他の動物はそうなっていない。チンパンジーなどは、ごく断片的に、この機能を持つようですが、人間との差は大きい。観察すればすぐ分かる。チンパンジーに、「来年の計画は?」と聞く人はいないでしょう。
人間だけがなぜ、目的をもって長期的な自分の人生を計画できるのか? そして、なぜそうするのでしょうか?
筆者が若いころ感動した有名な小説の筋です。ある日、老漁師はいつものように小船に乗り、一人で海に出る。巨大なカジキマグロと大格闘の末、釣り上げるけれども、獲物は鮫に食われてしまう。骨だけになった獲物を持って陸に戻った老人は、それでも幸せそうに見える(一九五二年 アーネスト・ヘミングウェイ『老人と海』)。この一日の老人の大格闘は、次の日からの彼の人生には、良くも悪くも関係しそうにありません。しかし、私たち読者は、老人の行動の美しさに感動する。
人間はなぜ、「今のこのときだけ、今日一日だけ、幸せならそれで満足」と考えられないのでしょうか? それは聖人君子のような、美しすぎる生き方かもしれない。しかし凡人の私たちも、ちらっとは、それが分かるような気になることもある。 今食べたい食事と、今すぐ交尾したい異性のことだけを考えている動物は、聖なる精神を生きているようにも見える。しかし、「動物はばかだから、それしか考えられない」と言ってしまえば、それもそのとおりでしょう。
拝読サイト:『チンパンジーの赤ちゃん』
拝読サイト:ヘミングウェイ・カップ