリカ、と西洋文明の植民地を拡大していったのです。