さて、この手の生き方理論で、きわめつけは、「この大きな権威にひれ伏して身をゆだねることでしか、君たちは幸福になれない」というものです。こういう言葉に抵抗できる人は少ない。
ちなみに、権威にひれ伏す、という行動は人間だけの話でなく、哺乳類の古い神経機構の働きで起こるようです。そういう神経系を持った者が多くの子孫を残せたからでしょうね。群行動をする哺乳類の多くの種では、社会的地位の高い個体に出会った低位の個体は、子犬のように、頭を下げたり高音で鳴いて挨拶したりするという行動の観察が報告されています。そのとき、上位の個体のほうは頭をそらしたり低い声で応答したりするそうです。なんだか、会社のエレベーターで上役と会ったときみたいですね。確かに、偉い人にはなるべく高い声で挨拶したほうが覚えがめでたくなりそうな感じがします。筆者も現役の頃、もう少し頭を低くして声を高く出していればもう少しは出世できただろうに、と悔やまれます。
学校の先生とかインテリっぽい大人は「権威にへつらうな」と教えるし、もっと偉そうな宗教家は「ひたすら祈りなさい」とか言っています。どっちが正しいのか。いずれにしろ、人間は権威に盲従したくなるような神経回路を持っているようです。その証拠に、それに働きかける理論は、社会的権威、あるいは宗教的権威など、立派な錯覚を作り出して成功しています。