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『パルジファル』要約

『パルジファル』より

前史

 キリストが最後の晩餐で用い、また十字架にかけられた彼の傷からほとばしる血を受けた「聖なる盃」は、その傷を作った「聖なる槍」とともにキリスト教の聖なる遺物である。ティトゥレルがキリスト教の敵と戦うために組織した騎士団が苦難に陥ったおり、神から遣わされた天使たちによって、その「聖盃騎士団」にこの二つの聖遺物がもたらされた。この騎士団の2代目の王アンフォルタスは騎士団の敵、魔法使いクリングゾールを討つため出陣した。クリングゾールは聖盃騎士団に加わることを望んだことがあったが、行動の不純さを見破られて拒否され、以後、魔法の城を築いて、魅惑的な花の乙女たちを使って聖盃騎士たちを堕落させることで復讐を遂げつつあった。アンフォルタスは出陣の際、武器として使ってはならぬ聖なる槍を携えて行ったが、情欲に目がくらんで、クリングゾールの操る美女クンドリーに誘惑され、槍を失い、あまつさえ、その槍で脇腹に重傷を負った。以来、閉じようとしない、その傷の痛みに呻吟しているアンフォルタスの願いは、聖盃の神託によって告げられた「共苦によって智を得たる純粋なる愚者」(である救済者)の出現である。

第1幕

 聖盃の城塞の領域。明け方で、近くに森の湖がある。

 二人の小姓と野宿した、聖盃の騎士グルネマンツは彼らを起こし、朝の祈りを捧げ、アンフォルタスの朝の水浴みを助けるよう求める。彼らが病苦に苦しむ聖盃王アンフォルタスの到着を待っていると、突如として、荒々しい騎馬の女が現れる。それは、聖盃の騎士にも奉仕する奇妙で、不思議なクンドリーだと分かるが、彼女は遠方のアラビアからアンフォルタスのための薬を持ち帰ったのだった。一 激しい苦痛にさいなまれた夜が明けると、アンフォルタスは水浴によって苦痛を和らげるべく、湖へ運ばれてくる。グルネマンツはクンドリーのもたらした薬の小瓶を王に渡す。アンフォルタスは礼を言うが、クンドリーは激しくそれを拒む。小姓たちは彼女を好まない:あれは異教の女で魔女だと嘲る。彼らが、クンドリーが失われた聖なる槍を取り戻しに行けばよいとなじると、グルネマンツは彼女を弁護し、知っている事を話す:聖盃の神託によれば、槍を取り戻し、それでアンフォルタスを癒せるのは「共苦によって智を得たる純粋なる愚者」だけだ。傷を閉ざせるのは、それを開いた槍だけだから。一湖の方から騒ぎが聞こえてくる。騎士たちが、一羽の白鳥を矢で射落とした少年を引きたててくる。彼がパルジファルで、ヘルツェライデを母に、戦死した騎士ガームレトを父に持つ。彼は母の庇護のもと、森の中で外界との接触なしに育つ。彼は自身では自分の名前も、どこから来たかも、父が誰であるかも知らない。しかし、クンドリーは彼の物語を知っており、母が死んだことを物語る。グルネマンツはアンフォルタスの見た幻の神託で告げられた「純粋なる愚者」をついに見つけたと信じ、彼を聖盃城へ連れて行く。その間にクンドリーは眠りに入る。一城ではアンフォルタス、ティトゥレルと騎士たちが集まり、聖盃を開帳しようとしている。聖盃を目にすることによっても、自分の苦痛は暫くしか和らがないことをアンフォルタスは嘆く。ティトゥレルと騎士たちが彼を促して、聖盃を厨子から出させる。救世主の血を容れた聖盃は不思議な光を放って輝く。騎士たちはそれから、パンとワインを摂り、力を与えられて神殿を出て行く。その一部始終を見ていたパルジファルは自分の見たものについて何も言うことができない。彼の本性を見誤ったと思ったグルネマンツによって追い出されるが、その後、高みから「共苦によって智を得たる純粋なる愚者」という神託の言葉が聖盃の鐘の響きと共に繰り返されて、幕が閉じる。

