円安が進んでいるけど、良くない面がたくさんと出ているとの指摘が増えている。円安と経済についての考え方を変える必要があることを示しているように見える。
そこで、少し見てみた。産経の「円安急落、マイナス面顕在化 企業倒産も増加」との記事が簡潔だった。
★《「円安は日本経済にとってマイナスではないか」こうした議論が白熱している。これまでは、円安で海外における価格競争力が高まれば、輸出が増え企業業績が改善されるとみられてきた。そのもうけを賃金に回し、消費と投資が活発になる。ただ、海外生産が進む現状では輸出が増えず、国内景気はなかなか浮上しない。企業収益の改善は、輸入代金の円換算の受取額が膨らんだ輸出企業など一部に偏在している。「経済全体を考えた場合、偏った利益を還元する方法を模索すべき」との声も上がる。》
そんな日本の状況をいくつか記録。
ところで、今日は議会の本会議での質疑があるし、発行している「新しい風ニュース」(紙版は8日月曜日朝刊折込、ネット=ブログには7日掲載)の原稿の調整を早朝よりやっていたので、ウォーキングはせず(前日からの予定)、パソコンと紙に向き合っていた。
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●円安急落、マイナス面顕在化 企業倒産も増加
産経 2014.12.5
「円安は日本経済にとってマイナスではないか」
1ドル=120円台がみえてきた最近になって、こうした議論が白熱している。
日銀の佐藤健裕審議委員は4日、高知市での講演で、「製造業の海外生産シフトの動きはペースを鈍化させつつもなお続く。一段の円安が輸出の回復を後押しするかどうかは不透明感がある」と発言した。
これまでは、円安で海外における価格競争力が高まれば、輸出が増え企業業績が改善されるとみられてきた。そのもうけを賃金に回し、消費と投資が活発になることで日本経済が回復する-とのシナリオで、政府は円安を容認してきた。
ただ、海外生産が進む現状では輸出が増えず、国内景気はなかなか浮上しない。円安による輸入原材料のコストばかりが上がりはじめ、主に国内で活動する中小企業の収益が圧迫されてきたというのが実情だ。
4日発表の帝国データバンクの「円安関連倒産」の動向調査によると、11月は42件にのぼり、調査を始めた昨年1月から過去最多の倒産件数を更新した。同社は、「年明けにさらに増えるのではないか」(情報部の内藤修氏)と予想する。
一方で、円安進行に企業業績の改善を生み出すプラス効果がないわけではない。SMBC日興証券によると、「東証1部上場企業全体の平成26年度の営業利益は、1円の円安で0・5%の増益効果を生む」(太田佳代子クオンツアナリスト)。
ただ、企業収益の改善は、輸入代金の円換算の受取額が膨らんだ輸出企業など一部に偏在しているのも事実。「経済全体を考えた場合、偏った利益を還元する方法を模索すべき」(明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミスト)との声も上がる。(飯田耕司)
●円安、7年ぶり120円台 追加緩和や強いドル背景に
日経 2014/12/5
4日のニューヨーク市場で円相場が一時1ドル=120円25銭まで下落し、2007年7月以来7年4カ月ぶりの円安水準を記録した。日銀が10月末に追加金融緩和に踏み切って以降、10円強の円安が進んだ。日本の巨額な貿易赤字や米景気回復によるドル買いなど、円売り圧力は構造的に強い。輸出企業にとっては採算が改善するものの、家計や中小企業には食品や資材など輸入品の値上げを懸念する声もある。
4日の外為市場は1ドル=120円目前で足踏みが続いたが、同日夜の欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の記者会見中に円売りが出て120円台前半をつけた。ドラギ総裁の量的緩和を巡る発言が市場の想定内にとどまり、相場がユーロ高円安となって引きずられるようにして対ドルでも円安が進んだ。
円相場は今年夏まで102~103円台で推移してきたが、8月以降は下落基調が強まっている。円売り圧力が強まった要因は主に3つある。1つは日銀の大規模緩和だ。10月末の電撃的な追加緩和でその後の約1カ月でさらに10円も円安が進んだ。原油安によって物価上昇率が鈍っており、市場にはさらなる追加緩和観測もくすぶる。
2つ目は日本が抱える巨額の貿易赤字だ。14年1~10月の日本の貿易収支は11兆円を超す赤字で過去最悪の水準。商品や原材料を輸入する際に円を売って外貨を調達する必要があり、貿易赤字は根強い円安要因になる。
3つ目の要因は米国の景気回復でドル買いが強まっていることだ。米国は10月に量的金融緩和を終了し、来年半ばにも事実上のゼロ金利を解除して利上げに踏み切るともみられている。投資マネーは金利の上昇が見込めるドルで運用しようと、円を売ってドルを買う動きを強めている。
円安になると企業にとっては輸出品や海外事業の円換算での収益が膨らむ。多くの輸出企業の想定レートは1ドル=100~105円。120円の水準が続けば、トヨタ自動車など主要20社の15年3月期の営業利益は約8000億円の上振れ要因となる。大和証券は120円なら上場企業の今年度の経常増益率は13%(従来予想は8%)に拡大すると予測する。
円安による輸入コストの上昇リスクは、原油価格の下落が緩和している。ガソリン価格は20週続けて前の週を下回る。SMBC日興証券によると、ドバイ原油が1バレル65ドルで円相場が1ドル=118円なら名目国内総生産は1.8%増えるという。
中小企業や内需型の非製造業には円安の恩恵は小さい。原油安でも部品などの輸入コストは膨らむためだ。大和総研によると、13年1月以降の1年半で円安によって企業の経常利益は約3兆円押し上げられたが、うち2兆円は大企業製造業で非製造業は0.8兆円、中小製造業も0.2兆円どまりだ。製造業が生産拠点を海外に移しており、輸出そのものも伸びにくくなっている。
