Life in America ~JAPAN編

I love Jazz, fine cuisine, good wine

役割分担

2007-11-13 02:39:57 | アメリカ生活雑感
ついこの間までは想像だにしていなかった「家を買う」という一大イベントの中で、面白い出来事や発見がいろいろあった。

こんなにことがスムーズに運んだ一番の理由は、ふたりの得意分野や性格・気質がうまく“役割分担”にはまったことにつきる。
そして第2は、Pちゃんがいわゆる会社員でなく、かつ今は比較的自分で時間をやりくりできやすい状態にあったこと。

転勤や引っ越しを何度も経験している私は自称“家探しのプロ”。いい家探しの第一条件は頼りになるプロ(不動産屋の担当者)を嗅ぎ分けることと、条件の優先順位を明確にして伝えることにつきる。あれもこれもとこっちが揺れてばかりいると相手も揺れてしまう。そんな意味でも、今回Josieと出会ったことも大決断の助けとなった。

“買う”方向で考え始めたときまずインターネットで各社に情報提供依頼メールを送ったところ、最初に返事が来たのが彼女だった。下見のアポイントの確認電話を受けたときの第一印象は「プロ」。変にうわついたり客にへつらったりすることなく、一歩間違えれば失礼なくらい堂々としているところにむしろ安心感&好印象を受けた。実際に会うと、またこれがそのままの印象。いろいろと迷ったりとんちんかんな質問を浴びせる私たちに辛抱強くつきあってくれた態度もありがたかった。わからないことははっきりとわからないと答え、その日のうちにちゃんと答えをメールしてくれた。無作為にリストを送りつけるのではなく、私が伝えた条件にそぐわないものは事前にきっちりと除外してくれ、いまいちな物件は「オススメしません」ときっぱり言ってくれ、いらないチェックの手間を省いてくれたのも助かった。

私は彼女を見込み、自分たちが本気で家を買おうとしていること、しかも急いでいることを伝え、彼女をとりこんだ。こちらが本気で信じていることを伝えると一気にことが運びやすくなるからだ。
彼女は地元に暮らし、ふたりの子育て中でもある。
「売却するとき売りやすい立地は?」「このあたりで人気の学校区は?」「このエリアにはどんな人たちが住んでいるのか?」という私たちの知りえなかったローカルな情報もたっぷりと教えてくれた。これは本当に参考にった。一生住むわけではないので、次の行動に移りやすい物件を探すことが私たちには大切だった。

家を決めてから、私は何度となく時間を替えて現地を見に行った。昼間の様子、交通量、ご近所の家族構成・・・彼女の言ったとおりのいろんなものが見えてきた。ちょうどスクールバスが学校から子どもたちを送ってきた。降りてきた子どもたちは、白人、黒人、ヒスパニックとさまざま。これを見てこの街に心地よく住めることも確信できた。

そして、私が物件を絞り込んでいる間、Pちゃんは住宅ローン&契約までのペーパーワークについて猛勉強。
少しでも安い金利の銀行を検索したり金利が安くなる条件を模索したりと、毎日とにかく調べまくっている。面倒くさがりやの私には到底できない作業だ。
余談だが、アメリカでは個人の信用度は全て“クレジット・スコア”で測られる。クレジット決済で滞納をしたり、短期間のうちに多くの金融機関が個人のスコアを検索したりすると一気にこのポイントが落ち、つまりは借用度(金利優遇)も落ちていくしくみになっている。
幸いPちゃんのクレジットヒストリーには何も問題はなかったのと、初めての不動産購入という制度を利用して特別金利優遇を受けることができたが、これも彼の執念のたまもの。ひとつの目的に向かって突き進むこの人の執念と情熱はものすごい。これってフィジシスト特有の性質なのか、それとも学者一般の性質なのだろうか・・。
ともあれ、普段はうっとうしいとさえ思うこともあるこの“執念深さ”や“用心深さ”が今回は見事にはまり、なにひとつ不足のない完璧な運びとなった。

でもこんなPちゃんも、時々ちょっとしたおバカぶりを発揮して笑わせてくれた。
売買価格の交渉の最中、Josieが「私はあくまで仲介者だから、買い手の個人情報と同じく売り手の情報は何もあなたたちに教えられません」とまじめに言ったのを受けて、
「わかりました。・・・ところで、彼(売り手)は離婚しそうですかか?」(もちろんジョーク)
これには思わず爆笑。すかさずクールに「No」と答えたJosieのギャグセンスにもうなった。

Pちゃんの弱点は交渉ごとができないこと。
「だいたい、家の価格を値切っていいの?」なんて言うくらいの世間知らず。私がちょっと思い切った値切り価格をJosieに伝えると、びっくりしてまるで私のことを極悪非道人かのように見る。
「(売主が)大金持ちで投資目的で物件を売っているんだったらいいけれど、もしもメキシカンのイミグラント(移民)で支払えなくなってしぶしぶ(家を)売っているとしたら(値切ったら)かわいそう・・・」
これには私も目がテン。
「頼むからアンタ黙っててくんない?これはあくまで交渉の第一段階であって私はそれなりの理由があってこの価格を提示しているんだから、かわいそうもへったくれもないねん!」
だいたい、売主の状況によって売買価格が左右されるという考え方のほうが間違ってるやんけ!
Josieも「何もあなたがSorryということはないわよ」と助け舟を出してくれる。彼女にあほな会話を聞かれたことが恥ずかしい。

買主と売主の希望価格がまとまったら、そこで価格はFix。間でそのとりまとめをしてくれるのがJosie(不動産会社)の役割。あとは、お互いのアトニー(弁護士)を通して細かい契約~引渡し作業が進んでいくことになる。最後まで売主と買主が顔を合わせることはまずないのだそうだ。

家に帰ってPちゃんはつくづくこう言った。
「なんで仲介会社が必要なのかが今、やっとわかったよ・・」
社会の波にもまれたことのないピュアなPちゃんと、今や社会の垢まみれ、すっかりダーティーになってしまった私の役割分担は今のところはうまくいっているようだ。
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