shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

モノラルのブラジル盤で聴く「Hey Jude」

2019-03-25 | The Beatles
 「モノラルのブラジル盤で聴く~」シリーズ第2弾は「ヘイ・ジュード」だ。60年代の後半というのはちょうどモノラルからステレオへの過渡期と言える時期で、アメリカを含む多くの国々では「ホワイト・アルバム」から本格的ステレオ時代に突入(←私の知る限り「ホワイト」のモノ盤がリリースされたのはUK、オーストラリア、スペイン、コロンビア、アルゼンチン、ブラジルの6ヶ国のみ)、“モノラル盤は時代遅れ” というのが世界の趨勢だったようだ。
 一般的に “エコーが強くて音像が広がる” のを好む傾向にあるアメリカ人と違い、“隙間のないソリッドな音の塊” を好む人が多いと言われるビートルズの母国イギリスではステレオ・オンリーへの移行はもう少し後で、モノラル/ステレオの分水嶺は「ヘイ・ジュード」//「ジョンとヨーコのバラード」、アルバムが「イエロー・サブマリン」//「アビー・ロード」ということになるのだが、私のようなモノラル盤信者はついつい “出来ることなら「アビー・ロード」以降のアルバムもモノラルのごっつい音で聴いてみたい...” という“無いものねだり”をしてしまう。そしてそんな願いを叶えてくれるのが、ブラジルを始めとする南米諸国でリリースされたモノラル盤なのだ。
 Discogsによると、1966年から1972年の間にブラジル・オデオンからリリースされたモノラル盤はすべてステレオ・ミックスをモノにしただけの“偽モノ”(←ちょうど「イエロー・サブマリン」の UKモノラル盤と同じ手法)なのだが、唯一の例外がこの「ヘイ・ジュード」LPで、既にブラジルにあったシングル盤用のモノ・ミックスを使ってこのレコードを製作したのだという。つまり「ジョンとヨーコのバラード」と「オールド・ブラウン・シュー」以外の曲はすべて純正モノ・ミックスで作られているという実にユニークな「ヘイ・ジュード」LPなのだ。
 まずA①「キャント・バイ・ミー・ラヴ」とA②「ユー・シュッド・ハヴ・ノウン・ベター」の2曲は初期ビートルズのモノラルらしい元気溌剌とした煌びやかなサウンド。特に①に関してはブラジル盤「ア・ハード・デイズ・ナイト」に入っている同曲が何故かめちゃくちゃ籠った音だったので、シングル音源を採用して大正解だ。A③「ペイパーバック・ライター」は高域の伸びが今一歩だが、分厚い中域のおかげでモノラルらしい押し出し感の強いサウンドが楽しめる。もちろん UKシングルのラウドカットには負けるが、コレはコレで十分健闘していると言っていいと思う。
 A④「レイン」はジョンのヴォーカルがめっちゃリヴォッてて聴いてて実に楽しい。ブラジル盤はトラックによる出来不出来の差が大きいことが多々あるが、私はこの曲の音作りがA面では一番面白かったし、サイケなビートルズが好きな人は一聴の価値アリだ。A⑤「レディ・マドンナ」はA③と似た音作りで、ガンガンくる武骨なモノラル・サウンドが◎。A⑥「レヴォリューション」はイントロのギターがめっちゃラウドに響き渡ってごっつうエエ感じ。この曲のハードロック的側面が強調された豪快なサウンドだ。
 B面では何と言ってもB①「ヘイ・ジュード」が断トツに面白い。前半部のポールのヴォーカルもパンチ力十分で、“ブラジルのモノ盤も大したもんやん...” と感心していると、後半部のリフレインはもっと強烈で、まるでコーラス隊の人数が増えたかのような錯覚を覚えるほどの大熱演。まさにリオのカーニバルさながらの大騒ぎである。コレはめっちゃエエわ(^o^)丿  B面残りの3曲はまぁ予想通りと言えば予想通りのモノラル・サウンド。さすがにB①ほどの熱量は感じられないが、音圧は必要にして十分で、モノラルならではのド迫力サウンドが十分に堪能できた。
 というワケで、このアルバムの満足度を点数化すると、前回の「ラム」を軽く上回る75点ぐらいか。もう少し点数をあげていいかもとも思ったが、後に控える遥かに強力な轟音盤との相対的な比較を考えると75点あたりが妥当な評価だと思う。

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