家計にとって負担増となるリスクもある。食用油は15年1月から大手3社が値上げする。ニチレイフーズは来年2月から家庭用の冷凍食品の出荷価格を上げると表明。内閣府によると、消費者心理の指数は物価高で10月まで3カ月続けて前月より悪化した。企業の収益増が賃上げや雇用拡大につながって消費を押し上げる「円安の好循環」が働くかが重要になる。
●東京株終値、5日続伸166円高 7年4カ月ぶり高値、一時1万7900円台に
産経 2014.12.4
4日の東京株式市場は5営業日続けて続伸した。日経平均株価の終値は、前日比166円78銭高の1万7887円21銭。ザラ場の高値とともに終値でも4営業日続けて年初来高値を更新。2007年7月24日以来、7年4カ月ぶりの高値水準となった。
終日、ほとんどの時間帯で100円を超える上げ幅となった。高値は午前につけた192円高の1万7912円。
前日の米国株高に続き、1ドル=120円に迫る円安ドル高の加速がプラス要因となり、この日も買いが先行した。衆院選の序盤情勢として与党優勢が報じられたことも、プラス要因となった。
東証株価指数(TOPIX)の終値は、前日比10.85ポイント高の1440.60。東証1部銘柄のうち65%近い1184が値上がり。
●東京外為:1ドル=120円が目前 円安はどこまで…
毎日新聞 2014年12月04日
一時120円台…7年4カ月ぶり
4日の東京外国為替市場は、米国経済の先行きへの期待感から円売り・ドル買いが優勢となり、円相場は一時、1ドル=119円90銭台後半まで下落し、1ドル=120円が目前に迫った。2007年7月以来、約7年4カ月ぶりの円安水準。4日の東京株式市場は、円安で業績改善が見込める輸出関連銘柄を中心に買いが広がり、日経平均株価の終値は前日比166円78銭高の1万7887円21銭と約7年4カ月ぶりの高値をつけた。【鈴木一也】
急ピッチの円安について、市場では「120円を超えてさらに円安が進む」との見方がある一方、行き過ぎた円安による輸入価格上昇などのデメリットを懸念する声も根強い。
3日発表された米国の経済指標が市場の予想を上回り、同日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は前日比33.07ドル高の1万7912.62ドルと史上最高値を更新。5日に発表される米雇用統計も堅調な内容になるとの期待が強く、市場では「米国経済の回復を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に利上げする」との観測が広がり、ドル買い・円売りが進んだ。
また、国内では、主要メディアが4日、衆院選の世論調査で「自民党が300議席を超す勢い」と報じ、円売りの要因となっている日銀の大規模な金融緩和が維持されるとの見通しが広がって、円安に拍車がかかった。4日午後5時時点の円相場は前日比66銭円安・ドル高の1ドル=119円88〜90銭。
円相場の先行きについて、大和証券の石月幸雄・為替シニアストラテジストは「円安に歯止めがかからない状況で、07年6月以来の1ドル=124円に迫る可能性がある」と予測する。一方、みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは「10月末から10円以上も円安が進んでおり、円の下落ペースは一度緩むのではないか」とみている。
●コラム:「歴史的円安」を招く2つの増幅装置=唐鎌大輔氏
ロイター 2014年 12月 1日
13:23 JST 記事を印刷する | ブックマーク | 1ページに表示 [-] 文字サイズ [+]
12月1日、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は、現在の円安局面は巨大な貿易赤字と大幅なマイナス実質金利という過去にはなかった増幅要因を抱えていると指摘。
[東京 1日] - 8月下旬に再開した円安の流れは日銀追加緩和や公的年金運用改革、増税先送り解散といった巨大イベントに背中を押されて、勢いを増している。
大方の市場予想を超える円安加速に対し、財界から不安の声を耳にすることも珍しくなくなった。円安はどこで止まるのか、どのくらいのスピードで続くのか――。フェアバリューのない為替の世界では、過去の経験則から「当たり」をつけて議論することが多い。だが、現在の円安局面は過去とは決定的に異なる要素を抱えており、経験則から水準を予想することが困難というのが偽らざる本音である。
具体的に、何が違うのか。それは、巨大な貿易赤字と大幅なマイナス実質金利である。
まず、一点目について説明すると、円安基調が定着するためには「日本人の円売り」が必要との筆者のかねてからの主張を思い起こしていただきたい(2012年8月14日掲載コラム「日本人の円売りは出てくるか」参照)(記事はこちら)。
円相場の歴史は基本的に「円高の歴史」であったが、それでも過去5回ほど円安局面があった(あくまで筆者のラフな区切りだが、1978―84年頃、1988―90年頃、1995―98年頃、2000―02年頃、2005―07年頃を想定)。このうち、米同時多発攻撃やITバブル崩壊などに乗じて「有事のドル買い」が幅を利かせた2000年代初頭を除けば、生命保険会社など投資家を中心とした「日本人の円売り」が円安局面を支えてきた印象が強かった。
前回の円安局面である2005―07年ではミセス・ワタナベと称される個人投資家の円売り・外貨買いが注目を集めたことも記憶に新しい。莫大な経常黒字を抱え、株式は(少なくともアベノミクス以前は)アンダーウェイトされることが多く、国債に至っては9割が国内で消化される円相場の構造を踏まえれば、「売れる円」は基本的に日本国内に集中しており、だからこそ基調的な円安には「日本人の円売り」が必要とされてきたのだと筆者は考えている。
今回は変動相場制移行後から数えて「6回目の円安局面」という位置付けであり、過去の例に漏れず「日本人の円売り」が寄与しているものと考えられる。だが、その日本人には投資家に限らず貿易赤字を背景とする実需(輸入企業)も含まれている点が過去とは決定的に異なる。
続く...