第2幕

 クリングソールの魔法の城の内部。

 クリングソールは魔法の鏡で、彼の城と魔法の園へ近付くパルジファルを見ている。彼はクンドリーを道具にして、この愚かな若者の純潔さを奪おうと企んでいる。ここでクンドリーの役柄が明らかになる:彼女はかつて十字架にかけられるために歩んでいたイエスを嘲ったために、永遠のさすらいを続ける罰を受け、「世界から世界へ」と転生を重ねながら、救世主を探し、彼から最終的にその罪からの救済を得ようとしている。死を憧れながら彼女はそれ以来、聖盃の騎士たちに償いのため自発的に仕えているが、いつもクリングゾールは彼女を呪縛し、誘惑のための、意志のない。)らしい道具として役立ててしまう。かつてアンフォルタスを誘惑した彼女が今度はパルジファルを誘惑し、無力化せねばならない。彼女の救いは、ある男が彼女の誘惑に負けなかったときにだけ得られるので、いやいやながらクリングソールの命令に従う。-パルジファルがクリングソールの魔法の園の花の乙女たちの無邪気な誘惑を振り切ろうとしていたとき、クンドリーが彼の名を呼ぶ。彼は彼女が両親の悲しい運命を物語るのに緊張して耳を傾けて、深く心を揺さぶられる。クンドリーは慰めようと、しかし、実は彼を愛のなかに引き込もうと彼を抱きしめる。しかし、長い接吻の間に彼は電撃的にアンフォルタスの苦しみの原因と彼自身の使命を認識し、「世界を透視できた」のだった。彼はクンドリーを押しのけるが、その代わりに救済を約束する。彼に愛を拒まれたクンドリーが怒って叫ぶと、クリングソールが現れて聖なる槍をパルジファルに投げつける。しかし槍はパルジファルの頭上に止まり、彼はそれをつかみ、十字のしるしに振ると、クリングゾールとともに彼の魔法の園は瓦解する。くずおれたクンドリーが目を上げてパルジファルを見ると、彼は早足に去って行きながら彼女に「お前は知っていよう、どこで俺に再会できるかを!」と言う。

第3幕

 聖盃の城塞の領域。

 オーケストラの前奏は聖盃城へ戻って行こうと努めるパルジファルの惑いの旅を描写する。一長い歳月が過ぎ、グルネマンツはいまや隠者となって森に住み、茂みの中で深い眠りの中にあるクンドリーを見つける。彼に起こされたクンドリーは以前とはまったく変わり、穏やかで、人助けの心構えがあり、無口になっている。そこへ黒い武装に身を固めた騎士が現れる。グルネマンツは、今日が聖金曜日であると言って、甲冑を脱ぐよう求める。騎士がそれに応じたあと、彼が聖なる槍を携えて聖盃城への道をたどることのできたパルジファルだと解って、グルネマンツは大喜びし、彼に聖盃の騎士団の衰えを告げる:アンフォルタスは自分にとって救済となる死を得ようと、命を施す聖盃の開帳を行っていなかった。そのため彼の父ティトゥレルは既に死に、その葬儀のため、アンフォルタスは聖盃をこれを最後に開くつもりでいる。-それを聞いてパルジファルは自責の念に苛まれて倒れそうになる。しかし、グルネマンツは彼を祝福し、香油を塗って新しい聖盃王にする。パルジファルは「最初の務め」としてクンドリーに洗礼を施す。それから、陽光に輝く牧歌的な自然の眺めにパルジファルとグルネマンツは感嘆して見入る。やがて正午を告げる鐘の響きが聖盃城から聞こえると三人は城への道を歩き始める。城では騎士たちがティトゥレルの亡骸に従って集まっており、アンフォルタスは自分の死を早めるために聖盃を開帳しなかったことが父の死をもたらしたと言って嘆くが、予定してあった開帳をあらためて拒んで、癒えることのない傷の苦痛からの救いを求め、騎士たちに自分を殺せ、そうすれば聖盃は自ずと輝くだろうと言う。そこにグルネマンツとクンドリーを従えたパルジファルが現れて聖なる槍で王の傷を塞ぐ。新しい聖盃王になったパルジファルは聖盃を開帳し、高みからは神の恩寵のしるしとして白鳩が彼の頭上に舞い下りくる。アンフォルタスとグルネマンツが新王に臣従を誓い、クンドリーはついにその呪いから救済され、こと切れてくずおれる。
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