shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

モノラルのブラジル盤で聴く「RAM」

2019-03-21 | Paul McCartney
 コレクターにとって探し物のないレコード・ライフほどつまらないものはない。もちろん欲しい盤を手に入れるために昼夜を問わず海外オークションのサイトをこまめにチェックしているわけだが、かといってウォント・リストの最後の1枚を手に入れてしまったら、その後はきっと目標を失ってしまって空虚な日々が待っているに違いない。未聴の盤とのスリリングな出会いこそがコレクターの生きがいなのだ。
 かく言う私も去年の夏頃、ビートルズ各国盤の目ぼしいところはほぼ手に入れてしまい、世界の国一覧表を眺めながら “これから俺は一体何を楽しみに生きていったらエエんや???(←大袈裟な...)” と途方に暮れかけていたのだが、そんな時ある考えが閃いた。そうそう、ビートルズにはまだソロ作品が山のようにあるではないか! よっしゃ、次はビートルズ・メンバーのソロ作品を各国盤で集めてやろう… こう考えると俄然元気が出てきた。
 最初のターゲットはポールの最高傑作にして我が “無人島ディスク” 候補筆頭の「ラム」である。その時点で持っていた「ラム」はUKオリジナル盤だけだったので、ビートルズ各国盤蒐集で培った知識を駆使して音が良さそうな国の「ラム」を軒並みゲットしていったのだが、一つだけ心に引っ掛かっていたのが「ラム」のモノラル盤の存在だった。
 「ラム」のモノラル・ミックスはもちろん2012年のスーパー・デラックス・エディションに入っていた CDで聴けるが、あれは最新のテクノロジーでリマスターされたハイテク・モノラル・サウンドであり、アナログ・レコードならではの古き良きモノラル・サウンドとは似て非なるもの。モノラル大好き人間の私としては是非ともヴィンテージなモノラルの轟音で「ラム」を堪能したい。
 ということで「ラム」のリリース当時に出たモノラル盤LPを探したところ、2種類しか存在しないことが判明した。すなわちプロモ・オンリーの US盤とブラジル盤である。ビートルズのコレクターとしては当然前者の方に魅かれるが、一説によるとこの USプロモ盤はアメリカ国内の AMラジオステーション用に作られたものでプレス枚数は100枚以下というから、コレはもう金パロステレオ盤よりも稀少なスーパー・ウルトラ・コレクターズ・アイテムである。今現在も1枚だけ Discogsに出ているが、お値段は何と驚愕の166万円… 宝くじでも当たらない限り買える金額ではない。
 ということで私の興味関心はもう一方のブラジル盤に向かったのであるが、そもそも私のブラジル盤に対する心象はあまり良くない。10年ほど前にポルトガル語入りのジャケットが珍しいという理由だけで衝動買いした「ア・ハード・デイズ・ナイト」のブラジル盤がピッチの狂った変な音で、それ以降ブラジル盤は1枚も買っていないのだ。だから今回も“「ラム」のモノラル盤は聴いてみたいけど、ブラジルはちょっとなぁ...” という感じで二の足を踏んだのだ。
 しかしよくよく考えれば私のガラード401にはピッチ・コントロール機能が付いており、万が一ピッチが変やったら調節したらエエだけの話。それに USプロモ盤の「ラム」が買えない以上、ブラジル盤は私にとって「ラム」を大好きなモノラル・サウンドで聴ける唯一の選択肢なのだ。イジイジと迷っている場合ではない。
 ということでブラジル盤を買うぞと心を決めていつものようにネット検索すると、eBay に1枚だけ VG+の盤が $62で出ていたので9掛けの $55でオファーしたところ、めでたく承認されて $25というブラジルにしては安い送料(←ふつう$30~40ぐらい取られる...)と併せても1万円を切る値段で買うことが出来た。
 69年~71年頃のブラジルのモノラル盤(←カタログ№のアタマはBTL- か BTX-)はステレオ盤から作った(←英語で fold down というらしい...)いわゆるひとつの “偽モノ” なのだが、同じ偽モノのUK盤「イエロー・サブマリン」が結構ごっつい音で楽しめたので今回も密かに期待しながら聴いてみた。
 まず1曲目のA①「トゥー・メニー・ピープル」のイントロがガツン!ときてめっちゃ気持ちイイ(^o^)丿  これぞモノラルの醍醐味である。しかしヴォーカルが入ってくるとイントロで荒ぶっていたサウンドが少しおとなしくなってしまい、聴いてるこちらとしては何か狐につままれたような感じ。まるで、録音時に我々ド素人が時々やるように、イントロで針が振り切ってしまってヤバそうやから歌の始まる所でちょっと入力ヴォリュームを下げた... みたいなそんな感じなのだ。事の真相は分からないが、何にせよやっぱりブラジル盤はちょっと変だ(笑)
 A面を聴き進んで行って感じたことは、ドラムスが奥に引っ込んでいて逆にピアノが前に出てくるように聞こえること。だからA④「ディア・ボーイ」なんか実に気持ち良く聴けてしまうのだが、その一方で、私が「ラム」で大好きなポイントの一つであるリンダのバック・コーラスがステレオ盤ほど目立たないのでA⑥「スマイル・アウェイ」なんかは魅力半減だ。
 B面では何故かB③「イート・アット・ホーム」だけ音が籠っているように聞こえるのがマイナス・ポイント。B④「ロング・ヘアード・レディ」になると音が回復するのも謎だ。全体的にモノラル特有のガッツというかエネルギー感は今一歩だが、カートリッジをモノラル専用のものに変えるとこの欠点はかなり改善される(←B③だけは何をやってもダメだが...)ことが分かった。
 というワケで私にとって10年ぶりのブラジル盤は可もなし不可もなしという感じで点数を付ければ65点といったところ。ただ、この盤をきっかけに私のブラジル・モノラル盤に対する関心が高まり、その結果としてとんでもなく凄い轟音盤に巡り合うことになるのだが、それはまた別のはなし...(^.^)

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