●コラム:アベノミクス成功を織り込む「ドル円」の上値余地=高島修氏
ロイター 2014年 11月 28日
11月28日、シティグループ証券・チーフFXストラテジストの高島修氏は、年内に消費者物価ベースの購買力平価水準である125円前後までドル高円安が進んでもおかしくない状況だと分析。
[東京 28日] - 海外投資家の間では、安倍首相が決めた消費増税先送り解散について、2005年の小泉首相(当時)による郵政解散のような熱狂を期待する向きもある。だが、各種世論調査を見る限り、日本国民は総じて増税延期には賛意を示しつつも、今回の解散・総選挙に大義はないと考えているようで、9年前のような熱気は感じられない。
一方、経済面では実質国内総生産(GDP)が2四半期連続でマイナス成長となり、形式的にはリセッションに陥ったことから、アベノミクスへの懐疑論が国内外で台頭している。だが、そうした中でドル円相場は120円に迫るドル高円安となっている。
強まるアベノミクスへの懐疑論に対して、このドル高円安はむしろ為替市場がアベノミクスの成功を織り込む動きを見せていることを暗示している。なお、アベノミクスの成功の定義にはいろいろあろうが、ここではひとまずデフレ克服と定義したい。
<レーガノミクスとの類似性>
約1年前にもこの場で議論したが、まず指摘したいのが、アベノミクスとレーガノミクスとの類似性(と相違点)である。安倍首相が最終的に目指しているものは、政策ビジョンを示した著書「新しい国へ」でも明記されている通り、経済の回復ではなく、強い安全保障の確立である。経済回復、デフレ克服はアベノミクスの中間目標に過ぎない。
この点は1980年代の米国におけるレーガノミクスとの重要な共通点である。当時、米国はソ連との東西冷戦、軍拡競争に勝利するという安全保障上の課題を持っていたが、それを達成するには経済が弱く、特にインフレの克服が喫緊の課題となっていた。そこで、レーガン大統領(当時)は自ら強い米国、強いドルの復活を掲げる傍ら、金融政策に関しては、ボルカー議長(当時)率いる米連邦準備理事会(FRB)の超金融引き締め策を黙認した。
ボルカー氏は1971年のニクソンショック(金ドル交換停止)を指揮するなど、米通貨政策のトップを務めた経歴を持つ人物である。このボルカー議長の下での超金融引締め策は事実上のドル高政策であり、ドル円相場は当時250円前後に位置していた消費者物価ベースの購買力平価(73年基準)を超えてドル高円安が進んだ。その結果、米国はインフレという慢性疾患を克服し、経済構造改革も達成。東西冷戦にも打ち勝つことができた。
ドル円はその後、米国の経済政策の焦点がインフレ克服から経常赤字縮小に移り、1985年にプラザ合意がなされたこともあって、95年まで急激なドル安円高を経験することになる。80年代後半以降は、当時200円前後に位置していた生産者物価ベースの購買力平価が今日まで上限(レジスタンス)となり、約30年間にわたって、ドル高円安の行く手を阻んできた。
<購買力平価で見たアベノミクスの評価>
・・・
あたかも当時、レーガノミクスが消費者物価ベースの購買力に達するほどのドル高によってインフレを克服したのと同じように、今日のアベノミクスがその購買力平価に達する円安によってデフレという「慢性疾患」(11月5日黒田総裁講演で使われた単語)を克服しようとしているように見える。
奇しくも、アベノミクスのキーマンである日銀の黒田総裁は、財務省で事実上の日本の通貨政策のトップである財務官を経験しており、レーガノミクスのキーマンであったボルカー氏と非常によく似た経歴の持ち主である。
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